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マルティニークからの祈り

2015/10/31


 夫が借金の保証人になったばかりに夫婦で開いた自動車整備工場を手放し、貧困生活を余儀なくされることになったジョンヨンは、夫の友人が持ちかけてきた儲け話に乗り、ある荷物をフランスまで届けます。金の原石だと説明されていた荷物の中身は大量の麻薬で、彼女はオルリー空港で現行犯逮捕され、身柄を拘束されてしまいます。  夫の友人が捕まり、裁判でジョンヨンが運んだ荷物の中身を知らなかったことを証言するのですが、その報告書がフランス駐在の領事館のスタッフの怠慢で紛失してしまい、フランスの裁判所は韓国から書類が届かないのでジョンヨンの裁判が開けません。
 ジョンヨンは、フランス語も解らず、国選弁護士の説明も理解できません。領事館に通訳をつけてもらうことと報告書がどうなったかを問い合わせるのですが、まともに相手してもらえません。報告書は確かに届けたのだがフランスの裁判所がのん気で困るといった説明をするだけです。
 幼い娘ヘンリを抱え韓国で妻の帰還を待つジョンベも、彼女の無実を証明するために奮戦するのですが、韓国政府もまともに相手をしてくれません。
 韓国側の対応にしびれを切らしたフランスは、ジョンヨンをマルティニーク島の刑務所に送ることを決定、そこでは囚人たちの暴力と、囚人を人とも思わない刑務官が待ち受けていました。

 麻薬密輸容疑で2年以上もフランスに拘束された女性の実話を2006年にテレビ局がドキュメンタリーとして放送し、大きな話題を呼んだ番組の映画化です。日本では麻薬に関しては使用したものが主に処罰されているようですが、国際的には運び屋や売人が重罪として裁かれるケースが多く、前歴のある売人は、素人を騙して麻薬を運ばせ、何も知らずに運んだ人が厳罰に処せられるようなケースが少なくないようです。そのために障害を棒に振る人がいるとも聞きます。おそろしい話しです。
 幼いヘンリはいつまで経っても帰ってこない母の顔を次第に忘れて行きます。住む家もうしなったジョンベはヘンリを姉の家に預けて働きながら妻の無実を晴らすために奮戦し警察や役所を回る毎日を送っています。
 護送中にレズの女刑務官に強姦されそうになってジョンヨンが逃げ着いたところは、目を奪われるようなコバルトブルーの海と真っ白な海岸。カリブ海に浮かぶリゾート地であるマルティニーク島は、夫婦がお金を貯めて結婚10周年に旅行しようと話していた憧れの場所でした。
 万策尽きて疲れ果てたジョンベは、何もしてくれないばかりかジョンヨンを韓国の恥としてその釈放を阻害するような外務省の役人の前で、灯油を被ります。幸いにも火をつける前に取り押さえられて命は取り留めますが、居合わせたマスコミがその様子を報道し、真相究明のために動き出します。
 事件がネットに流れ、ジョンヨンの釈放を訴える多くの声がネット上にあふれます。
 マスコミが取材のためにマルティニーク島を訪れるのに同行したジョンベが見た妻は、仮釈放の名目で見知らぬ土地でホームレス同然の暮らしを強いられ、栄養失調で憔悴しきった妻の姿でした。

 情報化時代、マスコミやインターネットはその弊害がしばしば問題にされますが、情報ツールが正しく行使されるとき、それは市民の強い味方になります。税金を無駄食いして利権に執着するだけの政府の亡者たちは、力を持っていても自分の利益にならないことには動こうとしません。公益と私益が一致するときにだけ国や国民のために動く、それが国家権力というものです。そしてそれを正せるのが市民が持つポテンシャルなんですね。マスコミやネットはそれを効果的に引き出してくれるツールになり得ることを、多くの市民が理解し、権力にかしずくよりも市民が力を合せることの大切さを知れば、市民は弱くはかない存在ではなくなります。我々はネットにアクセスする手段を常に身近に携えていますし。
 以下はネタバレです。事件が報道され尻に火が点いた権力者たちは、その後テキパキと行動し、フランスでは有能な弁護士がジョンヨンを訪れ、公判が開かれます。判決の前に裁判官がジョンヨンに尋ねます。「何か言いたいことはありますか?」彼女は震える声でこう答えます。「私はお金に目がくらんで罪を犯しました。私は罪人です」あれだけひどい目に遇いながら、自分の非を認める彼女の態度に心打たれます。そして「私の犯した罪で、私の幼い娘は母親を失いました。彼女に母親を返してください」そう付け加えます。
 判決は、麻薬取締法違反により有罪、1年間の懲役というものでした。すでに2年以上拘束されている彼女は、ただちに釈放されるのみならず、超過して拘束された期間の慰謝料を請求できると弁護士が説明しますが、彼女は力なく首を振るだけでした。

 平凡な家族を襲った残酷な運命は、しかしながら家族の絆を強固なものにしたようです。他人の借金を背負って貧困にあえいでいた頃、夫婦の仲はかなり険悪なものになっていました。あのまま事件がなければ家族はもしかするとバラバラになっていたかもしれません。
 本編のあと、エンディングクレジットで、実在するジョンヨンはその後2番目の娘に恵まれ、幸せに暮らしていることが告げられます。
 仕事の怠慢からジョンヨンを地獄に落とした領事館の役人たちは、左遷されることになりました。彼らと一緒に彼女を韓国の恥とののしっていた外務省のお歴々も、自分の利権に不都合な人間は切り捨て、それで失態の責任をとったことになるってわけですね。おもろいやつらですね。

 私たち市民ひとりひとりは、ちっぽけで弱い存在ですが、みんなで力を合せれば世の中を動かすことができます。ひとりになったらあきまへん。ひとりにしたらあきまへん。私たちはネットワークを通じてつながっています。

2013年、131分。翌年日本公開。
監督:パク・ウンジン、脚本:ユン・ジノ。
出演:チョン・ドヨン、コ・ス、カン・ジウ、ペ・ソンウ、コリンヌ・マシエロ。

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