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傷だらけの悪魔

2017/02/26


 中学時代に東京の学校で仲間と共に同級生をいじめていた舞は、親の仕事の都合で高校からは田舎の学校に通うことになりました。そこでは目立たず静かに学校生活を送ろうと決めていたのですが、同じクラスにむかし自分たちがいじめていた詩乃がいたのです。詩乃は人前では被害者を装い舞を恐れる振りをし、舞と2人になると陰湿なやり方で彼女を脅すのでした。
 都会からの転校生ということで、舞は最初のうちはクラスの女王の立ち位置の優里亜とその仲間から歓迎されていましたが、詩乃の入れ知恵で優里亜たちは舞をいじめ始めます。
 何もない田舎の穏やかな学校生活だったはずが、一変し地獄と化します。担任教師はいじめの実態を知りながら見て見ぬふりをします。
 久々に東京に遊びに行くと、中学時代の旧友たちは彼女がブスくなったと冷ややかに笑います。舞は彼女たちがうわべだけの友だちだったことを思い知るのでした。
 舞はいじめに対し泣き寝入りはしませんでした。周りの生徒たちと巧妙に接触を図り、詩乃と優里亜を追いつめて行こうとします。

 「傷だらけの悪魔」とはまたずいぶん過激なタイトルですが、日本ではすっかりおなじみになってしまった少年少女が殺し合う血なまぐさい作品ではなかったです。目標に向かって友情を温め合う青春ドラマでもないし、学園ラブストーリーでもありません。学校を舞台にした社会派ドラマですね。
 主人公の葛西舞という少女の生きざまを描いたシンプルストーリーですが、学校という社会を巡る様々な社会問題が描かれています。染髪と派手なメイクでクラスの女王に君臨する者、それを取り巻く者たち。女王はイケてる都会っ子の転校を最初は歓待するものの、彼女の暗い過去を知るとそれをネタにいじめの対象にしてしまう。クラスに横行する"いじめ"を巡り、周りの生徒たちの様々な思惑が錯綜します。多くの生徒は巻き添えを食うのが恐ろしくて見て見ぬふりをしますが、中には義憤を抱いて不器用な反撃を企てようとする者も現れます。
 このお話しのユニークなところは、ヒロインがかつていじめる側の人間であったこと。意に沿わない退屈な田舎の学校に通うことになったヒロインは、これから始まる学園生活に夢も抱いていなければ、期待もしていません。ここでは目立たず騒動を起こさずに過ごそう、そんな消極的な思いで新生活に臨むのでした。
 しかし都会出身の転入生というだけで充分に目立ってしまい、クラスで一目置かれている女王一派に目を付けられてしまい、彼女の生活はなんとなくザワついてきます。そして、かつていじめていた相手との再会という奇遇。運命は彼女をそっとしておいてくれません。
 集団の力を借りてひとりの人間を暴力等で迫害する"いじめ"という行為はひじょうに卑劣で低俗で、人として最低なことです。お話しのヒロインがかつてその最低人間であったなら、新生活で今度はやられる立場になることは、いわば因果応報です。それでも観客としてはヒロインを一方的に厭悪する気にはなれないわけで、女王一派やそれに加勢する生徒たちを応援する気にもなれません。
 いじめられる要因を充分に持った者の味方をせざるを得ない、そして過去にいじめられた経験を持つ者がその痛みも忘れ、復讐心だけを募らせ、残忍ないじめる側の人間に変じる。同情されてしかるべき人間が悪人と化し、嫌われ者のはずの加害者がヒロインに変じる、これがこの作品のひじょうにユニークなところであり、しかもその奇妙な構図にリアリティがあるところが興味深いです。
 単純に類型化された善と悪がぶつかり合う勧善懲悪ものよりも、こうした複雑な人間関係こそが人としてのリアルであり、社会をややこしくしているのでしょう。でもその複雑さにげんなりしているわけにもゆきません。私たちはそうした社会で生きているわけですから。

 さんざんな目に遭った我らがヒロインは、利用できる者は利用し、味方しようとする者はその話しを聞き、じわじわと女王一派を追いつめてゆきます。しかし最後の彼女が"悪"と結論づけたのは、意外な対象でした。いじめの首謀者である女王でしょうか、彼女をそそのかした元いじめられっ子でしょうか、見て見ぬふりをする担任教師でしょうか。
 筆者は、舞が出した結論に深い共感を覚え、この作品が好きになりました。

2017年、97分。
監督:山岸聖太。
脚本:松井香奈。
出演:足立梨花、江野沢愛美、加弥乃、岡田結実、藤田富、小南光司、川原亜矢子、宮地真緒、仲谷香春、芋生悠、高野海琉、YUKINO、中島愛蘭、花影香音、吉増裕士、キタキマユ、蓑島宏美、岩井七世、Lily’s Blow ほか。

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