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ちはやふる【映画】

2016/05/15


 綾瀬千早(ちはや)は、幼い頃に覚えた かるたをずっと愛し続け、瑞沢高校に入学するとすぐに かるた部を設営しようと奮戦していました。姉は雑誌の表紙にも載るアイドルでその妹ということもあって最初は男子部員が殺到するのですが、競技かるたの格闘技ばりのすさまじさに軟弱な男子たちは尻尾を巻いて逃げてしまいます。けっきょく1人の部員も獲得できずに落胆しているところへ、幼馴染の太一と出会います。幼少の頃一緒に かるたに没頭した彼を巻き込み、競技かるたの元ライバルの西田(肉まん君)、呉服屋の娘にして和文化ヲタクの大江奏、いつも机にかじりついている秀才駒野勉(つくえ君)を部員にすることに成功し、最低構成人員の5人を達成し、なんとか かるた部を発足させるのでした。
 「この5人で全国を目指そう」千早の無謀な目標に、競技かるた初心者を2人も抱えた部員たちは愕然としますが、彼女の熱血ぶりに圧されて強化合宿を行ない、腕を磨いてゆきます。分梅神社の神主原田先生は、幼い日の千早や太一の かるたの師匠ですが、瑞沢高校かるた部の無謀な挑戦を無謀と思っていない様子です。合宿でもメンタル面でも部員たちをサポートする原田先生の後押しもあって、5人は東京地区予選に挑み、強豪北央高校を破って全国大会に進むことになります。
 ずっと かるたをやっていれば、いつかきっと新(あらた)と再会できる。それが千早の かるたへの情熱に秘められた思いでした。幼い頃、親の仕事で一時的に東京にいて一緒に過ごし、彼女に かるたの楽しさを教えたのが、祖父を かるたの名人に持つ新でした。
 現在は郷里の福井で暮らす新でしたが、全国大会に進めば新に会える、千早は吉報を電話で新に伝えますが、彼の返事は「おれはもうかるたはやらん」という信じられないような返事でした。
 落胆もつかの間、彼女と同じ年でクィーンの称号を持つ若宮詩暢の存在を知った千早は、部活そっちのけで打倒クィーンを目指すようになり、次第に仲間とすれちがうようになります。

 でました、熱血高校部活ドラマの決定版。以前に筆者が熱狂した「幕が上がる」は早いものでもう1年前のお話し。高校部活で熱血しよう、というジャンルは日本映画の最重要アイテムの1つでもあります。これまでにも「ウォーターボーイズ」「スゥイングガールス」「書道ガールズ」と数々の秀逸な作品が輩出されてまいりましたが、本作は高校青春ものであることに加え、コミックを原作に持つという、これまた日本がひじょうに得意とするジャンルでもあります。コミック→アニメ→劇場版(アニメor実写)のパターンは、ヒット作の言わば王道です。そしてコミックやアニメの分野では、この手の作品は、学園ラブコメというカテゴリーに位置づけられます。
 ラビューでコメディな作品とは申しましても、単にラブラブやってドタバタずっこけコメディやるだけではないのが日本のコミック&アニメの奥深いところで、部活やるわテロリストと戦うわ、宇宙人やっつけるわ、異世界の魔神を撃退するわと、もはやラブはどこいったまで世界は広がります。これが海外でも大ウケで、韓国や台湾では、大ヒット映画やドラマの原作が日本のコミックというのが珍しくありませんよね。
 本作はアニメ化もされていますが、筆者は原作コミックもアニメもチェックしていません、すみません。なのでコミック&アニメではどうなっているのか判りませんが、映画では恋愛要素はひじょうに控えめになっていて、なくても本筋や青春ドラマとしての素晴らしさは損なわれないでしょう。ラブコメと言いつつ恋愛劇が二次的でちょっぴりになってしまうようなことも、日本のコミック&アニメの世界では普通の出来事です。上述したウォーター、スゥイング、書道、幕でも恋愛劇は不在です。あれらはコミックやアニメとは無縁の作品ですけど。本作では、太一の千早に寄せる思いが唯一の恋愛劇になっていて、太一を かるたにつなぎとめているのが千早への思いであったりします。それに気づいた奏さんが「応援してます」と頬を染めるわけですが、恋は実るどころか千早はそれに気づいている風さえありません。自分を かるたの世界に導いてくれた新に千早の心は奪われているのでしょうか。それが恋心なのか、かるたを通した熱い友情なのか、彼女自身さえ気づいていない感じです。なんだか可愛そうな太一ですが、思いの丈を原田先生に打ち明けたところ「青春全部かけたって敵わないって? かけてから言いなさい」という名文句が返ってきます。

