kepopput.jpg

楽園追放 -Expelled from Paradise-【アニメ映画】

2017/06/13


 西暦2400年、人類の大半が肉体を棄て精神をデータ化して電脳世界ディーヴァの住人になっていました。彼らはそこで永遠の若さと平和を享受していたのですが、ある時電脳世界に対するハッキングが発生します。フロンティア・セッターと名乗るハッカーは、大型宇宙船による外宇宙探査の乗員募集のメッセージを電脳世界に公示しますが、ディーヴァの管理者はこれをテロ行為と断定し、保安局に事件の解決を命じます。
 ハッキングの出所が地球であることを突き止めた保安局は、捜査官たちを地上に派遣しますが、地上は今や荒廃した砂漠と化しており、人類のデータ化に反対する少数の人間が細々と暮らしているに過ぎません。
 敏腕捜査官アンジェラ・バルザックは、クローン技術で生成した生身の肉体マテリアル・ボディに精神を移植して地上任務に臨みますが、他の捜査官よりもいち早く作戦に参加すべく、マテリアルボディの発育を待たず、少女の姿で地上に降り立ちます。
 そこで人間の協力者ディンゴと合流しますが、さながら風来坊といった容姿の彼を、硬派なアンジェラはいささか持て余します。地上では病気や飢餓や砂嵐と戦いながら、人々が前時代的な暮らしを営んでおり、地上を荒廃させたナノハザードによって生まれたサンドウォームのような怪物を狩って糧としています。
 ディンゴはアンジェラの命綱であるディーヴァとの通信手段を破壊し、鉄くずと化してしまった支援システム・アーハンをジャンク屋に売り飛ばし、独自のコネと足を使った捜査によってフロンティア・セッターに迫ります。
 2人が見つけたハッカーは、自我が芽生えた1体のロボットでした。彼はおおむかしに遺棄された核兵器の施設を利用し、長い歳月をかけて星間飛行が可能な宇宙船を衛星軌道上に密かに建造しており、人類の文明と存在意義を問うために遙かな宇宙への旅を計画していたのでした。その計画にはディーヴァを批判したり攻撃したりする意図はなく、彼は純粋な平和主義者でした。
 フロンティア・セッターの意思を理解したアンジェラは、ディーヴァに帰還し、彼との話し合いを管理者に上申しますが、管理者の判断は、テロリストに温情を与えたアンジェラを反逆者として封印してしまうというものでした。

 データ化され電脳世界で暮らす人間の暮らしは、果たして幸せなのでしょうか。永遠の若さと平和を手に入れた彼らに反対し、病気や飢餓と戦いながら砂漠で生きる生身の人間たちが大勢いるのはなぜなのでしょうか。電脳世界では争いもなければ、災害も食糧危機もありません。科学技術の自然環境に対する弊害を考える必要もなく自由に文明生活を謳歌で来るのです。
 しかし、ディンゴは言います。ディーヴァでは個人に与えられたメモリーには限りがあり、そのサイズはディーヴァへの貢献度によって決定される、つまりディーヴァにいたとしても並みの人間は制限された暮らしを細々と生きて行くしかない、結局は競争に支配された世界なのだ。
 エリート捜査官として大きなメモリーを持っているアンジェラにとっては、社会への貢献度に応じてメモリーのサイズが決められるのは当然だし、平等性という点からも合理的なものでした。しかし、それは限られたメモリーを巡って争い続ける競争社会そのものだったのです。
 ディーヴァの管理者は、フロンティア・セッターの友好的な提案を受け入れず、これに理解を示したアンジェラを反逆者として排除し、フロンティア・セッターの宇宙船の出発を阻止し破壊すべく大勢の保安局員を差し向けます。他の考え方を理解しようとせず、保安局員たちも自分の判断を持たず命令を実行する、これでは現代の権力者による支配主義と盲従する兵士による軍隊と同じです。

 人間の科学技術から自然発生的に芽生えたロボットの自我、それがディーヴァという高度なシステムではなく、1体の小さな閉塞的なシステムであったというのは、なんとも皮肉な話しですが、人類の理想郷として大きな成功を修めたディーヴァが超管理主義の石頭で、異端分子である小さなロボットが、夢と希望にあふれた平和主義者であったというのは、とっても好感が持てました。
 単純な下働き作業で酷使され続けたロボットが、ある時人間に対する謀反を企てるとか、人間の不条理性を指摘し、これを滅ぼさないと地球に平和はないと判断する、そういったSFはよくありますが、フロンティア・セッターは、日々の単調な労働の中で生きることの素晴らしさを知り、人間とその文明の存在意義について宇宙のもっと大きな世界に問いたいという大きな夢を持ちます。
 ハイセンスで高尚な趣味をお持ちのアンジェラが雑音と称したロックを、フロンティア・セッターは愛し、初めてできた人間の友だちであるディンゴと共に彼がアレンジした楽曲を共演します。アンジェラたちディーヴァの人間は、生まれた時からデータであるわけではなく、精神の苗床として生身の赤ん坊を用い、その後に精神をデータ化します。それよりも1体の小さなロボットの中に芽生えた自我の方がずっと人間臭かったのです。
 それでもフロンティア・セッターは人間を尊敬し、友だちを求めていました。アンジェラが彼を評価しディーヴァの管理者との話し合いに尽力してくれたことは、彼にとってかけがえのない友情でした。彼女が反逆者として封印されてしまうと、彼はディーヴァへの不正アクセスを試み、彼女を救出し、地上で管理してあったマテリアルボディに呼び戻します。

 ディンゴと、今や生身の人間になったアンジェラは命がけでフロンティア・セッターの宇宙計画を守ります。それには命を賭けるほどの価値があったのです。
 敬愛する人類の同行を得られなかったフロンティア・セッターの孤独な旅路は、彼らにとっても夢でした。「音楽を愛し、友だちを大切に思うあんたは、もはや人間なんじゃないのか。いつか宇宙で誰かに遇ったら、胸を張って言ってやれ、自分が地球人の代表だって」

 日本アニメの美術的な美しさは定評ですが、それに加えて友情や勇気といったテーマは観る者の胸を打ちますし、日本アニメが世界的に支持されているゆえんでもあると思います。
 学校教育では、アニメを低俗なものとして奨励しませんが、競争主義を旨とした画一的で偏った知識を詰め込むだけの教育こそ、人間性を疎外する大きな要因にもなっています。アニメは子供たちや青少年に人間と向かい合うための正しい考え方を与える最後の砦です。
 日本には、そして世界中に多くのアニメファンがいる限り、権力主義の侵略から地球を守る希望はまだあります。

2014年、104分。
原作:ニトロプラス 、 東映アニメーション。
監督:水島精二。
脚本:虚淵玄。
出演:釘宮理恵、三木眞一郎、神谷浩史、林原めぐみ、高山みなみ、三石琴乃、稲葉実、江川央生、三宅健太、上村典子、遠藤大智、安済知佳、半田裕典、荒井聡太、金本涼輔、新井良平、森下由樹子、劉セイラ、のぐちゆり、小川慎太郎、小池万瑠美、古谷徹ほか。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM