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幕が上がる その3【演劇】

2015/05/29


 映画に続いて舞台です。1ヶ月間で27公演ってすごいですね。ももクロも今やすっかり女優です。東京公演なのであきらめていましたが、千秋楽はライヴビューイングが全国の映画館で催されました。ライヴビューイングってご存じですよね。2通りあって、1つは歌舞伎やオペラを録画したものを映画館で上映するもの、もう1つはコンサート等のライヴ中継を映画館で上映するもの。今回のは後者の方です。東京で行なわれて千秋楽の舞台の生上映です。
 1つのシアターで3館を使っての上映という盛況ぶり。コンッセッションにもパンフレットを求める脚が長い列を作っています。ももクロファン中心の恥ずかしい状況を想像していましたが、中高年客も多数で、ちと残念いやビックリしました。ちなみに、本公演の方はももクロライヴの様相を呈し、カーテンコールではお兄さん方がペンラなどを振り回し、川中島の合戦みたいな勝鬨を上げておりましたが。いや、川中島は筆者もご覧してませんけどね。

 さて舞台の方は、吉岡先生が突如辞任してしまったあとの演劇部の葛藤を描いたサイドストーリーになっており、副担任が斉藤先生に決まった、なんていう件りは映画にはない原作の設定になっていました。演劇部が選んだ演目「銀河鉄道の夜」が映画よりもじっくり描かれていて、その練習の様子がメインになっています。
 18時のそろそろ開演時間だなって頃に「間もなく開演です、お席にお着きください」のアナウンスが流れ、唐突にグッチ先生が舞台に登場します。吉岡先生が辞めてしまったショックを隠しきれず、暴走ぎみの先生と、1年生の八木美咲と高田梨奈の掛け合い漫才が始まります。舞台ならではのとても愉快なコントです。「じゃ、先生帰るわ」とグッチ先生が無責任ぶりを発揮して退場すると、明美ちゃんたち2年生の登場です。演劇部の今後のことで職員室に呼び出されている3年生のことをアレコレ話しながら、とりあえず発声や稽古の準備をしています。
 えっ、もう始まってるの、って感じでストーリーはすでに進行中です。特別出演のグッチ先生の前座から本編まで切れ目がありません。舞台ってこんな感じですよね。慣れていない観客は長い前座が続いていると思ったかも。
 3年生登場のトップはガルルです。元気だ、映画に負けないくらい。めっちゃ走ってます。ガルルが本当に3年生かよってくらいにかっ飛ばしているので、次に登場するユッ子と中西さんがとても落ち着いて見えます。そして最後に登場する部長はたいへん威厳がありました。映画の時よりも髪が短くなってます? その分映画の時よりも大人に見えたかもです。原作では高橋部長は後輩たちに畏怖されているところがありましたが、舞台では映画よりもその感じが出ていた気がします。

 吉岡先生が辞任してしまったあと、高橋部長は責任を独りで抱え込んだ感があり、稽古でも演出家としてかなりスパルタです。しまいには他の3年生たちが彼女を制するほど。
 部長は、国語の授業で原作の思想的なことに気づき、それを表現したいがためにセリフをどんどん増やし、部員たちはついて行くのが必死です。そしてある時、中西さんは声が出なくなってしまいます。  じつは中西さんは中学生の頃、岩手に住んでいて震災に遭っていました。そこで学友たちを亡くし、なんで自分は生き残ったのだろうという、助かった若者たちを襲った極限状況の心理を経験していたのです。「銀河鉄道の夜」ではカンパネルラの死を受け止められないジョバンニの苦悩がひとつのテーマになっていますが、中西さんはお芝居と自分の体験を重ね合わせてしまったのかもしれない、「銀河鉄道の夜」の美しいストーリーを演じるのがつらい部員だっているのだ、高橋部長はそのことを思い知るのでした。  でも「銀河鉄道の夜」を最初に提案したのは、中西さんその人だったのです。

