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シン・ゴジラ【映画】

2016/09/09


 ある時、東京湾に突如異変が発生します。海底トンネルが陥落し海面に水煙が上がり、港に津波が押し寄せ。総理は緊急閣僚会議を開いて事態の原因究明と対策に尽力します。原因については海底火山の爆発というのが有力な見方でしたが、内閣官房副長官の矢口は、巨大生物の可能性を提言します。大勢の閣僚がその意見に呆れてしまいますが、時を移さずして"それ"は信じられない異形をあらわにします。大型のクジラ並みの巨大生物は、河口を伝って市街地に侵入しますが、科学者たちの見立てではその大きさでは地上で自重を支えることは困難で、上陸はありえないとのことでした。
 ところが、怪物は形態を変化させて4足で体重を支えるに至り、東京の町で大暴れするのでした。そればかりか、次々に変身して行き、最終形態では身長118.5mの2足歩行の怪物へ驚異の成長を遂げるのでした。
 怪物の出現を受けて急きょ来日した米大統領特使のカヨコ・アン・パタースンは、過去に怪物の存在を予知しその研究を続けていた日本の科学者のデータを持参し、怪物掃討作戦のチームに加わります。パタースンが紹介した科学者(すでに死亡)の呼び方にちなんで、怪物はゴジラと命名されます。
 ゴジラを撃退するには自衛隊の火器による攻撃が必須ですが、市街地での戦闘は憲法違反という足枷に政府は躊躇してしまいます。とは言うものの拡大する被害を野放しにもできず、けっきょくは攻撃を実施するのですが、まったく歯が立ちません。ゴジラの脅威は日本のみならず世界にとっての災厄であると判断したアメリカは、核攻撃によるゴジラ撃滅を宣言し、国連もこれを支持します。
 広島をはるかにしのぐ核爆弾が行使されれば、日本は壊滅してしまう、矢口やパターソンらは、ゴジラを生物学的に沈黙させる作戦を計画し、米軍による核攻撃の先手を打とうと奮闘します。

 ゴジラは、1954年に公開された映画「ゴジラ」に登場する怪獣で、2足歩行し身長が50mほどもあり、口から放射火炎(しばしば放射能と表現される)を吐きます。ゴジラは最初、とある離島に出没する伝説の怪獣で、島民たちは生贄をささげて荒ぶる神 呉爾羅 の怒りを治めていました。東京から島を訪れた学術チームは、巨大な足跡や中生代に滅んだはずの生物の生きた姿を目撃し、改訂洞窟に潜んでいた怪物が、水爆実験によって突然変異を来したと推測します。その後ゴジラは東京湾に現れ、首都を脅かしますが、あらゆる生物を死滅させることができる極秘兵器オキシジェン・デストロイヤーによってこれを撃退します。
 登場した当初、ゴジラは核実験の弊害によって出現した突然変異古代生物として表現され、核の軍事利用に対する批判を含んだスリラーでした。
 その後、子供たちが崇拝する怪獣として愛され、東宝漫画祭りのメイン作品としてひじょうに数多くの作品が製作されました。ゴジラはもともと破壊神ではありますが、遠い宇宙からキングギドラなどの地球の生態系を脅かす脅威が訪れると、モスラの説得に応じてこれを撃退するヒーローに変じます。悪役であるけれど、宇宙からの数々の外敵に対しては地球防衛の要になるという微妙な立ち位置で、子供たちに支持されました。かく言う筆者も生まれて初めて見た劇場映画がゴジラという、ゴジラを観て育った人間のひとりです。

 その後、ガメラや大魔神やガッパが大暴れし、M78星雲からウルトラマンがやって来て毎週日本を襲う怪獣を撃退し、1960年代の日本は、身の丈数十メートル体重数百トンの怪獣たちに蹂躙され放題なのでした。
 数々の怪獣が出現しましたが、けっきょくゴジラが末永く支持され、大人向きの平成ゴジラシリーズに受け継がれ、ハリウッド映画にもなりました。
 1989年に公開されたアメリカ版ゴジラは、身長60mと体が大きくなり、縦扁した体型に長い足を持つ恐竜スタイルで、放射火炎は吐かず、魚を食っていました。この「GODZILLA」も軍事核利用に対する批判を含んでおり、学術的な設定もよりリアルなものになっていましたが、日本の子供たちが愛したゴジラとはかけ離れており、やがて30歳になろうかという筆者も、世間の批判に同じく、魚食ってるヤツはダメだな、と思いました。

