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ハン・ゴンジュ 17歳の涙

2017/04/21


 ハン・ゴンジュは中学生の頃、集団暴行事件に巻き込まれ、そのせいで高校からは転向を余儀なくされます。母はさっさと離婚して別の男と暮らしており、父は飲んだくれてゴンジュの面倒をみません。中学の担任の教師が受け入れ先の高校を見つけ、彼女を自分の実家に居候させます。
 居候先の元担任の母は、彼女を押しつけられて迷惑そうですが、次第にゴンジュに心を開くようになります。
 新しい高校では誰にも心を開かずひっそりと過ごしていたゴンジュですが、音楽室でギターを弾きながら歌っている姿を見たアカペラ部の生徒たちが彼女を仲間に引き入れます。その時に彼女の歌う姿をスマホ撮りした映像が仲間たちによって芸能事務所に送りつけられると、事務所はゴンジュの歌手デビューを打診してきます。ゴンジュ自身もかなり乗り気でしたが、仲間たちがファンサイトを立ち上げると、それを拒み、仲間たちの許を去ってしまいます。
 ゴンジュのためを思ってしたのにと、憤慨する仲間たちですが、ゴンジュがネットでさらしものになった経験があることを知り愕然とします。彼女たちはゴンジュが強姦されている生々しい映像をネット上に見つけます。
 飲んだくれの父は、娘に連絡を取って和解合意書にサインさせ、加害者のひとりから金をせしめます。何も知らないゴンジュのところへ、他の親たちが合意書を持って押しかけ、ほとんど暴徒のように彼女を追いまわします。
 居候先では、元担任の母の不倫相手である警察署長が出入りするようになり、事件の渦中にいるゴンジュの存在を疎むようになり、彼女は行く当てもないままそこを出て行くのでした。

 2004年に実際に起きた密陽女子中学生集団性暴行事件をもとに映画化されたのだそうです。実際の事件とは内容がずいぶん異なるようですが、大勢の卑怯なクズどもによって中学生が性的暴力を受け、警察による捜査がずさんであったこと、適切な保護をしなかったこと、被害者の親が示談に同意し金をせしめていたこと、加害者の親たちが集団で襲撃するような形で被害者に示談を迫ったこと、そういった内容は同じであるようです。
 実際の事件では、4人の女子中学生が不良グループに脅され、何度も何度も強姦され金品を奪われ、ネットに個人情報を流されたりしています。警察の被害者に対する事情聴取は人権を欠いたもので、彼女らは警察官から暴言や侮辱を受けています。
 密陽女子中学生集団性暴行事件は、後にテレビ報道され、社会の性暴力被害者に対する冷遇について問題定義したそうです。

 映画では、主人公のハン・ゴジュの孤立と、弱者の味方になりたがらないばかりか、弱者を疎外したり利用したりする汚いおとなたちの様子が描かれますが、周りのおとなたちの卑劣さに、見ていて気分が悪くなるほどです。
 娘の事件を金儲けに利用する飲んだくれの父親、和解合意書を手に大勢で少女を襲撃する恥知らずな加害者の親たち、ゴンジュを見捨てて再婚し、顔を見せるなと我が子を突き放す母親、不倫相手との再婚を進めるためにゴンジュを追い出す警察署長。どいつもムカつくクズばかりですね。警察署長は行く当てもないのに住む場所を追い出されたゴンジュを呼びとめて、預かってきた示談書にサインしろなどとのうのうとぬかしやがります。
 競争社会の中で、弱者に味方したがる人間はなかなかいません。密陽女子中学生集団性暴行事件でもテレビで報道され、被害者に同情することが安全であることが判ると、人々はようやく彼女たちに同情し、凶悪な犯罪者を憎む発言をするようになったことでしょう。世の中は弱者に対してひじょうに冷酷です。大勢の卑怯者たちに凌辱され心身に傷を負い金品まで巻き上げられた被害者に対して、多くの近隣のおとなたちは、やられる方にもスキがあったとか、遊んでいたとか、あるいは地域の恥だとか、そういう罵声を平気で浴びせたことでしょう。そんなだからゴンジュは地元にいられなくなったわけです。

 唾棄すべきクズどもの、もっとも憎むべきは、集団の力を借りて少女に危害を加えた加害者たちですが、映画の中ではその中の首謀者の高校生は、権力者の御曹司という設定になっています。バカ息子が悪事を働いても親が金と権力で何とかしてしまう、それに逆らう者は報復されることになる。無能なゲス野郎が権力を持つと、社会にとってろくなことになりませんね。権力者には人としての誇りや羞恥心というものが決定的に欠落しています。その卑劣な権力者どもが集まって、みんなでやれば怖くないという互助制度を構築しているわけです。恐ろしいものです。世の中殺伐とするばかりです。

 映画では卑劣なおとなたちや加害者たちについては、よく描かれていますが、被害者がどんなに恐ろしい思いをしたか、被害者にとって周辺社会がどれほど非情なものか、そういった被害者自身の心境が充分には描かれていなかった気がしました。この事件で地獄の苦しみを味わったのは主人公のハン・ゴンジュです。暴行事件に遇って心も体も傷ついて、それでも学校も警察も実の親さえも味方になってくれず、あげくの果てには唯一のよりどころさえ追い出されてしまう、それがどれだけ恐ろしいものなのか、もっともっと痛切に描いてほしかったです。
 周辺社会から孤立することが、偏見によって周りのすべてが敵にまわってしまうことが、どれだけ恐ろしいことか、そんな目に遇ったことがない人たちには解らないでしょう。理解されにくい自称だからこそ、もっと痛烈に彼女の心情を代弁して欲しかった、そう思いました。
 身寄りもなく、警察さえもが信じられない状況で、住む場所まで奪われてしまう、それは弱者は死ねという死刑宣告です。
 映画ではほとんど描かれていませんが、実際の事件では加害者たちは誰も刑罰を受けなかったそうです。権力者のバカ息子の無事を守るために、貧しい家の娘が犠牲になるのは当然のことなのでしょうか。
 これはあらゆる国々における大きな社会問題です。社会が弱者を虐げる、弱者が社会や権力者の犠牲になる、そんな社会は科学技術がどれだけ発展していようとも、経済政策が上手くいっていようとも、文化程度の低い野蛮な国であると言わねばなりません。私たちは蛮族の社会の住人です。

2013年韓国 113分。日本公開は2015年。
監督、脚本:イ・スジン。
出演:チョン・ウヒ、チョン・インソン、キム・ソヨン、キム・ヒョンジュン、イ・ヨンナン、クォン・ボムテク、ユ・スンモク、キム・ジョンソク、イ・チョンヒ、キム・イェウォンほか。

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