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ちょっと今から仕事やめてくる【映画】

2017/06/24


 大学を出て広告代理店に務める青山隆は、激務で心身ともに疲弊し、ある時ホームから落ちそうになります。そこへ列車が入駅して来てあわや轢死というところを、ヤマモトと名乗る青年に助けられます。ヤマモトは青山の小学生時代の同級生だと名乗り、飲みにつれて行きます。それ以来2人はちょくちょく会うようになり、青山は次第に明るさを取り戻し、服のセンスもよくなって行き、仕事でも業績を上げることができました。
 ところが、知人に問い合わせてもヤマモトという同級生は存在せず、ネット上で彼がすでに死んでいることを知ります。職場のパワハラを苦に、彼は自殺していたのです。町で偶然見かけたヤマモトをつけてみると、彼は悲愴な表情で霊園行きの送迎バスに乗り込むのでした。
 そのあと青山は、仕事で重大なミスをしてしまい、事態は再び暗転します。ビルの屋上から飛び降り、今度こそ死のうと思っているところへ、ヤマモトが駆けつけます。
 ヤマモト、おれも死んでお前の所へ行くよ。青山のその言葉に、ヤマモトは、人生は何のためにあると思う? お前を大切に思う人のためだ、そう言います。
 それから青山は、休暇をとって久々に田舎の両親を訪れ、父や母の思いに触れ、都会に戻ってくると、自分の意思で行動する決意をします。
 行きつけのカフェで青山はヤマモトに言います。ちょっと今から仕事やめてくる。彼の背中を押してくれたヤマモトは満面の笑みでうなずき返すのでした。

 今の日本は、ほとんどの会社がブラック企業と化しています。高度経済成長期の恩恵を受けてぬくぬくと暮らしてきた高齢者たちは、ちゃっかりと勝ち逃げを決め、劣悪化する企業に対して何も言わず、我が子やその同世代の若者たちの苦しみを解ろうともしません。自分の子供が低賃金重労働に苦しみ、福祉や年金や健康保険等の保証制度をどんどん悪化させられ、見て見ぬふりをする腑抜けた高齢者どもは、もはや人間じゃありません。
 企業は、不況を理由に社員を切り捨て給料を引き下げ、仕事を増やし、政治も企業からの献金を確保するために企業減税と労働者増税を推し進め、とくに王手企業は空前の不況至福を満喫しています。この状況は日本に限らず世界的な現象になっているようですが、これでは人類がだめになってしまうでしょう。格差社会を是正しなければ人類は滅ぶと唱える識者もいます。しかし、人類の未来がどうなっても自分たちが潤い、とうてい使い切れない財産を貯め込むことができればそれでいい、それが現在の資産家の考え方です。
 企業がどんなに食い膨れても人を雇わない。就職がないからブラック企業でも勤めざるを得ない。仕事はどんどん増えるばかりで、給料は上がらない。ミスと言えないよなミスに言いがかりをつけられ減給される。そして増税、物価上昇、福祉の切り詰め。それでも数少ない就職口を獲得できた若者はマシなのだそうです。若者たちの前途には将来不安しかありません。
 おかげで日本は若者たちを中心にした自殺超大国です。政府は腹で笑いながら自殺相談窓口設営といった対策を講じますが、相談したところで就職を世話してもらえるわけではありません。労働条件や賃金が改善されるわけではありません。企業に自分の仕事が認めてもらえるわけでもありません。
 低賃金であっても親と暮らしている若者は、目先の危機感はないでしょう。でも親たちも数年もすれば無給の年金暮らしになってしまいます。若者の給料だけでは、家も車も夢のまた夢です。安アパートの家賃を払ってジャンクフードをかじって、光熱費と税金を納めれば何も残りません。場合によっては借金が残るかも。
 成人の給料でまともな文化的生活も送れない。老後は病気になったら死ぬしかない。日本も恥ずべき後進国に成り下がったものです。格差社会ですから、一部のエリートだけは一人前の文化生活が送れるそうですが。

 この映画は、現代日本で出るべくして出た作品ですね。労働者にまともな人権なんてない、それが現在の常識です。是正する気もないのにパワハラだのブラック企業だのと言う言葉がマスメディアに乗ることがお笑いです。この作品は出るべくして出ましたが、原作者や映画の製作者、監督は抹殺されないのでしょうか。政治批判を直接行なっているわけではないからOKですか。それでも勇気ある行動だと思います。
 映画は娯楽作品というレッテルを貼られて世に出ますが、そのレッテルを隠れ蓑に作家たちの熱い運動が内在していることがしばしばです。

 以上は、現代社会の抱える問題と作品を見比べたいささか逸脱した感想ですが、世の中をこんなふうにしてしまったのは、じつは企業や政治家ではありません。多くの権利や法の擁護を放棄して無関心を決め込んでいる市民こそが元凶です。まぁ、その話はべつの機会にするとして、青山が明るく笑って仕事を辞めたあと、どうするつもりなのだろう。それが筆者の最大の関心事であり、この作品を観に行こうと決めた理由でもありました。
 青山とヤマモト、2人仲良く天国へ逃避しました、なんて落ちだったら最低ですが、彼らはちゃんと自分たちを向上させ、世の中に貢献できる場所を見つけます。そこへ至る経緯には、ヤマモトの暗い過去があって、この作品を総じてつらくて切ない映画だと評する人もいるようですが、筆者は彼らが希望を見失わず、未来から目をそらさなかったことが素晴らしいと思いました。どんなにつらいことがあっても、これまでの人生が暗澹としていても、希望を持ち続けること、自分を大切に思ってくれている人のために人生を投げ出さないこと、それは生きることの大きな意義であると思います。
 もっともっと大勢の若者たちが、人生を悲観することなく未来を信じ希望を抱いたら、人間社会は明るい方向へ向けて大きく変わり出します。人間社会というものは、人の思いでできているものですから。
 この作品をつらく切ない映画と見るのも、明るく楽しい希望に履触れた作品だと感じるのも、観る人の思い次第です。

2017年、114分。
原作:北川恵海。
監督、脚本:成島出。
脚本:多和田久美。
出演:福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎、池田成志、森口瑤子ほか。

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