 そして2014年に再びハリウッドで製作された映画「GODZILLA ゴジラ(日本題)」では、なんと身長が105mと初代のゴジラの倍以上になり、高層化が進んだ街並みにも引け劣らない風格で蘇ったのでした。2014年版のゴジラは、サイズはとてつもなく大きくなったものの体型や放射火炎を武器とするところは日本版ゴジラをひじょうに忠実に再現しており、水爆実験に端を発するところも同じです。ただし、核兵器に対する批判という内容にはなっておらず、ゴジラは太古のむかしに核物質をエネルギーにして生きていた巨大特殊生物という設定になっています。数十万年数百万年という長いスケールで休眠と活動を繰り返す、通常の生物とは生態系を異にする生き物で、そのサイズと時間的あるいはエネルギー的スケールの大きさは鉱物の循環のレベルに近いものがあります。
 1945年のビキニ島の水爆実験の背景にはモナーク計画という極秘プロジェクトが含まれており、当時すでにその存在が知られていた巨大生物を撃退することが、水爆実験の別の目的でした。
 そして1999年、日本の原子力発電所に勤務する核物理学者ジョー・ブロディは、発電所の事故で妻を失い、その事故が地殻の奇妙な振動によるものであることに疑いを持ち、原因究明のために孤独な研究を続けてきました。それから15年後、世間から変人扱いされている父とは別れ、故郷で暮らす息子のフォードは、アメリカ海軍で爆破物処理班に勤務していました。
 発電所事故に地殻の異変を感じとってそれを追い続けるジョー・ブロディ博士と、米軍の爆破物のエキスパートとなった息子のフォード、2人の存在がモナーク計画の中心人物である芹沢博士の目に留まり、今まさに蘇ろうとしている伝説の怪物に対処するためのチームに招かれることになります。
 2014年版ゴジラでは、先んじて出現したムートーという雌雄の怪獣を追ってゴジラが登場します。アメリカに急接近する怪獣を、米軍は軍事作戦によって殲滅しようとしますが、芹沢博士の考え方は、ゴジラによる生態系のバランス維持を信じようというものでした。すなわち、ムートーが生態系を無視して現代の世で大繁殖を試みようとすれば、ゴジラがこれを殲滅してしまうというもの。
 日本で育ったゴジラは、宇宙怪獣から地球を守るヒーローでしたが、2014年版のゴジラもまた、人知を越えた超生態系を維持するためのヒーローでした。身長100m越えのゴジラは、破壊神ではなく地球の守護神だったのです。今後、人類が卑しい経済競争を止められず、軍事的な暴走を来そうとしたとき、ゴジラは再び現れ、人類の愚行に対して鉄槌を下すかもしれませんね。

 そしてそして、日本でまた新たに製作されることになったゴジラは、身長が118.5mとさらに大きくなり、東京で大暴れしました。公開前に予告編を見た時には、変な顔の不気味なゴジラだなぁと思いました。「新世紀エヴァンゲリオン」で一世を風靡した庵野秀明が総監督ということもあって、シュールで散らかすだけの映画なんじゃないかと訝りました。ゴジラなんか作ってないで、エヴァの後片付けをきちんとやれよ、そう思いました。シン・ゴジラというタイトルも嫌いでした。いっそシト(使徒)ゴジラにでもすりゃよかったのに、そう思いました。
 筆者はエヴァンゲリオンを初回放送から観てハマった人間のひとりですが、散らかすだけ散らかして意味不明のグチャグチャ作品にしてしまい、挙句の果てに海賊ものになって、謎は解明されないまま使徒(エヴァンゲリオンに登場する正体不明の敵性体)事件も解決しないままという悲惨なプロセスにうんざりし、庵野秀明にはもう騙されねぇ、そう思っていました。シュールなもの、未解決な結末が嫌いというわけじゃないけれど、使徒の正体は何だったのか、人類補完計画って何だったのか、作品を作った本人も知らん、なんて話にならない。

