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ウンギョ 青い蜜

2016/06/26


 70歳になる天才詩人イ・ジョギョは、詩について大学で講義を担当している際、工学部に身を置くソ・ジウから的外れな質問を受け、それがきっかけでジウを文学の弟子にします。ジウは通いで独り暮らしのジョギョの世話をしながら文学を学び、やがて小説「心臓」を発表しますが、それがベストセラーになり彼は一躍有名になります。
 ある時、ジョギョが帰宅すると、敷地内に勝手に侵入した女子高校生のウンギョが籐椅子に身を沈めて眠っています。塀の外からその椅子を眺めているうちに座ってみたくなった、無垢な笑顔でそう答えるウンギョを叱責することもできず、それを機に彼女はアルバイトで家の掃除や片付けの手伝いをすることになります。
 ウンギョはジョギョによくなつき、老詩人にとってもそれがとても心地よいのでした。ある時、みんなでハイキングに出かけた際、ウンギョはジウに驚かされて手鏡を崖から落としてしまいます。「母さんにもらった大切なもの」と言って泣くウンギョに「同じものを買ってやる、工場で量産されたものだ、どれも同じだろう」と悪びれることもなく言い放ちます。しかしジョギョは危険を冒して崖を降り、手鏡を取ってやります。
 またある時、ウンギョはずぶ濡れになってジョギョの家を訪れます。母にぶたれ家に帰れないというのです。ジョギョは彼女の制服を乾かし、自分の部屋着を貸し与え家に彼女を泊めることにします。そして朝になると、彼女がジョギョの布団の中に潜り込んでいるのでした。
 ウンギョのだぶだぶの部屋着の胸元に垣間見えた鳥の絵についてジョギョが質問すると、それは"ヘナ"というペイントで刺青とちがって数日で消えてしまうものだと言います。ハラボジ(おじいさん)にも描いてあげるというウンギョの申し出を、ジョギョは断れませんでした。
 少女の膝枕でヘナを描いてもらいながら、ジョギョは夢を見ます。自分が若返ってウンギョと戯れる夢です。
 老詩人は、夢で体験したことを短編小説にし、誰にも見せずにチェストの中にしまい込みます。
 それからしばらくして弟子のジウが文芸誌に投稿した短編小説が文学賞を取ることになります。「ウンギョ」と題されたその作品は、ジョギョのチェストから盗み出した原稿でした。ジウは名声を手にしますが、彼の作品はデビュー作の「心臓」からすでに師匠の手によるもので、けっきょく自分では作品を仕上げた経験がありませんでした。

 静かで素朴で、緑豊かな田舎の風景にウンギョの姿がとても映えてて、美しい詩を読むような映画です。でも、口数の少ない老詩人の心中は激しく揺れ動いています。工学部出身の弟子のジウは、師匠の少年のような心を理解せず、女子高生と過ごす彼を「あなたは老人なのですよ、これは汚いことだ、スキャンダルです」とののしります。そう言いつつ自らはもっと汚いことに手を染め、ウンギョにも手を出してしまうんですけどね。
 寡黙な老人に無心な笑顔を送り続け、彼にピッタリくっついて歩くウンギョの方が詩心を理解していて、文芸誌に載った「ウンギョ」もジウの手によるものではなく、ジョギョが書いたものだと見抜きます。彼女は「手鏡の大切さもわからない者にあの小説は書けない」
 ジウはまるで、老人と少女という稀有な文学作品を土足で蹂躙する無頼漢のようでした。
 しかしながら、ウンギョが現れるまでは、ジョギョとジウの機械仕掛けのような師弟関係が淡々と続き、作品の書けない弟子のために支障は小説を書き、弟子は名誉をものにしながらみじめな境遇に苦しんでいました。そんな2人の仮面の関係に、突如として舞い降りた少女が、2人を翻弄し、やがて悲しい顛末へと導いてゆきます。
 最初からウンギョが弟子だったらどんなに良かっただろう、ジョギョは何度もそんなことを考えたにちがいありません。彼女ならジョギョの感性や考え方を理解し、優れた詩人になれたかもしれません。

 「その怪物」「コインロッカーの女」で迫真の演技を見せたキム・ゴウンが素晴らしくて、この作品も彼女が出演しているということで観ました。日本では劇場公開されていないのでしょうか。この作品がおそらく彼女のデビュー作だと思うのですが、素朴で幼い容姿を持ちながら、オールヌードで激しい濡れ場を演じたのはかなり衝撃的でした。最近では「メモリーズ 追憶の剣」でイ・ビョンホンの相手役で凄腕の女剣士を演じていますが、その後も「奴が笑う」「ケチュン御婆」と出演作は続いているようです。今後ますます期待の女優です。
 で、この作品、良かったのか否かと申せば、素晴らしかったです。これをおもしろくないなどと言ったら、詩心の解らぬソ・ジウとおなじになっちゃいますよ。

2012年、129分。DVD発売中 R-15指定。
監督、脚本:チョン・ジウ。
出演:パク・ヘイル、キム・ゴウン、キム・ムヨル、チョン・マンシクほか。

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