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下妻物語 完 ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件
【小説】

2017/07/25


 「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」の続編です。前編では、ロココの精神に没入し身も心もロリータに捧げた竜ヶ崎桃子と、ヤンキー娘のイチコこと白百合イチゴが、女性ばかりの暴走族すなわちレディースの舗爾威帝劉とやり合って友情を深めるところで、終わりましたが、本編ではその直後からお話しが始まります。
 桃子は、ロリータ・ファッションの有名メゾン「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の磯辺社長からの熱いプッシュにより、BABY のファンとしてロリータを堪能する側の人間から、衣装をデザインし製作する側へと徐々に目覚めて行き、イチコは同じく磯部社長の依頼でロリータ・ファッションのモデルをしばしば引き受けるようになり、2人の状況が次第に増えて行きます。
 しかしながら桃子は純粋にロリータを愛したいという思いから、なかなかデザイナーとして踏み出せないでおり、イチコの方も有名ファッション誌に載ることが増え、モデルとしての才能を開花させるも、自らの価値にまったく気づかず、再々助けてもらった桃子への恩返しと、バイト料のためにモデルを続けるという、なかなか煮え切らない状態が続いています。
 イチコのバイト料は、独りでは代官山くんだりまで無事にたどり着けない彼女のために付き添いとマネージャーを引き受けている桃子によって半分がピンはねされ、知能の低いイチコはそのことにまったく気づきません。桃子はイチコの低能ぶりをますます見下し、友情など微塵も感じず、利用できるカモとして付き合い続け、イチコの方は、情に厚い彼女の思いを充足するために桃子と一緒に居続けます。どちらかと言うと、2人の関係はイチコの片思いです。
 そんなある日、東京から下妻へ帰還する高速バスの車中で、ヤクザの幹部が殺されるという事件が発生し、イチコは重要参考人として警察からマークされることになります。

 前編では、ロリータモード全開でしたが、続編ではそれにさらに拍車がかかり、ロリータ読本かと見まがうほどんのファッション知識が続々と飛び出します。桃子がロココの精神を受け継いでいるように、嶽本野ばら氏は、女性ならぬ身でありながら、乙女の心を持ち合わせているのでしょうね。おかげでロリータについて、いくらか詳しくなりました。

 前編で熱い友情で結ばれたかに見えた桃子とイチコですが、桃子はますますイチコを見下し、体よく利用するばかり。どんどん増えるイチコのモデルのバイトのおかげでマネージャーの桃子もますます状況が増え、彼女は出席日数足らずで進級できなくなってしまいます。イチコもまた低レベルの工業高校でさえ落第、2人はダメダメな高校生に成り下がっていました。ダメダメだけれど桃子にはロリータ・ファッション業界で一流ブランドの社長がほれ込んだデザイナーとしての才能があり、イチコには一流ファッション誌にバンバン掲載されるモデルとしての才能があります。そんな不思議キャラでありながら、相も変わらず周りからうとまれるロリータとヤンキーを続ける2人。
 そして殺人事件。そのバスにたまたま乗り合わせたイチコは、殺人の容疑をかけられ、これまたたまたま乗り合わせた亜樹美さんとの関係でジャスコの警備員のセイジさんと知り合いになり、話しはどんどんややこしい方向へと発展して行きます。亜樹美さんは、レディース舗爾威帝劉の先代の頭で、彼女はイチコの初恋にして片思いの相手である龍二と結婚し、セイジは龍二を兄貴分として慕っているのでした。
 セイジは名探偵を自称し、事件解決に挑みますが、彼がまたイチコに輪をかけた低能ぶりで、犯人に近づくどころか、容疑をかけられたイチコのために警察になぐり込みに行ってその途中でスピード違反でつかまります。否応なくなぐり込みに同行させられ桃子は、セイジをクギバットで撲殺しようとして刑事に止められ、今度は刑事を恐喝して事件の情報を引き出し、絶妙な推理で真犯人に迫ります。

 サブタイトルにもなっている殺人事件は、しかしお話しの副産物のようなもので、続編では桃子とイチコの人間関係がどんどん深みにはまってゆき、2人は切っても切れない仲になってゆきます。
 借りたものは返さない、利用できる者は親でも親友でも利用する。それをロココの精神だと信じて疑わない心根の腐った桃子ですが、イチコとの度重なる騒動に巻き込まれ、彼女は少しずつ変わってゆきます。人間は独りでは生きられない、自分ではまったく気づいていないのに、そのことを学んでゆきます。そんな彼女をダチとして信じ続けるイチコ、そんな彼女を控え目に見守り、彼女の才能のためにぶっ倒れ、それでも彼女の意思を尊重して待ち続ける BABY の磯辺社長。
 ついに桃子は、自分を支えてくれているイチコや磯辺社長のためにある決意をすることになります。

 親さえも愚弄し、慕ってくれる友人を殺人犯として警察に逮捕を進める桃子。しかしそんな彼女を多くの人たちが信じ、敬愛し、力になろうとするのです。それは彼女があまりにも純粋で、誰にも責任を押しつけず、自分の足でしっかりと立っているからなのでしょう。80を過ぎても本気で恋をする天真爛漫な祖母も、セイジさんも全力で彼女の力になろうとします。そして彼女が自分で決めて自分で進む道を、みんなが応援します。
 桃子の旅立ちに際して、イチコは一週間かけて刺繍した特攻服を差し出します。子供の仕事にも劣る下手な刺繍、しかも特攻服。こんなものあたしは着ないよ。んなこと分かってるよ、わかってるけど……。しかし桃子は、ロリータ服の上からそっと特攻服の袖に腕を通すのでした。それは、前編でイチコの最低なセンスの族使用の原チャにまたがった時以上の、桃子の強い意思表示でした。

 そのサブタイトルから、軽いノリのコメディを思わせる下妻物語ですが、多くの大河ドラマを凌駕するほどの教訓と感動が含有されています。そして殺人事件がついて、コメディぶりにさらに拍車がかかった続編は、その内容で前編をも凌駕しています。
 大ヒットした映画「下妻物語」の続編が作られることはありませんでしたが、作られればやはり大ヒットしたことでしょう。そして小説の方も、もう続きは書かないよ、と言わんばかりに"完"の字が配されています。

2005年出版 小学館
著作:嶽本野ばら

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