 シン・ゴジラ(顔とタイトルがいまだに好きになれないけど)は、庵野版だけあって、その正体については一切が不明のままでした。宇宙から飛来したとか、放射線による突然変異だとか、古代超生物だとか、そういった設定はありません。人の理解を超えた巨大な破壊者が、現代の日常に唐突にその姿を現したら、人間はどうするのか、政府はどんな対策を講じるのか、そういったことがテーマであって、ゴジラの出生についてはどうでもいいんですね。神か悪魔か宇宙怪物か、とにかくそいつは降って湧いて、理不尽な殺戮と破壊を始めたのです。で、米軍は広島の数十倍の威力の核を、今一度日本に投じる決定をするのです。
 悪くないですね、これなら。下手な科学的根拠を付加するよりもずっと生々しいです。なぜ、とかどうしてという人々の叫びをことごとく蹂躙し、破壊者は問答無用で暴れ回り、人々は否応なくそれを受け入れるしかありません。そんなふうに日常が一変してしまったら、人間はどうする? それがシン・ゴジラのテーマです。同じ意味不明ものでも、エヴァとは状況がちがいます。ゴジラは何者? なんて疑問を寄せ付けず、今この状況に対処せよ、緻密な設定があるよりもむしろ臨場感があります。すごいと思いました。
 であれば、ゴジラである必要があったか、そんな疑問が残ります。劇中の人々はゴジラなんて見たことも聞いたこともないはずですが、観客たる我々はゴジラがなんなのかあるていど知っていて、その法外なパワーに畏怖を覚えるとともに親近感みたいなものも持っています。1954年に初めてお目見えしたゴジラとはちがうのです。意味も分からない不条理な恐怖を描きたかったのなら、それこと使徒でも良かったんじゃないのか、そんな気もします。
 ただ、サキエルやウリエルよりも、絵柄的にゴジラは破壊者としてリアルで、絵になりますよね。マトリエルやカヲル君が暴れてくれちゃっても、それこそエヴァでも持ってなけりゃ自衛隊も米軍すらも対処のしようがありません。
 シン・ゴジラは、最初小さな4足で這いまわるどんぐり目玉のとぼけた怪獣でした。それが次第に変化して、最終的に巨大なゴジラになります。劇中の科学者はこれを「通常生物は世代交代を繰り返して徐々に進化するものだが、ゴジラは単体でどんどん進化を遂げる」と表現しています。このあたりはやっぱ使徒的ですね。でもそれではあまりにも非現実的なので、その破格のパワーの源として核エネルギーを利用していることを科学者たちは突き止めます。
 核エネルギーを利用しているものに、核攻撃を加えたらさらに喜ぶんじゃね? とふと思いましたが、シン・ゴジラではもっと素晴らしいアイディアが登場するのでご安心を。エヴァンゲリオンを見ている人は、ヤシマ作戦を思い出しますよ、きっと。BGMもまんまだった。

 シン・ゴジラは、怪獣映画というより政治ドラマです。前例のないパニックを持ち込まれらら内閣は、軍はどう対処するのか、それがひじょうに克明に描かれます。各省庁は自らの立場を主張し、決定責任を総理に押し付け、自衛隊の火器使用が違法な戦闘行為なのかが真剣に議論されます。そのやり取りはこっけいにさえ見えるのですが、震災や有事の際にはどうするんだろう、なんて考えると背筋が寒くなります。市民の生命財産が権力者の保身と天秤に掛けられたりするわけですから。
 ゴジラそのもののリアリティよりも、パニックに陥った政府や市民の生々しさに迫力があり、惹きつけられます。ひじょうに楽しめる作品です。子供よりも大人が楽しめる映画だとの評価も多いようですが、筆者は子供たちも大いに見れば良いと思います。筆者が子供の頃も、大人が楽しむ洋画を夢中になって観てましたし。西部劇とか007とか。

 シン・ゴジラは、ヒーローにはなれませんでした。その意味ではゴジラの原点に戻ったわけですが、東宝漫画祭りを経て、ちょい悪なヒーローとして成長していったゴジラを知っている者にとっては、ちょっぴりり寂しさを感じたりもします。そこへゆくと2014年のハリウッド版ゴジラのヒーローぶりは爽快でした。
 とある情報によると、シン・ゴジラの続編製作が決定しており、公開が2019年で別の怪獣と戦う内容とのことです。それが本当なら、次回作ではゴジラはヒーローになれますね。
 また、ハリウッド版ゴジラの方も、2018年に続編が公開されるとか。その前2017年にキングコング:スカルアイランドなる映画が公開され、2020年にはゴジラとキングコングが戦うとか。……。南の島で巨大化したおサルさんも、放射能食って100mの怪獣になるのかなぁ。もはやハリウッド漫画祭りだ。がんばれ、ゴジラ。

2016年、日本、119分。
総監督、脚本:庵野秀明。
監督:樋口真嗣。
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、市川実日子 、犬童一心、柄本明、大杉漣、緒方明、片桐はいり、神尾佑、國村隼、KREVA、黒田大輔、小出恵介、高良健吾、小林隆、斎藤工、嶋田久作、諏訪太朗、高橋一生、塚本晋也、津田寛治、鶴見辰吾、手塚とおる、中村育二、野間口徹、橋本じゅん、浜田晃、原一男、ピエール瀧、平泉成、藤木孝、古田新太、前田敦子、松尾諭、松尾スズキ、三浦貴大、光石研、森廉、モロ師岡、矢島健一、余貴美子、渡辺哲ほか。

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