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マグニフィセント・セブン【映画】

2017/02/22


 南北戦争後の西部ローズ・クリークは、開拓者たちによる小さな町でしたが、すぐ近くで金鉱が見つかり、実業家のボーグが採掘を始めます。町の銀行には採掘された金が運び込まれ、ボーグが雇った用心棒たちがにらみを利かせています。
 ある時ボーグは手下を連れて町を訪れ、町民たちに20ドルで立ち退くよう言い渡します。逆らうものはその場で射殺し、町民たちが集まっていた教会には火を放ちます。ボーグに回収された保安官は、この暴挙に手をこまねいているだけです。
 3週間の期限を言い渡してボーグが町を去った後、夫をボーグに殺されたエマ・カレンは、町を守るために腕の利く助っ人を求めて近くの町を訪れますが、そこでさすらいの賞金稼ぎサム・チザムを見つけます。
エマの話しを聞いたチザムは、ボーグを撃退するには腕利きガンマンよりも軍隊が要ると一蹴しますが、全財産を差し出して懇願するエマに同情し、仕事を引き受けることにします。
 数日をかけて自分を含め7人の戦士を集めたチザムは、ローズ・クリークを訪れ、ボーグの手下の用心棒たち約20人をたちどころに射殺し、保安官をボーグの許へ遣いに出します。
 サクラメントで報せを聞いたボーグは、軍勢を雇用しローズ・クリークに出撃します。町では銃を使ったことのない農民たちの射撃訓練が行なわれる一方で、町を棄てて出て行く人たちも少なくありません。ボーグが指定した立ち退き期限は3週間後、しかし町が用心棒を雇った報せを聞いた彼は10日を経ずして町に引き返して来ました。しかも町人の数をも凌駕する軍勢と悪魔の兵器ガトリング銃を携えて。

 黒沢明監督が当時破格の予算を投入して製作した映画「七人の侍」が公開されたのが、筆者が生まれる前の1954年でした。この時代劇は、当時ハリウッドでブームになりつつあった西部劇に大きな影響を及ぼし、1960年にこれを原作とした西部劇「荒野の七人」が製作されました。最近では西部劇というジャンルの映画が作られるのはほんとうに少なくなりましたが、1960年代はまさに西部劇ラッシュ、ハリウッド以外でもイタリア製西部劇がマカロニ・ウェスタンの呼称で日本でも親しまれました。日本でも開拓時代のアメリカを舞台にした西部劇が作られたりもしました。黒沢作品では他にも「用心棒」がイタリアで和名「荒野の用心棒」として製作され、大ヒットしシリーズ化されました。「荒野の七人」も「続・荒野の七人」「新・荒野の七人」「荒野の七人・真昼の決闘」と4作が作られています。
 この作品は1960年版「荒野の七人」の46年ぶりのリメイクで、原題は同じです。ただ、登場人物や舞台となる町は異なります。1960年版では、7人のガンマンはメキシコの寒村を救うためにわずかな報酬で盗賊団に戦いを挑みます。アメリカ人がメキシコの村を救いに行く映画を作ったりしたら、今ならトランプ大統領が激怒しますよね。19世紀西部開拓時代には、アメリカとメキシコの国境はけっこう曖昧で、アメリカ南西部とメキシコ北部は、ともにフロンティアスピリッツの聖地だったようですね。

 賞金稼ぎやギャンブラー、南北戦争で活躍した狙撃手、盗賊、暗殺者、インディアンハンター、そしてはぐれインディアンといった荒くれ者たちが、やくざまがいの実業家に怯える農民たちの救援に立ち上がりますが、この作品ではヘイリー・ベネット演じるエマ・カレンの雄姿がひときわ印象深かったです。凶悪なボーグに対して逃げ腰な町民に対し、エマは全財産を投げ出して用心棒を雇い、自分たちが苦労して開拓した町を守ろうとします。スカートをはいた若き未亡人が猟銃を構える姿が心を打ちます。
 チザムの「復讐のためか?」という質問に「正義をなす」と応える彼女の瞳がりりしかったです。こうした勇気あるヒロインの存在は荒野の七人シリーズでは初めてのことです。ハリウッド黄金時代の西部劇にも勇敢なヒロインがしばしば活躍しましたが、銃撃戦には素人の農民でありながら、目に涙をためても勇気を奮う生々しいヒロインは、なかなかいませんでした。奇しくも同年製作の西部劇「ジェーン」で、ナタリー・ポートマンが重傷を負った夫に代わって悪漢たちと戦っています。

