kepopput.jpg

午後8時の訪問者【映画】

2017/05/04


 臨時職員として町の小さな診療所に勤めていたジェニーは、大きな病院への就任が決まっており、その夜は歓迎パーティがある予定でした。午後8時を過ぎて診療所のドアベルを鳴らす者がいて、研修医のジュリアンが応じようとするのをジェニーは制し、診療時間外に来る方が悪いと主張します。研修医は何かにつけ高慢なジェニーに不満をあらわにし、再び彼女の許を訪れなくなってしまいます。
 大病院でのパーティの翌日、ジェニーは警察の来訪を受け防犯カメラの映像チェックに応じたところ、昨夜ドアベルを鳴らした黒人の少女が映っていることが判明、少女は死体となって発見されたのでした。
 あの時、ドアを開けていたら少女は死なずに済んだのかもしれない、自責の念がジェニーを苛みます。彼女は大病院への就任を断って、老開業医の営む現在の診療所を引き継ぐことにします。そして仕事の合間に謎に包まれた少女の死因を調べ始めるのでした。

 BGMのない淡々とした映像は、多くの観客を退屈させるかも知れません。それに加えてジェニーは無表情で、亡くなった少女に対してどれだけ責任を感じているのか、事件をどう考えているのか、彼女の心情がよく見えてきません。極めて事務的に聞き取りを続けるジェニーですが、彼女の行動はひじょうに精力的で、休む間も惜しむくらいです。それと並行して、医師になるのを断念したジュリアンを説得します。
 警察から入手した写真を頼りに、患者や町の人々に質問を繰り返すうちに、やくざ風の男たちに、これ以上事件に関わるなと脅迫を受けます。警察も彼女の単独調査を快く思っていない様子ですし、何かを知ってそうな人たちも多くを話したがりません。

 なかなかもどかしいストーリーですが、観るものの関心をつなぎ止めているのは、少女はなぜ死ななければならなかったのか、死因は何なのか、他殺なのか自殺なのか、あるいは不慮の事故なのか、明らかにならない謎に対する疑問です。
 最初は雲をつかむような謎であったものが、ジェニーの献身によって少しずつ霧が晴れてきて、少女がアフリカ系の移民であり暮らしてゆくために売春をしていて事件に巻き込まれたといったことが判ってきます。
 ジェニーの心情も少しずつ見えてくるようになります。診療時間を過ぎた患者の来訪をジェニーが、拒んだのは研修医のジュリアンに対して威厳を示すためだったと、彼女は告白しジュリアンに詫びています。あるいは名前も解らない少女のために集団墓地に墓を設けます。無表情なジェニーの心の中が、死んだ少女への後悔と償いの思いで渦巻いていることが少しずつ解ってきます。
 少女の出身と名が判明すると、少女の母がジェニーを訪ねて来ます。ジュリアンも再び意思を目指す決意をします。そして当事者である男が、事件のことが頭から離れず夜も眠れないと言ってジェニーを訪れ、事件について話し始めます。

 大仰な演出のスリリングなサスペンスはたくさんありますが、この作品のように極めて日常的で淡々とした雰囲気のものは珍しいですね。警察でもないジェニーが事件にこだわり続け、やくざ者に脅迫されたり、色んな人たちから嫌われたりしながらも、あきらめずに行動し続ける様子に心惹かれます。大げさな演出やスピード感がなく、ジェニーも無表情のまま。やる気あるのかどかも解らない表情をしていますが、考えてみればこれがリアルな人間像というものでしょう。私たちだって、心の動きをいちいち顔に出しながら行動しているわけではありませんから。
 でも、彼女の献身はやがて人々の心を動かし始めます。亡くなった少女の母親が、少女のためにお墓まで建てて真相究明に努めてきたジェニーにお礼を言いに来ます。その母親にジェニーのやって来たことを教えたのは、彼女の単独捜査をうとましく思っていた警察でしょう。そして少女の死に直接携わった男も、やがてジェニーにすがるように彼女を訪れ、真相の告白をします。

 すべての真相が明らかになった後、ジェニーに医師として多忙な日常が戻ってきます。彼女は引き続きこの小さな診療所で地域のための医療に務めるようですね。その日常風景がゆっくりと暗転し、日常の物音をBGMに、エンディングクレジットが静かに流れます。
 世界中でヒットを記録する超大作も良いですが、小劇場のみで上映される作品の中にも心に残る名作があります。

原題:LA FILLE INCONNUE。
2016年ベルギー/フランス、106分。日本公開は2016年
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、リュック・ダルデンヌ 。
出演:アデル・エネル、ジェレミー・レニエ、オリヴィエ・グルメ、ファブリツィオ・ロンジョーネ 、トマ・ドレ 、モルガン・マリンヌほか。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM