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巨人たちの星【小説】

2016/09/28


 「星を継ぐもの」3部作のいよいよ完結編です。今から約2500万年前、時空跳躍による星間宇宙旅行を実現していた太陽系人類ガニメアンの宇宙船が、アクシデントにより現代の太陽系に跳躍してしまい、ようやく太陽系内の有人飛行を実現したばかりの地球人と遭遇した、というのが前編のお話し。遠大な時間旅行によって故郷を失ってしまったガニメアンたちは、地球人との友好を深めるのもつかの間、彼らは今はなき母星の同胞が移り住んだ可能性のある数光年の距離を隔てた惑星に一縷の望みを託し、再び旅立ちます。
 ガニメアンたちの移住先は果たして実在するのか、そんな不安を抱えた旅路でしたが、目的の星から地球に対して通信が舞い込みます。その通信がもっと早ければガニメアンたちは安心して出発できたのですが、彼らはすでに地球を経ったあとでした。
 ガニメアン一向との友好を築いた地球人科学者たちは、ガニメアンの新たな故郷であるジャイスターとの交信を試み、地球を絶ったシャピアロン号が無事にジャイスターに行き着くことができるように奮闘しますが、そこに思わぬ新たな勢力が介入し、地球人とジャイスター人たちは惑星の運命を左右する陰謀に巻き込まれることになります。

 まだパソコンもインターネットも存在しないアナログな時代に書かれたSFですが、劇中にはコンピューターやグローバルネットワークが登場し、電脳社会の構想がむかしから存在したことが想像されます。さすがにスマホのような個人端末は登場しませんが。
 前作、前々作に比べるとストーリーがかなり複雑で、地球とジャイスターという2つの文明に加えて、もう1つ別の文明が登場し、あたかもスパイアクションのような作戦や、政治的な駆け引きが行なわれます。第3勢力ジェヴェレン人は、5万年前まで存在したガニメアンたちの母星でもあるミネルバを崩壊に導いた2つの勢力ランビアンとセリオスのうち後者の末裔であることが判明します。
 この三つ巴の攻防がどんなものであるかについては、小説の方を読んでください。
 第1作では、月面で人類と同じ種類でありながら5万年前に生存していた人類の死骸を発見し、それが月の成り立ちと、地球人の進化を解明する手がかりになるという学術的なロマンでしたが、第2作では、実際に異星人との遭遇が生じ、ひじょうにドラマチックな展開になります。そして第3作では、複数の文明人の惑星規模の戦略に発展し、同じシリーズとは思えないような世界が拡がります。月面に1体の遺体を発見するというエピソードに全編を費やした第1作に比べると、第3作は文明の存亡に関わる大事件が繰り広げられ、スタートレックやスターウォーズレベルのボリュームです。もちろん根っこはハードSFなので、お話しはきわめて学術的で、銀河の彼方から様々な宇宙人が集合したり、ジェダイがフォースを使ったりなんてことはありません。

 この大作シリーズに一貫しているテーマは、平和社会への希望です。地球人は熾烈な争いを、その歴史の中で繰り返して来ましたが、グローバルネットワーク時代を迎え、戦争による滅亡の危機を辛くも逃れ、平和共存の社会を目指し始めたところ(作中でのお話し)ですが、ガニメアンたちは草食動物つ由来の進化を遂げてきたおかげで争うことを知りません。よく言われる社会進化論のような競争は文明の発展にとって必要ないという主張がこの作品には見られます。草食動物由来のガニメアンに対して、ミネルバで第2の文明人として栄えた人類は、地球から持ち込まれた肉食動物に由来する進化を遂げた生物で、地球人もその末裔ということになっています。本編に登場するジェレヴェン人もそうです。
 では、もともと肉食動物であったものたちから争いを無くす手だてがあるのか、というのがこのシリーズのテーマになっているように思えます。
 このシリーズが書かれた時代、地球では米ソの対立が激しくなり、いわゆる冷戦がピークを迎え、米ソの代理戦争とも言われる地域戦が方々で繰り広げられ、軍拡と核兵器の増強が進められていました。あわや第3次世界大戦勃発と恐れられる一触即発の事態もありました。そうした時代背景の中で、このシリーズは平和への思いを込めて発表された、筆者にはそのように感じられました。

 その後、パソコンが普及し、この作品にグローバルネットワークとして登場するインターネットが充実し、ソビエトが崩壊して冷戦も終結したと言われていますが、代わりに世界的な経済競争が激化し、格差者買うが誕生しました。旧態然とした競争理論は今なお根強く、一部の資産家たちによるネットを利用したひじょうに過激で迅速な投資戦が世の中を狂わせ、人間社会はいまだに崩壊の危機から脱せないでいます。
 ジェイムズ・P・ホーガンは、グローバルネットワークの実現とそれに伴う平和への国際協力を予言しましたが、ネットワークを利用した悪質な投資戦までは予測できなかったようですね。
 しかしながら、平和への努力、世界的な話し合いや歩み寄りが皆無であるわけではありません。それとこれも著者が予測しえなかったことですが、一般市民の情報収集力と発信力が増強され、市民レベルでの国境や言語を超えたコミュニケーションが急速に進化しつつあり、それが新しい社会への足がかりになっています。
 人類はけっきょく争い続けるよう定められたものなのか、新たな展望が開けるのか、それは市民レベルでどれだけ希望を持つかということにかかっているような気がします。僕たち私たちがあきらめなければ、未来はきっと明るいです。

 このシリーズは、日本では三部作として完結していますが、じつは原作は「巨人たちの星シリーズ」としてもう1作品「Mission to Minerva」が上下分冊で1997年に発表されているそうです。
 また、日本ではコミック化されており、その著者星野之宣の独自の解釈やエピソードを含む内容で4巻が刊行されたそうです。改行の少ない文字だらけの古い小説に馴れていない人には、コミック版の方が解りやすいかもしれませんね。コミックのタイトルは「星を継ぐもの」です。

原題:Giants' Star
1981年イギリス。
ジェイムズ・P・ホーガン 著。

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