kepopput.jpg

ソウォン/願い

2016/01/26


 ソウォン文具店の8歳になる少女ソウォンは、登校時に暴漢に襲われ重傷を負いますが、携帯を使って自力で警察に通報し、病院に搬送されます。一命を取り留めたものの生涯に渡って人工肛門をつけなければならない体になってしまいます。
 精神的なショックからソウォンは父親を遠ざけるようになり、父ドンフンは冷蔵庫のココモンのキグルミを着けて娘から距離を置いて接するようになります。また、ソウォンや家族の精神的なケアをするために車椅子に乗った心理療法士が家族に近づきますが、母ミヒは最初は彼女のことを嫌っていました。しかしながら心身に深い傷を負った娘に笑いを届けることができる心理療法士のカウンセリングを次第に必要とするようになります。
 容疑者が逮捕され、裁判が始まるとソウォンの証言がどうしても必要になります。心理療法士に付き添われて法廷を訪れたソウォンは、悪い大人に思い罰を与えなければならないという信念をもって証言台に立ちます。  病院や家にまで大挙して押しかけてくるマスコミ、娘の世話で仕事ができないこと、裁判、事件は家族を窮地に追いやってゆきます。世間の何もかもが敵に見えるなか、ドンフンの勤務先では寄付金集めが進み、ソウォンの同級生の母親は献身的にソウォンとミヒの面倒をみます。
 ソウォンはやがて退院し、学校に行く決意をします。自分が人とはちがう生涯を負ってしまったこと、事件が自分の名前と共にマスコミによって大々的に報じられたことが、ソウォンに重くのしかかりますが、クラスメイトたちは彼女を温かく迎え入れてくれました。

 この映画は、2008年に実際に起きたチョ・ドゥスン事件を題材に映画化したものですが、実際の事件では犯人は教会のトイレに少女を連れ込んで暴行を加えたうえ強姦し、証拠隠滅のために便器の器具で精子を吸い出したり、頭部を水で洗浄したりしたため、少女は内臓が壊死して校門を犠牲にしなければ死亡するという状況になり、かつ視力低下と鼻腔炎、内耳炎を引き起こしています。周到に証拠隠滅を行なうという判断力を持ちながら、裁判では当時泥酔状態であったとし無期懲役の求刑が酌量され懲役12年になっています。映画ではドンフンが「酒に酔った交通事故よりも軽いのか」と激昂するシーンがありますが、飲酒運転事故では酌量はありませんが、泥酔して少女を強姦して証拠隠滅するのは、判断力が低下していたので仕方ないということなのでしょう。
 ただ、人が死んでいない事件で懲役12年は軽くないという見方もあるようです。この映画の評を著したとある記述では、量刑の重い軽いよりも損害賠償が棄却されたことに問題があるとしています。

   こうした映画が作られる背景には、どういった意図があるのでしょう。我々が普段目にするニュースでは事件の表層的な部分しか見れません。可愛そうだなぁ、加害者はろくでもない奴だなぁ、と一時的な感慨を覚えるだけでしょう。映画は生々しい映像によって"他人事"を身近に感じさせる力があるのかも知れません。被害者やその家族に普通の暮らしが戻ることはありません。被害者は治ることのない障害を抱えたまま生きて行かねばなりませんし、家族はそんな被害者にどのように接してよいのか解らなくなることもあるでしょう。周囲の目も気になるでしょう。
 この映画で映像的に気になったのは、ソウォンの負った傷のリアルさです。顔に浮かんだ傷や白めの部分に浮かんだ血痕は、とてもメイクとは思えないほどのものでした。子役のイ・レにとってはまさに体当たりの演技だったでしょう。かねてより韓国映画は残酷描写と言う点では子供にも容赦がないと感じていましたが、ソウォンの傷の再現はひじょうに壮絶でした。そうまでして訴えるものが監督にはあったのかもしれませんね。

 映画はエンターテイメントです。こんな映画の感想で不謹慎かもしれませんが、希望がない作品はあまり見たくありません。もしこの映画に希望がなければ、ここで紹介させていただくことはなかったでしょう。タイトルのとおりソウォンとは願いという意味だそうで、主人公の少女にこの名前を与えたのは素晴らしかったと思います。事件がとりあえず決着したあと、ソウォンに弟が生まれます。その子の名前は母親ミヒが名づけたソマン、望みという名前です。
 また事件のその後の記事では、実際の被害者の少女は再度手術を受けて排泄ポケットが不要の体に戻れたのだそうです。
 映画の題材となった実際の被害者がどう感じておられるかは判りませんが、この映画に希望が存在したこと、絶望と壮絶な訴えに終始したどろどろとした作品にはならなかったことを、被害者も喜んでいたらなぁ、と思います。たとえそれが現実を美化しているものだとしても。

2013年、123分。日本公開は2014年。
監督:イ・ジュンイク、脚本:ジョ・ジュンフン、ソン・チャンヨン。
出演:ソル・ギョング、オム・ジウォン、キム・ヘスク、キム・サンホ、ラ・ミラン、イ・レ、ヤン・ジンソン、クォン・テウォン、チョ・ムニ、カン・シンチョル。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM