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VANGUARD【映画】

2015/01/16


 かつてテレビ東京の優れた洋画を厳選するレーベル「TX-V」シリーズとしても紹介された、近未来SF作品です。西暦2015年、世界大戦によって資源が枯渇した地球で、人類は滅びに瀕しています。そのなかで絶大な権力を持つ企業が世界を軍事的に支配しており、人々はエリート、民間人、バイオシンといったカテゴリーに分けられていました。その中で主人公のマックスは、いずれのグループにも属さず、孤独な戦いを続けていました。
 バイオシンは、底を突きつつある資源を守るために進められた人口減少計画の弊害で誕生したゾンビまがいです。青白い顔をして狂ったように人を襲います。マックスは人知れず森にひそみ、時おり襲来するバイオシンを手斧や槍でしとめています。そこへ企業が差し向けた軍隊が迫り、マックスの逃避行が始まります。兵士たちと同行した女科学者によると、マックスの血が人類の未来に希望をもたらすかもしれないということでした。
 筆者はレンタルDVD屋さんの注目作品の紹介文と近未来SFアクションの決定版というキャッチフレーズ、すばらしくカッコイイDVDのジャケットの絵に大きな期待を抱いてこれを手に取りました。

 DVDのジャケットの、細身の剣を両手に携えてがれきの山を歩くヒーローの姿はひじょうにカッコイイのですが、そのお方は残念ながら映画本編には登場しないイメージ画像で、主人公のマックス君は、あまりパッとしない野生児です。剣も持っておらず、主な武器は手斧です。近未来(といっても2015年現在その年に現実世界が追い付いてしまいました)の雰囲気はどこにもなく、舞台は森です。まぁ、森なんて時代が進んでもあまり変わらないものなのでしょうが。
 資源が枯渇した地球では、熱資源も食糧資源も不足し、バイオシンばかりどんどん増えて人類は絶滅寸前です。バイオシンは人を見ると襲い、噛みついて感染させます。感染するとバイオシンになって今度は襲う側になります。ゾンビといっしょです。人類は絶滅寸前なのにマックス君の住んでいる森には、バイオシンがたくさんいます。木々も青々と茂っていて、野生動物たちも元気にしています。
 そこへ、軍の輸送車に乗った兵士たちが現れ、マックス狩りを始めるわけです。そっとしておいてくれればいいのに。木こりのマックス君は屈強な傭兵たちを相手に善戦し、しぶとく生き延びます。上空にヘリが現れます。増援部隊でしょうか。マックス君ピンチです……。

 筆者は50年近くになる映画鑑賞歴の中で、そりゃいろいろ観てまいりましたが、これをしのぐ映画はありませんね。ほんとすごいです。舞台は森、森の中のそう広くないエリアです。機動兵器といえば、傭兵たちを運んできた輸送車1台。上空に出現したヘリコプターは演習か移動中の軍用ヘリを適当に撮影したもので、一瞬飛んでいる姿を見せただけですぐに見えなくなります。あとは、銃器を携えたそれらしい格好のお兄さんたちとマックス君がサバイバルゲームをやっているわけですが、戦闘シーンがまったくもって緊張感がなく、女子ーズの方が百倍頑張ってました。そんなんだとバイオシンに噛まれちまうよ、いやほんと、って言ってるシリから噛まれてるし。いったいなにやってんだか、マックス君なんか独りで手斧でバイオシンの群れを相手してきたんだぜ。頼むよほんと。  なにせ見たのがかなりむかしだったので、断片的な記憶しかございませんが、とにかくあまりの不出来さに観ているこっちが恥ずかしくて赤面してしまいました。出演した役者さんたちにとっても俳優人生の汚点になったことでしょう。
 なんか無駄な時間が過ぎて行って、いよいよラストです。ネタばれです。どういう経緯かは忘れちまいましたが、マックス君は大勢のバイオシンに追い詰められ取り囲まれてしまいます。終わりました。この作品に土壇場の大逆転なんて期待できまへん。じゃが、ここで大逆転です。マックス君を追いつめたバイオシンたち、急に彼を神とあがめ、輪の中心に立つマックス君、天に向かって叫びます。「僕ちん負けない、なぜなら僕は、バンガードなのだから!!」
 あー恥ずかし。書いてるだけで顔から火が出ました。そうか、バンガードだったのかぁ。って、バンガードってなに? と突っ込もうとしたら、映画はとっととエンドロールを流し始めます。いや、ちょっと待て、いくらなんでもこれで終わりはないやろ。いったい何だったのでしょうか、この90分間。

