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東京すみっこごはん【小説】

2016/02/09


 祖父と2人暮らしの女子高生 楓(かえで)は、学校ではいじめに遇い、口数の少ない苦虫顔の祖父とは上手くやってゆけず、夕暮れ時の町を途方に暮れて歩いていると、「すみっこごはん」という不思議な看板を掲げた古い一軒家を見つけます。ちょっと立ち止まっただけなのに、客と間違えられ中に招き入れられてしまいます。そこは、その日訪れた客がくじを引いて当番を決め、当番を引き当てた者が夕食を作り、みんなでそれをおいしくいただくという奇妙な食堂でした。
 すみっこごはんは、人生に迷ったわけありの人間ばかりを磁石のように吸い寄せてしまいます。お互いに顔と名前くらいしか知らない同士が、ここに集い、当番がお店にあるレシピの中から好きなものを選び、レシピに忠実に調理してみんなで食べます。ここにいる時だけは、みんな家族団らんのような温かい気持ちになり、ついまた訪れてしまいます。
 婚活に苦戦中の女子力の低いOL、妻子に逃げられパソコンでブログの女の子を追いかけている公務員、家族を養うためにタイから留学生として来日したものの目的を見失ってしまった少年、近所のおばさん、酒とばくちにどっぷりの口汚いおっさん、バンドマンの青年……。

 高校生の楓ちゃん、OLの奈央さん、留学生のジェップ君、公務員の丸山さん、それぞれの視線から見た すみっこごはんと、それぞれの秘められた人生が描かれる短編集仕立てになっています。一見するとみんなどこにでもいそうな普通の人間たちですが、それぞれのパートでそれぞれの内面が浮き彫りにされてゆくと、みんなそれぞれに苦悩があって、思うように行かない人生に戸惑いもがいています。でも、すみっこごはんでの出会いとレシピが、それぞれの苦悩を少しずつ氷解させて行きます。
 人間はひとりじゃないんだなぁ、ひとりになってはいけないなぁ、そう感じました。

 そして最後の章であきらかにされる、すみっこごはん設立秘話。公務員の丸山さんは、すみっこごはんがNPO法人として登記されていることを突き止め、誰がどんな目的で運営しているのかを突き止めようとします。すみっこごはんの心臓とも言える"レシピノート"に秘められた真実を知る時、読者の心は深い感動に打ち震えることでしょう。  つらいことや思い通りにならないことを抱えて悶々とする日々を送っている方、誰かと話しをすることができれば、道が開けるかも知れませんよ。家族や近隣に話し相手を見つけられなくても、ネットの世界に思わぬ出会いが待っているかもしれません。インターネットを通じた出会いには、危険がいっぱいであるとよく言われますが、そうばかりとは限りません。ネットで婚活して結ばれる例も最近では珍しくないそうですよ。かくいう筆者もネットで知り合った交友関係で教わったことや助けられたことがたくさんあります。

 人は、ひとりになってはいけません。人を、ひとりにしてはいけません。このお話しに登場する人たちは、みんな根はいい人ばかりで、すみっこごはんでの出会いによって暗澹とした生きざまに光明を得ることができます。のんだくれの柿本さえ、素晴らしい人間です。木々を照らす日の光のようにさわやかな読後感と共に、登場人物たちのことを思い返すと、温かい思いで心が満たされます。

2015年8月発行、光文社。
著者:成田名璃子。

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