 中西さんが岩手出身で、中学生の頃に2011年の東日本大震災を経験しているという設定は、平田オリザの原作小説にも映画版にもありませんでした。そして本年2015年に高校3年生として藤ヶ丘高校に転向してきた中西さん、まさにリアルタイムのキャラです。「銀河鉄道の夜」のジョバンニが経験したカンパネルラの突然の死を、中西さんは4年前に経験していたわけです。で、「銀河鉄道の夜」の作者宮沢賢治が岩手出身です。2015年に映画及び舞台が公開されたことと相まって、これらの符合は偶然の一致なのでしょうか。
 平田オリザが原作小説「幕が上がる」を発表したのが震災の翌年。この舞台版には、彼が仕掛けた巧妙なトリックが仕組まれているような気がします。震災の最中に原作を執筆していた彼の頭の中には、2015年にこれを舞台でやるというシナリオができていたのかもしれませんね。その前に映画版が実現し、それを大ッヒットさせたのはまさに絶妙です。平田オリザの幕が上がるプロジェクトは最高の形で成功したのではないでしょうか。

 舞台は、映画のようには多彩なシーンを盛り込むことができません。稽古場である教室、3年生が部活禁止の隠れ蓑に使ったカラオケボックス、学校の屋上、そして「銀河鉄道の夜」の舞台、これだけのシーンにすべてを盛り込みます。お話し的にもひじょうに短期間のエピソードで、部員たちの葛藤や喜怒哀楽そしてフィナーレという構成です。その分映画よりも腰を据えて描けた部分もあったと思われます。映画では脇役に終始した明美ちゃんを除く2年生や1年生も、舞台ではとてもキャラが立っていました。
 また、セリフ渡しという高度な技巧を用いた練習シーンでは、部員全員が代わる代わる全てのキャラを演じてゆきます。ある役者のセリフ途中から他の役者が同じセリフを被せ、そのまま役者が入れ代わるという表現を次々に受け渡して行くのです。誰かが1ヶ所でつまずくだけで総崩れになってしまう、言わば荒技的な技巧ですが、これには観客はみんな度肝を抜かれたと思います。

 高校演劇というテーマを、演出担当主役で描いたところもユニークですね。原作が演出家ならではと思えるところですが、おかげで演劇についていろいろ勉強になりました。役者を断念して演出に専念することを決意した高橋部長の心境を、平田オリザも若いころに経験しているのかもです。

 舞台は「銀河鉄道の夜」のラストシーンで終演となりますが、カーテンコールがまた感動的でした。役者全員ひとりひとりの挨拶では、みんな泣いてましたね。西条美紀役の高城れにが、感無量で「 西条美紀役のガルルです」と挨拶し、自分の名前を忘れて泣き崩れる場面では、みんな泣き笑いました。ガルルとの掛け合いが絶妙だった高田梨奈役の伊藤沙莉と抱き合ってワーワー泣いてましたねぇ。
 映画、メイキング映画、そして舞台と見てきた観客は、この日の千秋楽に至るまでの道程をダイジェストで見てきたわけで、共感もひとしおだったことでしょう。筆者もそうです。
 じつは、筆者は伊藤沙莉という役者を映画版からずっと注目していました。主役のももクロに負けないくらい彼女のことが気になっていました。舞台版でも彼女が出演していたので、それだけでも胸いっぱいでした。しかもたいへん重要な役を演じていましたよ。素晴らしいムードメーカーでした。映画では出番が抑え目でしたから、この舞台を見て彼女のことを好きになった方も少なくないと思います。
 判ります? 伊藤沙莉さん。少年のようなハスキーボイスの彼女ですよ。

 舞台では映画版の音楽がそのまま使われていました。サントラCDを入手して毎晩寝る前に聞いている筆者にとってはこれも嬉しい演出でしたね。壮麗でしかも美しい楽曲です。

 映画版およびメイキング映画のDVD&BDは8月5日発売です。予約しました。伊藤沙莉大活躍の舞台版のDVD化もぜひお願いします。

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