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この世界の片隅に【映画】

2017/02/12


 1944年冬、広島で暮らしていた18歳になる すずに突然縁談が飛び込み、成行きのまま呉へと嫁いでゆきます。夫は海軍勤務、夫の両親は優しいけれど出戻りで娘を抱えた夫の姉はなかなか厳しい。他人からよくボーッとしていると言われる すずは、姉をいらだたせてばかり。
 太平洋戦争はどんどん激しさを増し、配給品もどんどん少なくなり、軍港の町である呉には毎日のように空襲警報のサイレンが鳴り響くようになります。警報の多くはただの警戒でしたが、やがて無数の戦闘機が空を埋め、焼夷弾を投下するようになりました。港では軍艦が焼かれ、多くの民家も戦火に見舞われました。
 こんなことなら故郷の広島の方が良かった、しかし翌年、その広島に米軍の新型爆弾が投下されます。

 劇場用アニメ「君の名は。」とともに昨年から年またぎでロングラン上映中の大ヒット作品です。戦争の悲惨さを描いたドラマは、暗然とした雰囲気になりがちですが、この作品は、けっこうあっけらかんとしています。戦地で戦っている夫や息子ならずとも、日々の暮らしが隣人や自分の命を危険にさらしている時代で、着るものも食べるものも不足して行く、そんな中でも人々の表情には強い意思があり、ささやかでも笑いがあったりします。とりわけ主人公すずのおっとりした性格は周りの笑顔を誘います。
 広島で暮らしていた時、すずはお使いで独り街に出て道に迷った際に、優しい大男に拾われ背中に背負った桶の中に入れられてしまいます。優しい人もあるものだと桶の中で感心していると、同じ桶の中にすでに捕まっていた男性が、優しいものか、俺たちは人さらいにつかまったのだと教えます。それは困ったことになりましたねぇ。すずは、なんともメルヘンな方法で大男を仰天させ、難を逃れますが、桶の中で出会った男性こそ、未来の夫となる人でした。

 のん気者の すずには自分の縁談話もまるで他人事のようです。そんなもんかいねぇ、といった感じで呉へと嫁いでゆきます。体の弱い夫の母に代わって家事に精を出す日々ですが、すずは些細なことに喜びを見つけて笑っています。すずは絵を描くのがたいへん上手く、土手に座って軍港の様子をスケッチしていると、憲兵たちに間諜(スパイ)と間違えられ、それがまた家族の笑いを誘います。
 しかしながら、そんな すずの周りでも大切な人が命を奪われ、飢餓と死の恐怖が間近にせまります。そんな悲運と背中合わせでありながらも、この作品が死の惨劇ではなく生きている人々にスポットを当てている点が素晴らしいと思いました。

 ものがなくなり、命の尊厳が失われ、思想や言論の自由が踏みにじられた世界で、人々は団結してたくましく生きていました。筆者は、阪神淡路大震災を取材した時のことを思い出しました。取材と言っても会社の文芸誌ですよ、筆者は作家でもジャーナリストでもない、ド素人です。震災で家を失った人たちは直後は呆然としていましたが、それから数ヶ月、1年と時間が経つと口々にこうおっしゃっいました。何もかも失っても、周りに"人間"がいれば、なにも怖くない。
 現在、私たちの暮らしはひじょうに多くの人々によって支えられ、都会ともなると雑踏は人であふれ返ります。そんな暮らしの中で、多くの人が隣人の顔も名前も知らなかったり、孤独を覚えたりしています。平和ボケなどという無責任な言葉が平然と横行しますが、誰もボケてなんかいません。戦争特需にあやかれないアホな資産家が、そんなふうに愚痴っているだけです。現代社会では、交通事故で命を落とす人の数が戦死者を上回りますし、仕事がなく飢餓に直面している人も少なくありません。短絡思考の識者どもが、競争社会だの格差社会だの、勝ち組人生だのと、身勝手なたわごとをがなりたてるおかげで、人々は隣人と分断され、雑踏の中で孤立しています。経済大国なんていう国家主義的なうぬぼれとは裏腹に、この国は恥ずべき自殺超大国です。
 人は力を寄せ合って大きな力を発揮する生き物です。いろんな仕事を分業し、住みよい社会を築いてゆくものです。どんな世の中になってもその基本は変わりません。複雑化し人を食う魔物と化した経済に惑わされてはいけません。真実は人と人との間に存在します。

2016年、120分。
監督、脚本:片渕須直。
声の出演:のん(能年玲奈)、尾身美詞、細谷佳正、稲葉菜月、牛山茂 、新谷真弓、小野大輔、岩井七世、潘めぐみ、小山剛志、津田真澄 、京田尚子、佐々木望、塩田朋子、瀬田ひろ美 、たちばなことね 、世弥きくよ、渋谷天外ほか。

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