 この映画は、多くのB級映画ファンを巻き込んで、たいへん有名になりました。さすがテレビ東京、すごい作品を紹介してくれました。番組「TX-V」を観てませんが、出演した女子アナが大絶賛してたそうです。その女子アナがこの作品を自分で観て絶賛したのだとしたら、バンガードもびっくりの勇気です。観もしないでスタッフに言われた通りに絶賛したのだとしたら、それは業界のイジメです。彼女を陥れるための陰謀です。この映画を実際に観て素晴らしいと言えるのは、この映画を作った監督本人くらいでしょう。
 これを借りたことは被害としか言いようがなく、これを注目作品としてピックアップしていたレンタルDVD店を訴えたいくらいでしたが、映画をレンタルで済ませようなんていうセコい考え方の自分が、えらそうなこと言えた義理ではないので泣き寝入りすることにしました。
 でも、後々にこの作品のクソぶり、日本向けDVDジャケットのだましっぷりが話題になり、有名作品になったことで、作品は大嫌いなのに観たことがなんだか嬉しくなるという奇妙な衝動にとらわれました。こんなクソ映画を特選名画としてレーベルに加え、テレビで紹介した「TX-V」の信じられないようなアクロバットも含め、こんなことが現実に起こるんだ、みたいな感動というか呆れてものが言いたくなるというか、世の中信じられないようなことが現実に起こるという事例に立ち会えた喜びみたいな感情にとらわれ、それが楽しくなり、今では、おれ、バンガードみたぜ、しかもノコノコ騙された第1波で。なんて言い回りたいような次第です。
 多くの人々を激怒させ、金返せと言わしめ、そのことで有名になるなんて、なかなかできる事ではございません。そうした酷評を読んで、それほどのクソ映画ってどれほどのクソなのか気になって眠れなくなり、判っているのにレンタル屋に騙されに行った人も少なくないのではないでしょうか。そしてそんな連鎖で、興行成績が伸び、製作サイドは思わぬ収益をものにした、そんなことが起きたかもしれません。
 このクソ映画大ヒット現象を、バイオシン現象と呼びたいと思います。これを読んでいただいた読者も、刺激の少ない日常に一興を投じるために、ひとつヒドい目に会ってみようなんて思い立ったとしたら、それはもう感染です、バイオシンです。
 パーティかなにかの敗者の罰ゲームで、このDVDを自腹で購入し、次の休日に家にこもって3回観るなんてのはどうでしょう。それを食らった人はきっと、天に向かってこう叫ぶでしょう「金返せぇ、時間をかえせーーーっ」これであなたも立派なバイオシンです。  世の中に数々のクソ映画あれど、それらはたいてい観た人がハズレを引いたと泣き寝入りして終わるだけですが、DVDジャケットを詐欺で訴えたいとか、レンタル屋の告知が許せないとか、「TX-V」の女子アナすげぇとか、あれこれ騒動になったことは、なかなか真似できない快挙だと思います。
 悪運の強さで、すごい映画と言わねばなりません。
原題:The Vanguard
2008年イギリス、89分。2009年DVD発売。
監督、脚本:マシュー・ホープ
出演:レイ・ブロック・Jr、 エマ・チョイ、 ジャック・ベイリー、 シヴァ・グレウォル、 スティーヴ・ウェストンほか。

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