kepopput.jpg

テロ,ライブ

2015/01/17


 とあるラジオ番組のオンエア中に、爆破予告が届きます。番組を担当していたアナウンサー ユン・ヨンファは最初それをたちの悪い冗談だと思って取り合いませんでしたが、予告どおりに橋が爆破され、ヨンファは爆破テロの独占実況の機会を得て、不祥事で降板させられたテレビのニュースに返り咲きます。麻浦大橋では爆破によって寸断された道路が、バランスを失って今にも崩落しそうです。かつて大橋建造に携わった労働者が何人もそこで命を落としたにも関わらず、国はろくな保証もしなかったとし、テロリストは巨額の金と大統領の直接謝罪を要求します。
 犯人との会話の中継と、連続して起こる爆破、ニュースの視聴率は急上昇して行きます。犯人が爆破を中止し、救助隊が現場に接近しなければ、橋に取り残された人々の命はありません。しかし韓国政府はテロの要求には屈しない構えです。
 独自の情報網を使って犯人の特定に成功した警察は、テロ中継に犯人の意識を集中させておいて機動部隊に急襲させようとします。警視長官が番組に出演し、強気の姿勢で犯人を罵倒しますが、イヤホンに仕組まれていた爆弾で爆死してしまいます。そしてヨンファのイヤホンにも爆弾が仕掛けられており、席を立つと起爆する仕組みであることが、犯人から彼だけに告げられます。警視長官の番組中での死亡という非常事態でも、彼は席を立てず番組を続けなければなりません。しかもそれを周りの人間に告げることもできません。
 犯人はなぜ彼を選んだのか。その背景には麻浦大橋建設で命を落とした、とある労働者の思いが秘められていました。ヨンファはかつていつわりない真実を語る正義のキャスターでした。それが今や大勢の人名を危険にさらしているテロを出世に利用しようとしているのです。  大橋に取り残された人の中には、彼の同僚の女性アナウンサーも含まれます。犯人が爆破を中止しなければ、彼女の命も風前の灯火です。そこへ大統領が自らがヨンファのいるテレビ局に向かっているという情報が届きます。犯人の要求である大統領の謝罪は叶うのでしょうか。

 テレビニュースのライヴ中継さながらの映像に大橋爆破の様子が映し出されるのが、とてもリアルで臨場感があります。取り残された人々の様子が、望遠カメラで狙った映像で中継されるのも生々しく、すぐそこで実際に起きている事件を見ているような気持ちになります。これまでにも震災やビル火災といった災害を扱ったパニック映画はいろいろありましたが、この作品は危険からの脱出劇ではなく、テレビニュースの現場と、生中継される犯人とのやりとりをリアルタイムに描くことによって息詰まる緊張感を産み出しています。
 なんとか犯人の裏をかいて事件を解決したい警察とテレビ局、そしてテレビ局には犯人との会話を独占中継することで視聴率を獲得するという思惑も混じります。
 番組に出演した警視長官が爆死し、しかも真犯人と目した人物は見当違い、国と警察の汚名をさらし続けることに不安を覚えたテレビ局の責任者は番組の打ち切りを決断しますが、ヨンファは番組を続けなければ自分の命がありません。大統領は謝罪という簡単なことさえ拒み、また新たに犠牲者を増やすことになる、犯人の言動にヨンファは、もう少し時間をくれ、大統領がこちらへ向かっているという情報が入ったと伝えます。国家権力の威信を守るためテロには屈しないという姿勢を崩して、大統領は公の前に姿を現すのでしょうか。

 刻々と迫る刻限の中で、様々な人間のいろんな思惑が錯綜し、事件はますます混迷を極めて行きます。そうした中で、人々の人間性というものも露呈して行きます。人は他人や自らの命の危険の中でも、名誉や出世や国の威信というものを貫くことができるのでしょうか。過酷な労働現場で命を落として行った労働者たちと同じ現場で、命の危険にさらされている人たち。社会的な正義だけで犯人を悪と断じることができるのでしょうか。
 爆破テロ犯との独占中継に、千載一遇の好機と食いついたヨンファでしたが、犯人とのやりとりの内に、自分がかつて真実を語るプライドを持っていたことを思い出します。橋建設の犠牲になった労働者たちの無念を晴らすという情熱を抱く犯人に対し、国やテレビ業界は非情で打算的で、欺瞞に満ちあふれています。

 人や社会が守るべき正義とは何でしょう。人や社会が執着する名誉や威信とは何でしょう。その前に人は人間であるべきではないのか、リアルタイムに進行する凶悪な爆破テロの壮絶な映像の背景に、観客は人間の裸の心を目の当たりにします。そして多くの人々を擁する社会とはなんなのかについて考えさせられます。
 これは迫力のパニック映画という外観を装ったとても熱い人間ドラマです。この感動的な名作をぜひ大勢の人々に観てもらいたいと思うのですが、日本ではロードショー公開は小劇場限定で、大劇場上映作品のようなコマーシャルもされませんでした。
 ひと頃、筆者は大劇場にばかり足を運んで、小さな劇場とは疎遠になっていたことがありましたが、韓流映画の秀作に出会ってからまた小劇場にも足を運ぶようになり、韓国映画はもとより、邦画や洋画の名作にも巡りあるようになりました。映画ってほんとうにいいですね。最近、映画館の椅子に体を静めている時、あるいは自宅でモニターに見入っている時、大きな幸せを感じます。

2013年公開、98分。日本公開は2014年。
監督、脚本:キム・ビョンウ。
出演:ハ・ジョンウ、イ・ギョンヨン、チョン・ヘジン、イ・デビッド、キム・ホンパほか。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< October 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM