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パプリカ【アニメ映画】

2017/06/29


 精神医学研究所に務める千葉敦子は、夢(人が眠っている間に見る夢)をモニタリングすることで精神のケアをする研究に取り組んでいます。同僚の時田浩作が発明したポータブルタイプの夢にアクセスする装置DCミニの実用化に向けて日夜努力していましたが、その研究の一環としてパプリカという疑似人格に成り切り、他人の夢に入り込んで心のケアをするという仕事を非公式にこっそりと行なっていました。粉川刑事もパプリカの世話になっているひとりで、彼は大学時代に映画製作の夢を共有した友人と歯切れの悪い別れ方をし、それが映画に対するトラウマになっていました。
 研究所のオーナーはDCミニの製品化には消極的で、人の夢に入り込んでそれを共有するという試みも自然の摂理に対する冒涜であると考えていました。そんな折り、DCミニが何者かによって盗み出され、人々が次々と精神を汚染され奇行に及ぶという事件が多発します。
 オーナーはDCミニの研究開発の凍結を命じますが、事態の収拾と称して千葉敦子、時田浩作は、粉川刑事の協力のもとDCミニを駆使して精神世界で犯人を追いつめようとします。
 しかしなかなか犯人の尻尾をつかむことができず、夢はついに現実世界にあふれ出して来てしまいます。

 夢とはいったい何なのでしょう。夢を見るのは人間特有の現象なのでしょうか。愛犬家の中には犬も夢を見るという人もいますが、睡眠中に脳の働きが休眠状態になる時、刺激に対しておかしな反応をするようなことは犬でもあるのでしょう。それを犬が夢を見ていたとか、寝ぼけていたとか、そんなふうに見えるのかもしれません。人の見る夢は断片的な映像の入れ替わりであることもあれば、ひじょうに秩序立っていてリアルな場合もあります。それらの夢の世界は、睡眠中でありながら完全に休眠しているわけではない脳の働きによって思い描かれるものなのでしょうか。それが記憶として残ることもあり、朝まで覚えていたら、夢を見ていたという認識になるのでしょう。
 夢は現実での様々な感情や見聞きしたこと、悩んだことなどを反映しているとも言います。精神医学でも夢判断が診断に使われることがあるらしいですし。では、夢の世界にしっかりとした認識を持った状態で侵入することができれば、人の悩みやトラウマみたいなものの原因を突き止め、それを治療する手がかりになるのでしょうか。
 本作に登場するDCミニの中の疑似人格パプリカは、千葉敦子が夢世界の人格として意識を持って活動するときの姿で、彼女はDCミニという機器を用いて他人の夢世界に侵入することができます。その夢世界がなぜだかひじょうに古典的な色あいなのは、原作が古いものだからでしょうか。古いと言っても筒井康隆による小説版が発表されたのは1993年のことで、このアニメに登場する夢世界ほど古い時代のことではないのですが。
 そして、DCミニを盗んだ犯人は、それを悪用して人々の精神を次々と汚染して行きます。最後には夢そのものが奔流となって現実世界を飲み込み始めます。これはいわゆる集団催眠みたいな現象なのでしょうか。その中で犯人に立ち向かうパプリカや時田、粉川刑事は正常に見えますが、夢世界に入り込んでいる以上、集団催眠のとりこにほかならないのでしょうか。よくわかりません。

 鮮烈な色づかいの独特の映像に圧倒されます。それは遠い子供の頃の記憶、あるいは夢の再現のようで、奇妙な恐怖を伴い、観客をクギづけにします。
 ほんと、夢っていったい何なのでしょう。願望よりもどちからというと恐れや悩みといったものが再現されることの方が多いような気がします。前へ進もうとしてもなかなか進めないもどかしい夢、怪獣や魔物がその辺にいるのになかなか遭遇しない夢、普段あまり意識もしていない人物が出てくる夢。夢の世界は感覚的には日常なのに、よく考えると見知らぬ世界であったりします。
 筆者はスケールの大きな、ひじょうに楽しい夢をけっこう見ます。続きを見たい、ずっとこの夢の中にいたい、そう思うこともしばしば。輝かしい未来都市であったり、雄大な大自然であったり、そうした素敵な世界をゆっくりと浮遊したりします。飛ぶ夢というより、浮遊する夢ですね。美しい公園をすごいジャンプ力で優雅に跳び越えていったり、高層ビルの屋上まで一気に舞い上がったり。こうした夢の情景がすべて自分の想像力の賜物なのだとしたら、自分の想像力もまんざらではないなぁ、そんなことを考えたりもします。元ネタは映画か何かで見ているのかもですけどね。

 夢を扱った作品というのは、ありそうで意外になかったりします。でも、夢からヒントを得た作品というのは、読者に気づかせないだけで、案外たくさんあるのかもしれません。作家にとって夢というものは、題材の宝庫でありながら、扱いの難しい素材であるのでしょう。筆者が大好きだった作家安部公房は、夢の生け捕りをする作家でした。シュールレアリスムあるいはその技法を取り入れた作風を得意とする彼にとって、夢は経験として重要だったのでしょうね。
 本作の原作者筒井康隆も、SF作家でありながらなかなかのロマンチストです。彼は夢というものをどのように捉えていたのでしょう。千葉敦子や時田浩作が精神医療の一環として夢に着目したように、夢は人間にとって重要な精神世界であると考えていたのでしょうか。過去形で言ってはいけませんね、まだ現役の作家ですから。
 これを書きながら、久々に彼や安部公房の作品を読み返してみたい、そんな気分になってまいりました。思えば、彼らの作品に没頭していた頃が筆者の青春時代でした。

2006年、90分。
原作:筒井康隆。
監督、脚本:今敏。
脚本:水上清資。
声の出演:林原めぐみ、江守徹、堀勝之祐、古谷徹、大塚明夫、山寺宏一、田中秀幸、こおろぎさとみ、阪口大助、岩田光央、愛河里花子、太田真一郎、ふくまつ進紗、川瀬晶子、泉久実子、勝杏里、宮下栄治、三戸耕三、筒井康隆、今敏ほか。

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