 最近、老練の役どころが多かったデンゼル・ワシントンが久々にはつらつとしたヒーローを演じました。いい感じでした。ハリウッドではもうお馴染みのイ・ビョンホンが腰に短剣をぶら下げた暗殺者を演じていますが、東洋人はハリウッド映画では寡黙で心が読めない男という印象になることが多いですね。アメリカ人の東洋人感がそうなんでしょう。ジャッキー・チェンは別ですが。
 塗装のない泥だらけの道にせいぜい2階建ての木造建築、よそ者が来ると男たちは猜疑心の強い眼差しをよこし、保安官もうとましそうににらんでいます。女たちは引きずるようなロングスカートで、昼間から酔っぱらったじじいが寝そべっていたりします。懐かしい西部劇の風景がそっくりそのまま再現されているのに、なんだか郷愁のような感動を覚えてしまいました。筆者は子供の頃には西部劇を見まくってました。
 そしてエルマー・バーンスタインによる荒野の七人のテーマがエンディングクレジットで流れると、もう泣きそうになってしまいましたよ。

 悪党ボーグは、それはもう冷血で卑劣で典型的な悪漢です。腰抜けでなかったら町へ来いというチザムの誘いに、彼は100人を超える軍勢を雇い町を襲撃します。相手は戦いには素人の農民たちとたった7人の戦士。多勢に無勢のうえ、ガトリング銃という新型機関砲まで用意しています。そして自分は後方の安全な場所で指示を出すだけ、卑怯ですね。
 はなっから絶体絶命ですが、チザムたちはボーグの金鉱から奪ってきたダイナマイトで罠を張り、塹壕を掘ってゲリラ戦で奇襲をかけます。
 お話しはいたってシンプルな勧善懲悪もの。徹底的ににくったらしいヤツを少数精鋭部隊が奇抜な作戦で掃討し、農民たちも開拓者魂をなめるなとばかりに参戦します。そして怒りに燃えたエマの猟銃がズドーンと火を噴きます。爽快ですねぇ。これぞ西部劇です。そしてシンプルな内容の中にも、人々の様々な思いが詰まっていて、人間ドラマとしてのテーマ性はずっしりとしています。
 無法地帯とも言われたアメリカ開拓最先端地帯で、果敢に生きようとした人々、そこに土着して子供を育てようとした人たち、正義を貫こうとした人たち、武器を手に荒っぽい生き方をせざるを得なかった人たち、そして資本主義における自由競争を民主主義であるとし、弱者から搾取することを新たな時代への適応と考える資産家、さまざまな人々のせめぎ合いが、西武開拓時代の独特な文化を産みました。

 ハリウッド黄金時代いわゆるアメリカ映画全盛期は1940〜1950年代と言われていますが、名作西部劇の多くはその後期から1960年代にかけて作られました。その後は米ソの冷戦を背景にしたスパイアクションや社会病理の産物であるサイコパスを題材にしたサスペンス、ホラーなどに代わられ、西部劇は廃れてしまいました。開拓時代アメリカのフロンティアスピリットは、現在では過去の産物とされていますが、この作品に感銘を受けた人は、老練の観客ばかりであるとは限らないと思います。
 かのスターウォーズ(初期作品は古典化していますが)にも、フロンティアスピリッツは息づいていると思います。ネット社会で新たな時代の有り方を模索する若者たちの心にも。これからも西部劇の名作が作られ続けることを期待したいです。

原題:The Magnificent Seven
2016年アメリカ、133分。日本公開は2017年
監督:アントワン・フークア 。
脚本:ニック・ピゾラット 、リチャード・ウェンク。
出演:デンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホン、ヴィンセント・ドノフリオ、ピーター・サースガード、ヘイリー・ベネット、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センズメアーほか。

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