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ランダム 存在の確率【映画】

2016/08/03


 エムとケヴィンは友人宅のパーティに招待され、気の合う男女8人で楽しい夜を過ごしています。その夜はミラー彗星が地球に最接近し、そのことで何かが起こるとウワサされていました。一同が歓談していると突然停電が起こり、全員の携帯電話と家の電話、インターネットがつながらなくなってしまいます。孤立してしまった一同は、窓の外を伺い町中が停電になっている中で、1軒だけ電気が通じている家を見つけます。
 家族と連絡を取るために唯一灯りの点いている家を訪れた男性2名は、その目的は果たせなかったもののなぜだか1つの箱を持ち帰ります。スチール製の一抱えほどある箱を開けると、中から卓球のラケットと彼ら自身の写真8人分が出てきます。しかもそのうちの1枚は、当日彼らがいる家で撮られたものでした。
 停電の中で明かりがついている家でいったい何があったのか、そこから持ち帰った箱になぜ自分たちの写真が入っていたのか。不審に思いまた何人かがその家を見に行きます。するとそこは自分たちがいるはずの家そのものなのでした。

 これはホラーやオカルトではありません。SFです。彗星が地球に接近する夜、量子論的な怪事件が起きるのです。町中停電の中で、なぜ1軒だけ灯りのついた家があったのか、それはエムとケヴィンが参加したパーティの行なわれている家の自家発電機が起動したからです。なぞの家から持ち帰った箱の中になぜ自分たちの写真があったのか、それは彼ら自ら箱に写真を入れたからです。では謎の家は少し未来の彼らの家なのでしょうか。そうではありません。
 問題の家から戻ってきた2人は、ほんとうに元の彼らだったのでしょうか。そのうちの1人のスマホはパーティの最中に画面が割れてしまいますが、帰還した男のスマホは無傷でした。

 通常の物理の世界では、原子やそれを構成する素粒子が集まって状態が形成されますが、素粒子の世界では状態が重なり合って粒子が構成されます。人間が観測しない粒子は同時に複数の座標に存在し、その様子は波動関数という確率論として表現されます。人間が観測することによって波動関数が収縮(崩壊)し、粒子は1点の粒として確認されます。つまり観測するという特定の条件が、粒子に存在する場所を与えるのです。
 お話しの中に、あの有名なシュレディンガーの猫が登場します。1つの箱の中に閉じ込められた猫は、箱の中の青酸ガス発生装置にその命を握られています。装置の概要は、放射性物質ラジウムとその原子核が崩壊するときに発生するアルファ波を検知するガイガー計から成り、ガイガー計がアルファ波を検知すると青酸ガスを放出する仕組みになっています。ラジウムがアルファ崩壊する確率は1/2なので、猫が毒殺される確率も1/2。箱の中の猫は、観測者が箱を開けるまでその生死が不明です。この未確認の生死不明の状態の猫のことを、生死両方の重ねあわせの状態だと表現します。シュレディンガーの猫は生きながら死んでいるんですね。
 素人が波動関数の崩壊について考えるとき、観測後の結果を決定する要因は観測の仕方(状況、方法)に依るのではと思いがちですが、これは確率論なのだそうです。波動関数をグラフで図示した時のもっとも高い山の値が観測結果として落ち着くんですと。なんかそのようなことを習った覚えがあります。
 でも、波動関数のグラフがフラットだった場合、例えばサイコロを数百回転がして出る目の確率をグラフにしたような場合、1〜6までその結果はほぼ平等であると期待するしかありません。つまりどんな結果が出てもおかしくない、可能性として存在するあらゆる結果が平等に出現しうるわけです。
 物質を構成する素粒子のさらにそれ以前の状態という世界にアプローチを試みると、多世界解釈、パラレルワールド、時間軸の分岐といった、なんだか荒唐無稽な想像世界が広がることになりますが、粒子が状態(可能性)の重ねあわせで構成されているのだとしたら、私たちの世界と並行して存在するパラレルワールドを否定できなくなります。ただ、私たちはその1つを現実として体験し、他の並行宇宙を認識することができないので、それは存在しないのと同じことですが。
 SFのように時間旅行や空間跳躍が可能になれば、同じ時空に複数の自分が存在してしまうようなパラドックスが発生するかもしれません。ひじょうに大きな重力によって空間は曲がり、時間は引き伸ばされます。高速移動によっても時間は伸びます。ジェット機で移動中の人と地上にとどまっている人とでは時間の経過はひじょうにわずかながらちがいます。海外旅行に行って帰ってきた人は、0.0000…?秒過去にタイムトラベルしたことになり、あなたは、0.0000…?秒過去の彼と再会することになります。将来、科学技術の進歩によって超高速の移動や空間跳躍が可能になれば、それに伴う時間の伸びは私たちの生活において無視できない値になるかもしれません。

 ミラー彗星が地球に最接近する夜、どの程度かは知りませんが大規模な停電や通信障害が起き、エムとケヴィンたち8人は物事の秩序が崩壊する現象に巻き込まれてしまいます。なぜ彼らだけがそうなったのか、他の住人たちはどうなったのか、また別の時空で同じような混乱に遭遇しているのか。それとも停電した街の中で自家発電で灯りを点けたことが彼らを空間のひずみに招いてしまったのか。見終わってから謎が怒涛のように押し寄せてきて止まりません。
 低予算製作で、大仰な演出はほとんどなく、極めて身近な日常的光景が描かれるだけなのに、ささいな異変やキャラクターたちの小さな異常に目が離せなくなり、恐怖といおうか不思議な感情に圧倒されます。

 それでも夜は終わり、人々は無事に朝を迎えますが、些細な何かがちがっています。エンディングはちょっと煮え切れない感じになっていて、観る人によっては消化不良を覚えるかもしれませんが、一見平穏に見える朝を迎えた彼らのちょっとした挙動にじつはひじょうに大きな意味が含まれていることに気づくと、ぞっと背筋が寒くなります。
 これはもう1度観なおさないといけない、そう感じました。CGを駆使した壮麗なSFスペクタクルも良いですが、こうした頭脳戦オンリーのSFもたいへん貴重ですし素晴らしいです。

原題:COHERENCE。
2013年アメリカ、88分。日本公開は2015年。
監督、脚本:ジェームズ・ウォード・バーキット 。
脚本:アレックス・マヌジャン。
出演:エミリー・バルドーニ、モーリー・スターリング 、ニコラス・ブレンドン、エリザベス・グレイセン、アレック・マヌシャン、ローレン・マハー 、ヒューゴ・アームストロング 、ローリーン・スカファリア。

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