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ジェーン・ドウの解剖【映画】

2017/07/06


 バージニア州の田舎町で変死体の管理と司法解剖を請け負っているトミーのもとへ、ひとりの若い女性の死体が届きます。息子のオースティンは助手として父の仕事をよく手伝っていましたが、その夜は恋人のエマとデートの約束をしていました。しかし死体の搬入された状況から手助けが必要と判断し、解剖を手伝うことになります。
 女性は身元が解っていないのでジェーン・ドウととりあえず呼称されることになり、解剖が始まりました。外観の観察ではまったく無傷の生きているように美しい死体です。でも彼女の死体が見つかった現場は、大量殺人のあった凄惨な現場で、無残な傷と流血を残した多数の死体がごろごろ転がっており、唯一彼女だけが無傷の全裸死体として見つかったのでした。
 死体であるとしたら死後間もない様子なのに、目は白濁し数日経過しているようでした。そして両手首両足首の骨が折れており、舌が切断され、歯が1本抜かれていました。胸部にメスを入れると大量の鮮血が流れ出しました。心臓が動いていない死体から流血があるのはひじょうに珍しいことです。
 やがて肺が黒こげになっていたり、胃の中に毒草が突っ込まれたりといった異変が次々と露見して行きます。トミーは、彼女がたいへんな拷問を受けたと判断します。ところが、外傷がまったく見当たらないのです。
 毒草を包んでいた布をオースティンが分析すると、魔法陣のような模様が見つかります。布を折りたたむと古い日付と場所が浮かび上がります。1693年、ニューイングランド、セイラム魔女裁判。
 彼女は中世の魔女裁判の犠牲者だったのでしょうか。そんな古い死体が外傷もないきれいなままで現代に蘇ったのはどうしたことなのでしょう。
 いよいよ彼女の脳にメスを入れると、脳細胞はまだ活動していました。ジェーン・ドウは、死体になっても死ぬことはなく魔女裁判の苦しみを今も経験している、トミーはそのように分析します。
 やがて、彼女の体だけではなく、その周囲にも異変が生じます。電気が消え、モルグの死体が歩き出し、危険を感じた親子が地下にある解剖室から脱出しようとすると、嵐による倒木で出口がふさがれ、エレベーターも動かなくなっています。
 彼女の死体に火を放ちますが、それは解剖室の天井にまで届き、あわや火災になるところでしたが、死体に傷がつくことはありませんでした。
 そろそろオースティンの仕事も終わった頃だろうと戻ってきた恋人のエマにもジェーン・ドウの呪いが及びます。
 この美しい死体に秘められた真実は何なのでしょう。死体は何を訴えようとしているのでしょう。

 英語で名無しの権兵衛のことをジョン・ドウと言い、ジェーン・ドウは女性に用いられる呼称だそうです。つまり彼女は身元不明の無名の死体ということです。知らない筆者にはずいぶん可愛い名前に思えたのですが、名無しの権兵衛であったとはちょっと残念です。
 それにしても大変に美しい死体です。無機質な解剖室という空間に似つかわしくない彼女は、やがて体を切り開かれ、臓器をひっぱり出されてゆきます。最近の解剖シーンはリアルで生々しいです。苦手な人は直視に耐えないかもしれません。でも、そうも言っていられないです。次々に奇妙なメッセージが出現しますから。
 そして怪奇現象が薄暗い解剖室を支配して行きますが、今にも動き出しそうな彼女が何かをすることはありません。
 突然の音と映像の変化で脅かすタイプのホラーではなく、シチュエーションの恐ろしさで観客を震え上がらせます。次に何が起こるか判らない状況の中で、ただでさえ薄暗い地下の電気が消え、得体のしれない音が聞こえて来ます。そしてエレベーターや出口といった脱出路が断たれてゆきます。
 でも、心に残るのは、単純な恐怖心ではなく、ジェーン・ドウが生前に経験したであろう恐ろしい体験に対する感情です。その若く美しい身に、どんな残酷な行為が行なわれたのだろう。長い時の流れを経て癒えることのない恨みとはどんなものなのだろう。
 映画の冒頭で、いきなり凄惨な殺人現場を見ることになりますが、そこに転がっている死体の数々も、ジェーン・ドウの恨みの犠牲になっていった人たちなのでしょう。
 死体の管理とその解剖を請け負うという地下にモルグと解剖室を備えたティルディン家。そこで血の惨劇を繰り返した後、彼女の死体はまた別のところへ運ばれてゆきますが、その先でもやはり同じようなことが繰り返されるのでしょうか。

 ジェーン・ドウの死体は、細部まで精巧に作られた人形なのだろうと思いましたが、じつにジェーン役の女優がいたんですね。けっして身動きしてはいけない死体の役作りのために、オルウェン・ケリーは浅い呼吸をする訓練をしたりヨガスクールに通ったりしたそうです。そして身動きできない状況で体に取り付けられた模型が解剖されてゆくのは恐ろしい経験だったと語っているそうです。
 死体役というのは、無名の俳優のアルバイトのような仕事だと思っていましたが、死体で主役を演じるというのはなかなかない話しですよね。彼女の動かない演技が素晴らしかったです。動きもセリフも一切なしという演技で観客に感動を与えるって、なんかすごいですね。
 オカルト映画で深い感銘を受けたことはあまりありませんが、この作品には感動いたしました。ジェーン・ドウはどちらかと言うとダークヒロインで、名前すらないのですが、そして近づくものに災いをもたらすのですが、生前の彼女の悲運と今なお死体となって生き続ける根深い呪いのことを思うと、何とも言えない気持ちにさせられます。
 死体として数世紀を存在し続けた彼女の心が癒される日は来ないのでしょうか。

 この作品は、モルグ(遺体安置所)ネクロテラー第1弾ということで、シリーズ化されるようですが、彼女の今後を描いたエピソードが作られることはないのでしょうか。

原題:THE AUTOPSY OF JANE DOE。
2016年アメリカ、86分、翌年日本公開。
監督:アンドレ・オブレダル。
脚本:イアン・ゴールドバーグ 、リチャード・ナイン。
出演:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オフィリア・ラヴィボンド、オルウェン・ケリー、マイケル・マケルハットンほか。

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