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告白【映画】

2017/01/15


 中学校の教師森口悠子は、授業中に生徒たちにクラスの中の者に娘を殺されたことを告白します。犯人は2人、優等生の渡辺修哉とクラスではあまり目立たない下村直樹。森口は教育熱心な教師桜庭正義と恋愛し妊娠しますが、桜庭がHIVに感染していることが判って結婚を断念します。森口は教師を続けながらシングルマザーとして娘愛美を育てていたのでした。彼女の告白は続きます。夫の血液を給食の牛乳に混ぜて2人に飲ませた。2人には命というものをしっかりと噛みしめて生きてほしい。
 森口はそのまま退職、以来クラスでは渡辺に対する執拗ないじめが繰り返され、下村は登校拒否になり自室に閉じこもってしまいます。
 森口に代わって就任した寺田良輝は、自らをウェルテルと称し、生徒たちをあだ名で呼び、何でも受け止めると豪語する熱血教師でした。クラス委員の北原美月を同行して下村の家を訪れ、登校するよう呼びかけるのを何度も繰り返し、それがかえって下村を追いつめてゆくのでした。美月は人の話しを聞かずに突っ走る寺田にいやいや付き合っているものの、下村がとうとう自分の母親を指してしまうという事件が起きると、彼を追いつめたのは寺田だと警察に告げます。
 優等生の渡辺が森口の娘を殺したのには込み入った動機がありました。大学教授の母に幼い頃から電子工学について学びますが、母は研究の情熱を捨てきれず息子を置いて家を出てしまいます。その母に振り向いてもらいたくて、電気ショック式防犯財布を考案し、学生発明部門で賞を受賞しますが母親の目に止まらず、彼のことを小さな記事にした同じ新聞には家族を毒殺した少女の事件の方が大々的に取り上げられていました。素晴らしい発明をしても話題にならない、母の目に留まるには殺人をするしかない、彼はそう判断したのでした。

 同じ湊かなえ原作の映画「少女」を観て、もう1度この作品が観たくなりました。
 2000年に公開された映画「バトル・ロワイアル」以降、中高生と殺人がひじょうに身近なものになりました。あれから現在までに虚構の世界ではどれだけの中高生が殺人に手を染め、殺し殺されしてきたことでしょう。とくに高校生の殺し合いは、漫画や映画の世界では日常の出来事になっています。では現実世界ではどうなのでしょう。若年層による凶悪犯罪は減っているようです。若者による殺傷事件の原因を暴力シーンを含む映画やゲームのせいにする短絡的な識者たちは、この現象をどう捉えているのでしょうね。ただ、アホな大人たちが世の中を無茶苦茶にしちまったせいで、若年層の自殺は増えています。自分の保身にしか興味がない大人たちの無関心という名の凶器が、多くの若者たちの将来を奪っています。
 この映画では、勉強はできるが道徳心が欠如したマザコン中学生が、無力な幼い子供の命を奪って母親の関心を引こうとするのですが、恐ろしいのは身勝手な向学欲から息子を機械オタクにし、挙句の果てに捨てて出て行き、熱心に研究に勤しんでいるのかと思えば、教授と再婚して浮かれて新婚旅行など行ってやがる鬼ババァの方ではないか、筆者はそう感じたのですが、おそらく観客の大半は幼女殺しの渡辺修哉にばかり憎しみを募らせたことでしょう。映画自体も徹底的に彼を悪人として描いています。
 渡辺と下村の起こした幼女殺人は、許しがたいし彼らの情の欠落はひじょうに恐ろしいものですが、彼らの家庭環境にも問題はあった。そしてそうした家庭環境を当たり前にしている現代社会全体の"非情"に対して、筆者は後ろ冷たいものを感じます。
 世の中は厳しいものだ、なんて人は安易に口にし、まるでそれをロマンのように捉えているように見えます。でも厳しさの多くは、弱者や敗北者に対する非情であり、格差や序列を人生というゲームの常識みたいに捉えている民衆の中に蔓延した風潮の非情が恐ろしいです。弱者や敗北者、失敗した者や悲運に見まわれた者が自分じゃなくて良かった、そして序列に自分よりも下があることで安心と存在感を得ている、そんな非情が恐ろしいし憎いです。
 渡辺と下村のクラスでは、渡辺に対するいじめが蔓延し、下村の不登校におせっかいを焼く熱血教師ウェルテルをみんなで見下しながら無関心を決め込んでいます。それが大人たちの非情をそのまま模倣しています。唯一クラス委員の美月だけが、ウェルテルの無知を断罪し、渡辺とも心を通じます。美月だけが人間らしい判断ができる娘のように見えます。しかしその彼女は、家族毒殺少女ルナシーを密かに崇拝するという心の闇を持っています。健全に見える大勢の生徒よりも、過去にいじめられた経験を持ち密かに毒殺少女を崇拝する少女の方が人間らしいというのが、現代社会の図式をほのめかしているようで興味深いです。

 渡辺は、最後まで自分を振り返らなかった母に復讐するために爆弾を作り、森口は告白によって愛娘を殺された復讐を果たします。2つの復讐は学校を巻き込んだ華々しいエンディングへと向かいます。サスペンスとしてはひじょうにおもしろく演出も抜群です。でも表層的に観ると事件の原因はじつに単純なまま終わってしまいます。
 確かにサスペンスとしては成功していますが、原作者のイヤミスの女王こと湊かなえ氏は、この映画をどう見ているのでしょう。原作に内在する社会性が大仰なサスペンス描写によって押しつぶされてしまった点についてどう思っているのでしょう。
 かように屁理屈をこねまわしても、これは筆者の大好きな映画ではありますけどね。

2010年106分。
原作:湊かなえ。
監督、脚本:中島哲也。
出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃、高橋努、井之脇海、田中雄土、西井幸人、能年玲奈、橋本愛、三吉彩花、山田諒、山谷花純 、芦田愛菜、藤原薫ほか。

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