kepopput.jpg

王妃の帰還【小説】

2015/11/28


 聖鏡学園というお嬢様学校の中等部2年の範子は、クラスの中のカーストの最下位で、平凡で地味な女子同士でグループを作っている。彼女が密かに王妃と呼び憧れている滝沢さんは、カーストトップのグループを率いる美少女だ。ところがあるとき誰かの私物の紛失騒ぎで王妃が犯人と断定され、彼女はトップグループから追い出され、あろうことか範子たちのグループに押し付けられる。初めてまともに会話した王妃は傲慢で身勝手なわがまま娘で、範子たちのグループはすっかり手を焼く。王妃を元のグループに帰還させ、クラスの平和を取り戻す。範子たちはそう決意し、王妃の評判を上げるための作戦を展開する。

 学園内の1つのクラス内の出来事なのに、さながら冒険アクションのような目の離せない展開に驚嘆させられる逸作です。女子中の社会などあずかり知らぬ筆者でも、先輩の乗車する電車に向かって頭を下げる女学生たちの通学風景等を見るにつけ、彼女たちの間に上下関係や身分制度のようなものが存在するのを感じることがあります。物語はそんな少女たちだけの社会を如実に描いた人間ドラマなわけですが、中学生女子たちの大人顔負けの分別に驚愕するどころか畏怖さえ感じました。
 王妃は傲慢で他人を認めない利己的な人間ではありますが、お話しの中でそうした類型化の枠を破って情や分別を発揮し出します。彼女のみならずクラス内に存在する様々な人間模様が1つのキャラにとらわれることなくいろんな側面を披瀝して行きます。主人公の範子の人を見る目もどんどん変化して行きます。
 それは範子の成長といった感はなく、少女の中に内在する思慮深さとして筆者を驚愕させました。一介の平凡な中学生女子があたかも小説家のような観察力と客観的な価値判断を持っていることに、空恐ろしさを感じました。筆者の日常で遭遇する中学生や高校生の女子たちにも同様の思慮と分別があるのなら、彼女たちと接するには子ども扱いしちゃダメだな、そんなことを思いました。まぁ筆者の日常で中高生女子と言葉を交わす機会などないわけですけど。
 担任の男性教員ホッシーに王妃は憧れていて、そのホッシーはシングルマザーで雑誌の編集の仕事をしている範子の母と密かに付き合っています。そして範子の親友で同じグループのチヨジの父はシングルファーザーで範子の母とも交友があり、範子とチヨジは以前から2人をくっつけて自分たちが姉妹になる構想を抱いています。そのために"2人のロッテ"作戦を画策中です。母とホッシーの交際が王妃に知れたら、チヨジにばれたら……。範子の心労は絶えません。
 お話しはさらに複雑によじれ、生徒に陥れられたホッシーに生徒との交際疑惑が浮上し、彼は停職処分を食らいます。女の子が怖いと母に子供のように泣きつくのを盗み見た範子は、ホッシーに対して落胆を覚えますが、それと同時に彼がこれまでひじょうに上手くクラスをまとめており、彼の不在でクラスが崩壊の危機を迎えていることに気づきます。範子のその冷静な観察力が恐ろしいです。

 物語は怒涛の展開で息つく暇もなく終結を迎えます。エピローグに記された爽快なラストシーンは、この作品の読後感をいっそう感慨深いものにしています。"王妃の帰還"というひじょうにセンシブルなタイトルに秘められた意味について考えるとき、読者はきっと大きな感動に包まれることでしょう。

柚木麻子 著、2015年。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM