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スクール人魚【コミック】

2017/03/05


 少女が見つけた古びた手帳には、恋を叶える方法が記されていました。その方法とは、夜の学校に忍び込み、呪文を唱えて人魚を呼び出し、その肉を食べるというもの。「人魚さん、人魚さん、お願いします。私の恋を叶えてください。私の為に血と肉を」するとスクール水着を着た物言わぬ少女たちがたくさん出現します。水着少女たちは人間とまったく変わらぬ容姿をしていますが、彼女たちには物理の法則が通用せず、壁も天井も突き抜け校内を自在に泳ぎ回ります。
 紺色のスクール水着には胸に小さなゼッケンがついていてアルファベットが1つ書いてあります。恋を成就させようとする者は、好きな相手のイニシャルを付けた人魚を捕獲し、その肉を食べなければなりません。人魚たちはひじょうに素早く、しかもあらゆる障害をすり抜けてしまいますから捕まえるのが容易ではありません。しかも夜明けまでに人魚の肉を食べなければ、自分が人魚になってしまうのです。

 少女たちの恋する相手への思いというのは、一途で盲目なものですね。その周りが見えない目で、少女たちは深夜の学校の人魚を見ます。虫も殺せないような顔をして、彼女たちは包丁やバール、金属バットなどを振りかざし、自分たちと同じ少女の姿をした人魚たちに襲いかかり、その肉を削いで食べます。
 1話から数話で完結するエピソードには、たいてい2人の少女が登場します。2人の関係は恋を成就させるための協力体制であったり、恋敵を陥れる罠だったりします。そして人魚を食べて恋を叶えるという計画は、思わぬ結末へと少女たちを運んでゆきます。
 夜の学校の人魚伝説は、1冊の手帳に記され、それを手にした少女たちによって新たな事実が書き加えられてゆきます。手帳は偶然のように少女たちの手から手へと渡って行き、深夜の学校で人魚狩りが繰り返され、その中には狩りに失敗する例も少なくありません。そうして人魚たちは狩られても狩られても新に増えて行くことになります。

 吉富氏の漫画に初めて触れたのはたしか「しまいずむ」という百合系の作品だったと思います。絵がひじょうに可愛いので魅せられたのですが、内容は幼い少女たちの日常を描いているのですが、そこには大人たちの入り込めない秘境のようなものがあって、ドキリとさせられます。純粋で透明で無垢であるのに、ひじょうにミステリアス、その世界観が素晴らしいと思いました。
 そして本作「スクール人魚」ではミステリーの部分が強調され、深夜の学校がお話しの舞台になります。昼間の生徒たちの喧騒が消え失せた夜の校舎は、ひじょうに不気味な空間ですが、そこに不釣り合いなスク水少女たちがワラワラと出現し、クスクスと笑い、ピィと鳴きます。ホラーというと不衛生感満点のエグイ化け物がうめき声をあげるものですが、ここに登場するのは物言わぬ少女たち。いささか時代遅れのスクール水着を着て、あらゆる障害をすり抜けて空気中を泳ぎ回っています。定そして彼女たちを追う方もまた少女で、同じ年恰好の生身の女生徒でありながら、こちらは殺戮の亡者と化しています。番のホラーとはまったくちがった異質の恐怖が辺りを支配しています。

 可憐なスク水少女たちの群れ、可愛いなぁ、遇ってみたいなぁ、なんてことは考えないことです。油断すると彼女たちは唐突に豹変し、逃げることをやめて追いかけてきますよ。
 恋の成就を求めて刃物を振り回す少女たち、失敗して人魚の群れに加わってしまう娘も。そして経験者によって書き足されてゆく手帳。手帳は少女から少女へと不思議な巡り合わせで渡って行き、人魚伝説を静かに学校から学校へと伝えて行きます。
 スク水少女たちは、いつから人魚と呼ばれるようになったのでしょう。伝説はいつ頃から続いているのでしょう。それは唐突に結ばれたカップルや、杳として消息を絶った少女といった謎めいた事件を裏づけるうわさとして少女たちの間で拡がった都市伝説のようなものかも知れません。でも数多くの都市伝説の中のひとつやふたつは、ほんとうのことなのかも知れませんよ。
 吉富昭仁という作家は、あまり長編を書く人ではありません。コミックにして3巻に及んだこの作品は彼にしては長い方です。彼の作品の中で、数多くの少女が描かれて来ましたが、それこそ少女たちの一時期のきらめきのように、短編の中で消えて行きます。そのはかなさが吉富ワールドの魅力を支えているのでしょうか。
 それでもつい思ってしまいます。人魚伝説はこれからどうなるのか、はたまたどのようにして人魚伝説が誕生したのか。前後のエピソードがひじょうに気になるお話しではありました。

2006〜2008年1月 週刊少年チャンピオン、チャンピオンRED 連載。
著者:吉富昭仁。
コミック3巻。

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