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殺人の追憶【小説】

2017/08/12


 ソウルオリンピックを間近にひかえた1986年、華城郡で実際に起きた連続殺人事件をモチーフに映画化された同名映画のノベライズです。執筆には、監督および脚本のホン・ジュノと脚本のシム・ソンボが当たっており、映画では描かれなかった犯人の生い立ちや素顔が克明に描かれています。
 ストーリーは映画とほぼ同じで、登場人物も同じですが、小説版は犯人を追う刑事の立場と、犯人の立場の両方から描かれており、映画では解らなかった犯人の心情や殺人の動機などがよく解り、ひじょうにおもしろいです。
 地元警察の朴斗万(パク・トマン)刑事とソウルから派遣された徐泰潤(ソ・テユン)刑事は、真犯人逮捕まであと一歩というところまで迫りますが、実際の事件は逮捕に至らず時効になってしまった未解決事件なので、小説で描かれる犯人像の部分はフィクションになります。
 犯人の青年は、幼いことに両親が離婚し、義母から性的な虐待を受けており、女性に対して異常な偏見を募らせていました。義母が着けていた赤い下着に対する嫌悪から、赤いものを破壊する傾向が生じ、近所でアメリカザリガニを捕獲し、それを大量に殺していました。しかしながらザリガニは彼の話し相手でもあり、彼は水槽でたくさんのザリガニを飼育し、それに対しても虐待を加えていました。
 そしてこの赤へのネガティヴな執着は、赤い服を着た女性を襲うという行為へとつながってゆきます。

 筆者の感想としては、小説を先に読むよりも映画を観てからの方が良いと思います。映画でストーリーを知ってしまってから読むことは、この小説の面白さを色あせさせません。映画でお話しや登場人物を見ている分、読んでいて情景がリアルに浮かび上がって来て面白さが増すくらいです。これについては個人差がありますが、筆者は映画→小説という順序を押します。
 映画もなかなかおもしろかったですが、小説の方がさらにおもしろかったです。そして小説を読むとまた映画を観たくなりました。
 2017年現在、小説の方は一般書店ではまず取り扱いがなく、古本屋やネット販売、ネットオークション等で探す必要があります。見つけるのはそれほど難しくないと思います。

 映画のラストシーンは、事件から長い歳月を経て偶然現場に帰って来たトマン刑事が描かれますが、小説では、このシーンからさらに新たな展開があります。それがまた小説の大きな見どころにもなっています。
 もちろんそれまでの途中経過もたいへんおもしろくて、目が離せず、一気に読んでしまいました。
 映画ではそれぞれの人物の表層的な部分しか描かれませんが、小説では各人物の生い立ちや心境、それに映画では描かれなかった事件との関わりなども再現されていて、あえてノベライズされた価値があったと思います。事件の時代背景についても映画よりもいっそう克明に解ります。
 執筆は、映画を作った本人たちによってなされたわけで、小説を読むと、映画の各シーンにどのような人間模様が内包されていたか、映画で描き足りなかったことがどれほどあったか、そんなことがよく解ります。
 2時間枠の中で製作しなければならない映画の中で、監督や脚本家はお話しの多くの部分を切り捨てざるを得ないし、解説したくてもできない部分もあり、映画というものの限界を感じながら作っているのかなぁ、ふとそんなことを思いました。ノベライズは監督や脚本の作品に対する熱い思いなのかもしれませんね。

2004年、韓国。
著者:ポン・ジュノ、シム・ソンボ。
翻訳:薄井 ゆうじ。
発行:アートン。

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