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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場【映画】

2017/02/10


 ロンドンで諜報機関を指揮するキャサリン・パウエル大佐は、米軍と協力してケニアのナイロビに潜むテロリストを逮捕しようとしていました。アメリカのネバダ州の基地で操縦されるドローンは、ナイロビの上空6000mを飛行しながらテロリストのアジトを見張っています。
 アジトから出てきた人物が今回の最重要ターゲットであることを確認した諜報機関は、ドローンでの監視と共に、ナイロビの現地スタッフに追跡を指示、テロリストたちが向かった先の建物の内部を現地スタッフが虫型カメラで確認したところ、大量の爆弾を使用した自爆テロの準備が進められていることが判明。
 テロリストを逮捕する作戦は、ドローンに搭載されたミサイルによる敵アジトの破壊へと変更されます。作戦が成功すれば数千人あるいは数万人の自爆テロの犠牲者を救うことができます。ところが、ネバダ基地でドローンを操縦するパイロットが、破壊圏内でパンを売る少女を発見し、ミサイル攻撃の中止を訴えます。
 キャサリン・パウエル大佐は、少女の命を危険にさらしてでも大規模テロを未然に防ぐ必要があると判断し、政府の要人たちにミサイル攻撃の許可を申請します。しかしながら政府のお歴々たちは、自ら責任を負うことを潔しとせず申請はたらい回し、なかなか許可が降りません。そうこうするうちにテロリストたちは自爆テロの準備を着々と進め、大惨事を未然に防ぐ機会は失われようとしています。多くの犠牲者を出す前にミサイル攻撃を強行すべきか、パン売りの少女の命を危険にさらす攻撃は中止すべきか、攻撃の機会が刻々と失われようとするなか、議論は延々と続くのでした。

 無人機によるテロリストの監視とミサイル攻撃は、爆弾テロなどによる大勢の市民の犠牲を未然に防ぐための有効な手段として米軍の現代戦においてさかんに行なわれている戦略です。従来の偵察機による上空監視を遠隔操作の無人機に変えることで、コストも人的被害も大幅に削減することができたそうです。人を乗せないドローンは、小型軽量でエンジン音も小さく、それでいて的上空での長時間の偵察活動と、ミサイルによる的確な攻撃が可能です。高高度からの監視と突然降ってくるミサイル攻撃は、テロリストたちにとっては大きな脅威にちがいありませんが、それでテロが撲滅できるわけでもないようです。
 2014年にアメリカで製作された映画「ドローン・オブ・ウォー」は、元戦闘機乗りだったイーガン少佐が、ドローンの操縦の仕事に配置換えされ、これまでの作戦任務とちがって身を危険にさらすこともなく、頻繁に帰宅し家族とも会えるようになったのに、次第に心を病んでゆく様を描いたものでした。かなり重苦しい内容で、観るのがちょっとキツかったです。
 そして今回の「アイ・イン・ザ・スカイ」では、ドローンによる作戦を指揮する司令官の苦悩が描かれています。最初はあまり乗り気ではなかったのですが、とりあえず観てみるか、そんな感覚で観に行ったのですが、ひじょうに緊張感がありスリリングで、おもしろかったです。ナイロビの現地で命がけで作戦を遂行するエージェントと、ネバダでドローンを操縦する新人パイロット。そしてロンドンで作戦を指揮する敏腕司令官、会議室で政治的な駆け引きを論じるイギリス、アメリカ、ケニアの高官たち。遠く離れた地でネットワークを通じて意見を戦わせる多くの人間たちが、ナイロビのテロリストのアジト1点を見つめています。
 今回の作戦を妨げる要因となったパン売りの少女は、ストーリーの最初の方から登場しており、家の敷地内で楽しそうにフルラフープに興じる彼女を、その父が他人の目のあるところでは遊んではいけないと優しくとがめます。ここは日中堂々と銃器を構えたテロリストたちが闊歩する危険地帯、少女の暮らしは危険と隣り合わせなのです。人目を忍んで遊び、勉強し、家の手伝いのためにパンを売る、そんな少女の日常を見せつけられたあと、彼女がミサイル攻撃の標的圏内に何も知らずに進入してしまうわけです。映画を観ている観客にとって、少女の危機はもはや他人事ではありません。
 ハチドリやコガネムシに偽装した高性能偵察機器を駆使して、敵のアジトを見張り続ける現地のエージェントも命がけです。機関銃を構えた屈強な男たちがそこらじゅうにいる場所で、商人に成りすましてテロリストのアジトに接近し、ゲーム機器の没頭しているフリをしてアジトの監視を続けなければなりません。

 ひじょうにスリリングな内容ですが、007などのスパイアクションみたいには楽しめません。007の方がはるかに多くの血を流しますが、ジェイムズ・ボンドが次々に敵を倒してゆくさまは観ていて爽快です。ところが、この映画では数人のテロリストに対してミサイル攻撃を加えるだけなのに、命の尊厳ついて考えてしまいます。幾多の犯罪アクションに比べて格段に命が思いのです。
 日本公開用のサブタイトル「世界一安全な戦場」とはなんとも皮肉な語句ですね。ドローンのカメラを通してターゲットを見ているパイロットや作戦司令部の人間たちは、自分たちの身を安全な場所に置き、死体を見ることも血の臭いをかぐこともありません。実際に戦場に立つ兵士たちは、自らが敵の標的であり、死をまぬがれるためには敵を殲滅するしかありません。そこにはもはや命の尊厳について考える余裕はなく、迫りくるゾンビを迎え撃つように火器を行使するしかないのでしょう。
 この日本語サブタイは、遠隔操作で攻撃を行なうドローン戦争を言い表す以外に、もう1つの点についても表現しています。クライマックスのあと政府の高官たちが攻撃の是非をめぐって最後まで言い争うなか、そのことについて触れています。
 人間社会には様々な思想や宗教、経済的な立場のちがいがあって争いが絶えません。列強国と言われる大国は殺戮兵器を突き付け合い互いの国民を人質にして折衝することを唯一無二の政治であるという考えを曲げません。世界を網羅する電脳ネットワークが充実し、コミュニケーションのシーンでは国境も地域格差も失われつつありますが、政治家にとって人間を駒にしたウォーゲームは最大の贅沢なのでしょうし、資産家は戦争特需が大好物なようです。しかしながら、それを増長させるのは市民の無関心であり希望を見失い怠惰に流されることです。現代戦においては、みなさんのパソコンもまた戦場にほかなりません。無関心と怠惰と悲観という凶器を収め、希望を持ち続けましょう。

原題:Eye in the Sky。
2015年イギリス、102分。日本公開は2016年。
監督:ギャヴィン・フッド 。
脚本:ガイ・ヒブバード。
出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、イアン・グレン、フィービー・フォックス、モニカ・ドラン、アラン・リックマン、バーカッド・アブディ、ジェレミー・ノーサムほか。

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