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あの日、兄貴が灯した光

2017/05/31


 柔道のオリンピック出場を目指していたコ・ドゥヨンは、試合中の事故で失明してしまいます。すでに父母とは死別しており、親が残した家には家族もいません。失意の中、自宅に引きこもってしまった彼のもとへ、15年間音信不通だった義母兄弟の兄コ・ドゥシクが訪ねてきますが、ドゥヨンは彼を受け入れようとしません。ドゥシクは、詐欺の前科10犯で服役中でしたが、弟の失明を知り、身寄りのない彼を守るのは自分しかいないと刑務官を説得し、仮出所を勝ち取ったのでした。
 ドゥシクは出所するために弟の不幸を利用しただけで、彼の面倒を見る気など毛頭ありませんでしたが、保護観察官を欺くために介護しているふりをしなければなりません。心を開かず食事さえ満足に取ろうとしない弟をよそに、ドゥシクは久々のしゃばを満喫し、弟を騙して彼の名義で金を借り、高級車を乗り回します。
 そこへドゥヨンのコーチをしていたスヒョンが訪ねて来て、ドゥヨンにパラリンピックへの出場を打診しますが、ドゥヨンはさらし者になりたくないとそれを拒みます。ドゥシクも弟に同情するふりをして彼女を追いかえしてしまいます。
 食事も摂らずやつれて行く弟を尻目にドゥシクは気ままに遊んでいますが、それでも弟に話しかけ、最低限の食事等の世話をするうちに、少しずつ会話も増え、ドゥヨンも徐々に兄に心を開くようになります。ドゥシクはドゥヨンの体を洗い、体力を着けさせるために栄養を摂らせ、髪を刈りオシャレをさせて街に連れ出します。そうして兄弟は次第に親交を深めて行くのですが、そんな折り、ドゥシクの末期癌が発覚します。
 ドゥシクは、スヒョンに連絡を取ってドゥヨンをパラリンピックに出場させたい旨を伝えます。それは自分がいなくなったあと弟が自立できるようにするための決意でした。病気のことは胸の内にとどめて。
 自分の境遇を悲観し、前に進みたがらない弟を説得し、兄は弟が自分の足で外を歩き、走る訓練をさせます。スヒョンもコーチとしてのキャリアを棄て、障害者専属コーチとしてドゥヨンの特訓に当たります。かくして3人のパラリンピックへの挑戦が始まるのでした。

 日本のタイトルは、いささか説明高く長いものになっていますが、原題はヒョンすなわち兄です。いいですね、この短いタイトルですべてが伝わります。でも、これをまんま和題にしたのでは、映画のタイトルとしてはちょっと力不足ですかね。なんか古典文学みたいになっちまうかな。
 オリンピックを目指す実力を持つ柔道の達人が、とつぜん自分では何もできない盲人になってしまいます。しかも彼には家族がなく支えてくれる者がいません。パラリンピックへの挑戦を打診してくるスヒョンコーチは、居留守を使って締め出しです。誰にも会いたくない、なにもしたくない。彼は荒れ果てた家に閉じこもり、食事も満足に摂りません。英雄の突然の転落、そこへ音信不通だった兄が訪ねてきます。まだ子供のうちに生き別れたままになっていた兄は、なんとも身勝手なやさ男で、ドゥヨンの神経をいらだたせるばかりです。
 しかし兄は、苦労人のことだけあって、世渡りが上手く頼れる人間ではありました。普段は食さない肉料理を注文してくれて、女の話しを聞かせてくれます。食うためなら何でもやったという技術で、弟の垢すりをし散髪をし、小粋な衣装を調達してきます。ドゥヨンはドゥシクに連れられて夜の盛り場へ行き、兄にレクチャーされた決めゼリフで女性を口説きます。自分には決してできないと思っていた経験を、兄はいろいろともたらしてくれました。
 そしてパラリンピックへの挑戦。自分の家の中さえ満足に歩けない者が、柔道などできるわけがない。さらし者にされるのはごめんだ。ドゥヨンは再び心を閉ざしてしまいますが、ドゥシクは一歩も引きません。彼を外へ連れ出し、自分の足で走ることを学ばせます。
 弟を韓国の代表選手としてパラリンピックに出場させる。それはドゥシクにとって人生最後の挑戦でした。ドゥヨンがスヒョンと本格的なトレーニングに出かけるようになると、ドゥシクは家をバリアフリーに改造し、弟が使いやすいように模様替えします。
 ことあるごとにドゥシクにからんでくるキム・ガンヒョン演じる無職のオタク男がまた良い味を出しています。最初はどうでもいい脇役で、かなりムカつく野郎なのですが、後半からなくてはならない重要な役どころを演じます。
 スヒョンコーチ役のパク・シネについては、語らずとも知れた名女優で、カッコイイに決まっていますが、筆者にとっては「7番房の奇跡」の弁護士役が最も印象的です。
 主役のド・ギョンスは、今回盲目の柔道家に扮しましたが、俳優としての彼はEXOのメンバーである時よりも光っています。労働問題を描いた「明日へ」では高校生役でしたが、なかなかでした。
 そして、どうしようもないやくざものから弟思いの素晴らしい兄へと転身するチョ・ジョンソクの名演はさすがですね。

 泣かせにかかります。ハンカチ3枚要ります。ストーリー的にはきわめて王道で、もう少しひねりや意外性があってもよかったかとも思えるのですが、あまりにもストレートな青春ドラマであるゆえに、いっそう涙をそそるのでしょう。劇場内はすすり泣く女性客の声が充満していました。
 目の見えない人がスポーツをする、パラリンピックを目指す、それがどれほど大変なものか、この映画ではそういうことはほとんど描かれておらず、ドゥヨンとドゥシクの兄弟愛が克明に描かれています。親の事情でお互いを好ましく思わず、子供の頃に生き別れた兄弟、その再会は決して温かいものではありませんでしたが、2人は自然に親しくなってゆきます。その変化がとても自然に違和感なく描かれているところがすごいと思いました。そして兄の病気の発覚で、2人の生き方にひとつの指針が生まれます。15年ぶりに再会しようやく親しくなれたのに、今度は病による死別が2人を別とうというのです。でも2人はそれにめげることなく、大きな目標に向かって力を合せます。

 一緒に観に行ったK-POP仲間は、ドゥシクの癌が治療されハッピーエンドになればと祈りながら観ていたそうです。若い人が死んでしまうのはあまりにも切ないですよね。
 パラリンピックへのキップを手にしたドゥヨンは、兄も一緒にブラジルに来るものと思っていましたが、じつは釜山で仕事が見つかり、それは自分の人生を左右するものだから逃すわけにはゆかないのだと、ドゥシクは明るくウソをつきます。服役中の兄が新たな人生をつかもうとしている、ドゥヨンはそれを理解し、兄に別れを告げます。そこからラストシーンまで、もう涙の洪水です。ほんと久しぶりに泣きました。
 筆者は残された余命生活を描いた闘病ものがあまり好きではありません。あまりにも悲観的で希望がないからです。「フランダースの犬」のように最後には努力もむなしく死んでしまうという作品も好きではありません。でもこの映画はとても好感が持て、観終わったあとも爽やかな気分でした。また独りぼっちになってしまったドゥヨンですが、彼はもうこれまでの彼とはちがいますから。コーチのスヒョンと共に、これからも進むべき道を邁進して行くことでしょう。

2016年、110分、翌年日本公開。
監督:クォン・スギョン。
脚本:ユ・ヨンア。
出演:チョ・ジョンソク、ド・ギョンス、パク・シネ 、キム・ガンヒョンほか。

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