 2部構成で上映された劇場版は、千早が かるた部を結成して東京地方大会を目指すまでが前編(上の句)、クィーンの存在を知り千早が暴走して行くくだりが下の句として描かれています。5月上旬はロングラン上映中の上の句と共に、上下両方が同時上映中です。この期間はおいしいです。
 大ヒット作品なので、これを読んでくださっている方の中にもすでに観られた方がおられるかもですが、観た方に聞きます。どこで一番泣きましたか? かるたの神様に見放されたことを自認する太一が、原田先生に打ち明け話をするところですか? 強化合宿で北央の主将に言わされた千早が、地区大会で雪辱を果たし、白目むいてぶっ倒れるシーンですか? 苦手な運命戦を征してチームを勝利に導いた太一に、千早が飛びつくシーンですか? あのスローモーションワークは強烈でした。
 筆者は意外にも、トーナメント戦で捨石にされた つくえ君が泣き出すところに泣き出しました。秀才の つくえ君はこれまで独りっきりで学園生活を送っていました。それが初めて他人から必要とされて仲間ができ、かるたの地区大会という大舞台に駆り出されるものの、初心者の彼は最初から負けを見越して敵校の主将クラスと当てられたりして一勝も上げられないんですね。自分はただの数合わせだった、こんな思いをするくらいならずっと独りでいた方がよかった、つくえ君はそう言って泣くのですが、そんな思いは仲間といたからこそできたわけじゃないですか。彼はなんとか思いとどまり、決勝戦に進み、仲間とか友情とか、そんなものを実感します。勝ち組人生とか腑抜けたことばかりぬかしている思い上がった社会では、学校教育でさえ教えてくれない大切なことを、ラブコメは熱く語るのです。
 下の句では、クィーンに挑むという思いで自分を見失ってしまった千早が、仲間のところへ戻ってくるシーンとか、かるたをやる意義を見失った新の思いが、再び仲間のもとへ返ってくるくだりが感動的でしたね。
 そしてクィーンは大したカンロクでした。いつも冷ややかな目線で、京言葉で淡々と話す彼女は、幼い頃からずっと独りで努力し、実績を積み上げてきました。高校生にしてすべてを悟り達観しています。団体戦などというお遊びを鼻で笑い、何者をも寄せ付けません。そんな彼女が唯一ライバルと認める新。彼もまたずっと独りで積み上げてきた人でしたが、彼には千早たちとの幼い日の思い出がありました。かるたはやめたと言いつつ、全国大会開催中の近江神宮に来てしまった彼は、瑞沢高校かるた部の善戦を見守り、それに釘付けになります。クィーン詩暢に対し、遠慮がちに仲間と共に戦う かるたについて語ります。
 そして全国大会で団体競技とは別に行なわれる個人戦で、詩暢は千早と当たります。クィーンの目にも留まらず音さえしない早業に「勝つ想像ができない」と愕然とする千早。それでも必死に食いついてゆく彼女の神経がどんどん研ぎ澄まされて行きます。原田先生に「千早ちゃんは かるたで最も大切なものを持っている」と言わしめた彼女の耳が、読み手の音になる前の音を捕らえ始めます。千早の手が、1枚2枚とクィーンに先行し始めた時、詩暢はあせるどころか目を輝かせるのでした。さすがクィーンと申しましょうか、それはもう怖いくらいに素晴らしい笑顔でした。彼女が千早を敵に値する存在と認めた瞬間ですね。

 とにかく見どころ満載、泣いて笑って感動満載の名作でした。語り出したらキリがないので、いい加減切り上げないといけないのですが、筆者が大いに心打たれた見どころシーンをもちょっとだけ語ります。
 元気いっぱい一直線の千早ちゃんですが、その熱血ぶりにはけっきょく誰も逆らえません。和文化ヲタクで、神聖なる小倉百人一首をウルトラ速押しクイズにしてしまう競技かるたなんて、と激怒した奏ちゃんを競技かるたのとりこにしたのも彼女ですし、誰とも相容れない つくえ君を「つくえ君じゃなきゃイヤだ」と言って机から引きはがしたのも彼女でした。チームを地区大会そして全国大会に導いたのも。卓越した聴能力で連勝を重ねた後は、脳内の糖分を使い果たし白目をむいてぶっ倒れます。「し、死んでる」誰もがびっくり仰天するわけですが、やがてピーピーケトルみたいな寝息を立て始めます。可愛いですね。
 強化合宿で体力作りのために山を登るご一行。体育会系とは無縁の つくえ君はもう限界です。それをみんなで引っ張って押して尾根まで到達すると、眼前に見事な富士が横たわっています。千年のむかし、歌人たちも同じ富士を見ていたんですね。感極まって涙を流す奏ちゃん。数々の映画に富士山は登場しますが、これまででみた最も美しい富士だと感じました。
 北央高校の佐藤主将は「佐藤のSはドSのS」と副長に言わせた冷血漢ですが、彼をやっつけるのが上の句のクライマックスです。ほんとにっくき敵です。でもそんな彼にどうして部員たちはついてゆくのか、北央が無敗の強豪として君臨し続けてきた背景には、主将と部員たちのどんな思いがあるのか、それが下の句で描かれます。彼を単なるにくたらしい敵として片付けず、こうしたところもきちんと描いているところが名作の要素でもありますね。  分梅神社の神主原田先生役の國村隼さんは、筆者が敬愛する俳優のひとりです。彼が出演するだけで作品がしまりますね。じつに素晴らしい役者さんです。
 新の故郷にしてロケ地にもなった福井県さかい市は、じつは筆者にとっては縁の地でして、田舎に帰らずとも関西で暮らしていてさえも頻繁に福井弁が口から出ます。そんな筆者が新や彼の祖父の福井弁を聞いてかなり赤面してしまいました。役者さんにとって福井弁はずいぶん難しいようですね。
 エンディングテーマ「FLASH」を歌うのは Perfume。筆者が気に入っているアーティストなので、エンディングロールに Perfume の名を見つけた時には、CD購入が決定しました。

 下の句が公開された初日、東京の某映画館の舞台あいさつに広瀬すずをはじめ主要な出演者が勢ぞろいし、続編製作決定のサプライズがあったそうです。
 かるたかよぅ、なんて最初はあまり興味がわかなかった「ちはやふる」ですが、今後も目が離せないですね。

2016年2部作公開、上111分、下102分。
原作コミック:末次由紀。
監督、脚本:小泉徳宏。
出演:広瀬すず、野村周平、真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、坂口涼太郎、松岡茉優、三村和敬、松田美由紀、國村隼、広瀬アリスほか。

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