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7番房の奇跡

2015/01/18


 国民参加の模擬裁判で、女性弁護士イェスンは、古い死刑囚の無実を晴らそうと法廷に立ちます。傍聴席には彼女の幼少の頃に大切な一時を過ごした人たちの顔ぶれが見えます。少女がまだ6歳だった頃、事件は起きました。少女の父ヨングは、知能障害を抱えながらも娘と仲良く暮らしていました。ヨングは娘が欲しがっていたセーラームーンのランドセルを背負った少女を見つけ、思わずその後を追ってしまいますが、雨の中に倒れて動かない少女を見つけます。ヨングは習った覚えのある蘇生術を試みようと、少女の衣服をゆるめ人工呼吸をするのですが、幼い命を救うことはできませんでした。ところがその行為が、少女をつけ回し押し倒して服を脱がせようとしたり暴行しようとしていたとの目撃証言に発展してしまい、彼は殺人罪で起訴されることになります。
 裁判を待つ間、収監された監房で、彼は囚人たちから幼女殺しの変質者と罵られ虐待されます。同署の課長は、過去に誘拐殺人で子供を失っており、ヨングをことさら憎んでいました。ところがヨングを観察するうちに、彼が子供を殺すような人間ではないと確信するようになり、彼の容疑を晴らそうと奔走します。また、同房の囚人たちも次第にヨングに親しみを覚え、彼の無罪を信じるようになり、みんなで一計を講じて彼の娘を監房に連れ込みます。  一方、愛娘を失った警視長官の怒りは収まらず、真犯人は彼ではないという課長の進言にも耳を貸さず、ヨングを死刑にしようとします。長官は自分の権限を悪用してヨングに近づき、娘を失いたくなければ裁判で罪を認めろと脅迫します。
 ヨングは、苦しんだあげく、裁判でこれまでの態度を一変させ、自分が殺したと自供します。彼の自白により死刑が確定してしまいます。

 知能障害の父と6歳になるその娘は、とても仲のよい親子でした。しっかりものの娘が父を気遣い、娘と一緒にアニメの歌を歌う父は、親子というより親友同士でした。それでも父は、父親らしく娘が欲しがっていたセーラームーンのランドセルを買うために貯めたお金を握って店を訪れますが、それは売り切れたあとでした。そして偶然にも目当てのランドセルを背負った女の子を見つけ、思わず後を追ってしまったことから悲劇が始まります。
 殺人容疑、服役、突然引き離されることになった父と娘。過去に自分の子を誘拐殺人で失った課長は、幼女殺しの変質者が許せません。自分の手で殺してやりたいとさえ思っているその囚人を見ているうちに、彼の思いは徐々に変わって行きます。彼は人を殺すような人間だろうか。一方彼と同房の囚人たちも彼の優しさ実直さに触れ、だんだん彼のことが好きになって行きます。
 様々な犯罪に手を染めた囚人たちは、その悪知恵を生かして彼の娘を監房の中に連れ込んでしまいます。しかし父娘が共に過ごせる時間は長くありませんでした。怒り狂う権力者の陰謀で、彼は陥れられ死刑が確定します。
 このまま逝かせてたまるか、囚人たちは仲のいい親子に感化され、いい人たちに変貌して行きます。2人を塀の外へ脱出させるために、彼らは再び知恵をしぼります。

 時が過ぎ、被害者の親が警察局の権威だったということで大した取り調べもされずに刑が確定してしまった少女殺人事件の死刑囚の汚名を晴らすべく、模擬裁判が実施されました。弁護士は知的障害を抱えた父を持つイェスン、すなわち死刑囚ヨングの娘です。養父として彼女を育てた当時の課長も真剣に裁判を見守ります。傍聴席には今は出所したかつての7番房の囚人だった面々もそろっています。
 事件当時、雨の中で足を滑らせた被害者の少女が、不幸にも転倒して頭部を損傷して即死し、そこへ駆けつけた容疑者のヨングが彼女を救おうとした行為が、第三者によって、少女を押し倒していたずらしたあげく殺害したというふうに見られてしまったという事実が、弁護士によって語られます。容疑者の知的障害をいいことに、警察はろくに調査もせずに彼を一方的に犯人と決めつけ、被害者の警視長官の思惑どおりに死刑が確定した。もしも入念に調査され少女の死因がきちんと特定されていれば、幼い少女の命を奪ったものが悲しい事故であったことが判明し、容疑者の有罪が認められることもなかった。模擬裁判は、弁護士の主張を全面的に受け入れ、容疑者の無罪を言い渡します。
 法廷を後にし、空を見上げて「父さん、私はあなたを許します」そう言ったイェスンの表情は、涙に濡れながらも晴れやかでした。

 権力によって人の運命が不当にゆがめられてしまうことへの義憤を描いた作品はたくさんありますが、この映画では、親友同士のように仲のよい父娘が、心ない権力者によって悲しい運命に突き落とされます。知的障害のある父は、自分の思いを周りに上手く説明することもできず、最初は周りをいらだたせますが、彼の誠意は少しずつ周りの人間を変えて行きます。囚人たちの間に人間の絆が生まれ、かたくなだった課長の心をも溶かしてしまいます。凶悪犯によって子供を殺され、気力もなく囚人たちの監視を続けるだけだった課長の正義心が蘇り、彼は事件の真相を明らかにするために立ち上がります。もっとも憎むべき子供殺しの罪を晴らそうと言うのです。これまで身勝手に自分本意の生き方を続けてきた罪人たちも、力を合せて奇跡を起こそうとします。
 とても悲しいお話しですが、父と娘、そして囚人たちの演技がとてもコミカルで笑えます。みんな純粋で子供染みていて一生懸命で、そのひとつひとつがおかしくて、とってもおかしくて……涙が止まりません。
 笑いと涙といえば、サイレント時代の喜劇王チャプリンの十八番ですが、その表現は21世紀の現在でも人々の心をしっかりと捉えます。世の中がどんどん変わってゆき、人々の暮らしも心さえも変わってしまっても、変わってはいけないものがある、ふとそんなことを思いました。映画も"笑いと涙"の思想をずっと持ち続けてほしいと思います。  劇中に流れる美少女戦士セーラームーンの主題歌「ムーンライト伝説」の韓国版が、オタクな筆者にはとても印象的でした。

2013年公開、127分。日本公開は2014年。
監督、脚本:イ・ファンギョン。
出演:リュ・スンリョン、パク・シネ、カル・ソウオン、チョン・ジニョン、オ・ダルス、パク・ウオンサン、キム・ジョンテ、チョン・マンシク、キム・ギチョンほか。

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