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フィッシュマンの涙

2016/12/30


 記者志望のサンウォンは、世の中の真実を報道することによって弱い立場の人々を助けたいという情熱に燃えていました。某テレビ局に就職を志願したところ、いきなり極秘取材と称する仕事を押し付けられます。うちの局名は伏せて極秘に取材しろ、仕事が上手く行ったら採用してやる。サンウォンは渡された情報を手掛かりに張り切って取材に出かけます。
 取材先は、恋人が魚人間になってしまったと投稿してきた若い女性ジン。彼女に引き合わされた青年パク・グは、人のように話し2本足で歩行するものの、手足もそして顔も完全に魚でした。ある製薬会社の臨床実験に参加したところ、魚になってしまったというのです。
 フィッシュマンの存在はネットを通じて多くの人の知るところとなりますが、製薬会社のピョン博士は、体内でタンパク質を増殖させる画期的な食品の実験を行なっていたところ、その副作用でフィッシュマンが誕生してしまったと記者会見で弁明します。食品開発が成功したら将来的な食糧難事情は一気に改善される
はずでした。
 お金目当てで危険な実験に参加したフィッシュマンの存在は、原題の若者たちの職業難の象徴となり、彼はキャラクターとして人気が急上昇し、彼はマスコミに引っ張りダコ、数々のグッズも販売される事態となりました。
 ある正義感の強い弁護士が、製薬会社を相手取って賠償請求を行なう訴訟を無償で引き受け、それに巻き込まれる形でサンウォンも加わり、ジン、そしてパク・グの父も参加した訴訟チームが結成されます。しかしながらそれぞれの面々の思惑がかみ合わず、訴訟はなかなか上手くゆきません。
 そうこうするうちにパク・グの魚化はさらに進み、彼は大勢の人々の勝手な思いに翻弄されて疲弊して行きます。

 予告編はほとんどコメディでした。大爆笑を期待して観に行った観客は、思っていたより控えめなユーモアに拍子抜けしたかもです。筆者としてももっともっと笑わせて感情を盛り上げた方が、フィッシュマンの孤独や悲哀をより深いものになっただろうと思いました。チャップリンのユーモアも感動を盛り上げるための重要アイテムであったように。今どきチャーリーを持ち出しても名前くらいしか知らない人が多いかもですが。
 フィッシュマンの造形はよくできていました。本物の魚みたいでした。目も動くし。ポートレートを撮るときに笑顔を要求されて苦戦しているさまが笑えました。
 日に日に魚化が進んでゆくパク・グは、訴訟チームや彼のファンたちに翻弄されて、これまでに経験したことのない多忙な日々を送るわけですが、大騒ぎしている周りに反して、彼はあくでも消極的で、言いなりになるばかりで、黙して水を飲んでいるだけです。だれも彼の本当の思いに気づかず、勝手な主張ばかりしています。
 ラストシーンは、予測できるものでした。でもこの終わり方がいちばん良かったのだと思います。

 貧窮したフリーター生活の青年がうまい儲け口と飛び込んだ臨床実験の被験者のバイト、それは彼を魚人間に変えてしまいます。この絶望的な状況はしかし彼を時代のシンボルに祭り上げ、彼はたちまちヒーローに祭り上げられます。この風変りなモンスターパニックが単なるコメディではなく、社会に対する強烈な風刺であることは、観ていて誰もが気づくところです。彼の訴訟のために立ち上がった恋人や父でさえ、金のために汗を流していますし、記者志望のサンウォンも高潔な志よりも夢をつかむために燃えています。高潔と言えば無償で弁護を引き受けた弁護士さえも製薬会社と裏取引してるし(司法取引みたいなもので、心底悪意があるわけじゃないが)。
 フィッシュマンことパク・グ自身は、魚人間になってしまったことをそれほど悲観しているふうはありませんが、これまで周りからあまり相手にされなかったであろう彼の人生は、フィッシュマンになったことで180度変わってしまいます。彼は常に話題の中心で、周りの人々をブラックホールのようにどんどん巻き込んでゆきますが、彼自身はそれこそブラックホールの中心のように空っぽで、けっきょくは誰も彼を見ていません。持てはやされもみくちゃにされながら、彼は孤独を味わっていたのではないでしょうか。これまでの静謐な孤独ではなく、嵐のように騒々しく痛烈な孤独。
 それに彼は一概に人気者というわけではなく、彼を否定し、あろうことか被害者である彼を断罪しようとする集団まで現れます。魚人間はアマゾンに帰れ、みたいな。
 このように見てくると、やはりラストは映画に描かれたようなものになるしかないですね。
 そして、フィッシュマン騒動が過ぎ去ったあとの、周りの人間たちはどうしたのでしょう。

 とっても変な映画なようで、とっても人間くさい作品でもあります。コメディのようでいてシリアスな人間ドラマでもあります。
 そして筆者は、個人的にあるひじょうに気がかりな疑問をここで投げかけておきます。なんで魚だったんだろう……。

2015年、92分。日本公開は2016年
監督、脚本:クォン・オグァン。
出演:イ・グァンス、イ・チョニ、パク・ボヨン、チャン・グァン、イ・ビョンジュン、キム・ヒウォンほか。

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