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黒い家

2014/12/17

 筆者は、K-POPのみならず韓国映画もよく観ます。好みはサスペンスやホラーです。他のジャンルのものももちろん観ますが、韓流サスペンスあるいはホラーは描写に容赦がないところが素晴らしいです。残酷描写がひじょうに生々しく強烈で、女優も子役も体当たりでそれに臨みます。スプラッター(血しぶき)好きにはたまりません。日常が健全過ぎて、たまにはダークな気分になりたいって時には、韓流の殺戮ものがお勧めです。
 でも単なる悪趣味な血肉大放出ものてだけではいただけません。名作SAWシリーズのような技巧や思想がなければ。韓流映画はちゃんと"中身"も伴っていて、けっして3流C級映画のような残念なことにはなっていないので、お楽しみいただけると思います。
 日本の同名小説「黒い家」は、この映画の原作ですが、韓国の映画やドラマには日本の小説やコミックが原作になっているものがひじょうに多く、その多くが名作と呼ばれヒットしています。本作もその好例です。また、原作小説は日本ホラー小説大賞を受賞しており、超常現象もお化けも出ないのに底冷えのする恐怖があると好評でした。筆者は小説も読みましたが、それほど怖いとは思いませんでした。まぁ、たいていのオカルト映画にビビらされることもなく、たくさんの人形が並んだ自室で独りで怖いビデオを観て喜んでいるような人間ですから、筆者の感想を真に受けて小説を読むと、ちびるかも知れませんのでご注意を。筆者が市松人形やビスクドールの並んだ呪いの館みたいな部屋に暮らしているのを想像した人は残念でした。そうしたシチュエーションはひじょうに魅力的ではありますが、さすがに家族が恐れおののきますので、アニメのキャラのフィギュアやドールが並んでいる、さながらアニメショップのような状況を想像してください。
 この作品は、ストーリーとシチュエーションがひじょうに優れており、小説にしろ映画にせよ、ぐいぐい惹きこまれて行きます。何度観ても感心させられます。
 生命保険会社の調査役の主人公が、被保険者宅に呼ばれて"黒い家"を訪れるわけですが、そこで子供が首つり自殺しているのを目撃してしまいます。翌日、息子に保険をかけていた父親が保険金を受け取りに会社にやって来ますが、保険金殺人の疑惑が浮上し、保険会社は支払いを保留します。その父親は過去にも自分の手の指を失って保険を受け取っている経緯があるほか、妻にも保険をかけています。主人公の調査員は、次にその妻が狙われると懸念し、彼女にこっそりと注意を促すのですが、それ以降、今度は自分が脅されるようになります。彼の周りで事件の関係者が次々と死に、家が荒らされ、恋人が拉致されます。
 真犯人の意外性も見どころにひとつです。犯人はいわゆるサイコパスで、ひじょうに高い知性を持ちながらも人の情が欠落していて、他人の苦痛にも自分の死にさえも関心がなく、利益のために人を殺すことに躊躇がありません。淡々と人を殺害し、あるいは同胞に殺人を強要し、まったく感情の起伏がありません。怖いですね。
 恋人を拉致された主人公は、単身で"黒い家"に乗り込みますが、深所には生々しい猟奇殺人の現場が展開します。悪趣味な方の大好物ですね。血のりと肉片と悪臭の中で、怪物と化した犯人との対決が始まります。果たして、主人公は恋人を無事に救出することができるのでしょうか、と白々しく言ったところで、助けられるに決まってると誰もが思うでしょうが、まぁそうなのですが(ああ、ネタばれ書いちまった)単なるハッピーエンドで終わってくれません。危機一髪で犯人から逃れ、炎上した黒い家から脱出した主人公が、駆け付けた警察官に「まだ中に人がいる」と叫びます。幼少の頃、弟の自殺という悲劇を経験している主人公は、たとえ殺人鬼の命でも見捨てようとはしないのです。
 お話しはまだ続きます。終わらないということは、焼け落ちた黒い家と運命を共にした殺人鬼は、果たして真犯人だったのだろうか、主人公は平和な日常に戻れるのだろうかといった不安が脳裏をよぎります。警察の、主人公の、そして観客の目をも欺いて犯人が復活したらどうします? 熾烈な戦いを潜り抜け負傷した主人公の元へ、犯人が包丁なんか持って再来したらどうします? その包丁が主人公の腹に突き刺さったりしたら……。まさか、そんな、という驚愕にはお答えしまへん。真相は映画本編をご覧ください。
 主人公の運命はいかに、それでもハッピーエンドを期待したいあなたに、こう言っておきましょう、韓国映画に容赦はありません。
 犯人は、情が欠落しており他人の命も自分の命にさえも関心がありません。対する主人公は、子供の頃に弟を自殺から守れなかったという無念を抱えており、たとえ殺人鬼であっても人が死ぬのは見たくないと思っています。人の命に対して対極的とも言える情感を有する両者の一騎打ちが見事です。
 そして、事件が本当に解決したあとさらに、後日談があります。人によってはこの後日談は必要なのか、という疑問を抱くかもしれませんが、筆者としては、これによって作品のテーマ性がひじょうに強くなったと好感を持っております。人の痛みが判らない情の欠落した人格ってどんなものなのでしょう。それを産み出す現代社会とは……。後日談では本編とは無関係の人間の一瞬の日常が描かれるのですが、明るい日の下に浮かび上がる平和な日常の闇にひそむ恐怖に、ぞっとさせられました。怖い映画にびびったことがない筆者が、ちびりそうになりました。
 また、韓国の社会でも深刻化している不況が、保険金殺人というシチュエーションをひじょうにリアルなものにしています。指を失って障害者になったら保険金が入る、子供が自殺したら保険金が入る、では家族に掛けた保険金を増額しようか、そんな狂気の世界が現実社会と地続きなんですね。
 いかがです? 筆者のつたない説明だけでも、この映画が単なる脅かし血しぶき映画ではないってことがお解りいただけたでしょ? いただけたら、レンタルビデオ屋さんに走るなり、ア○ゾンの買い物確定ボタンをクリックするなりしましょう。後悔はさせまへん。いただけなかったら……しくしくしくしく。

2007年公開104分。日本公開は翌年、R15指定。
東京国際映画祭の特別招待作品。
監督:シン・テラ、脚本:イ・ヨンゾン。
出演:ファン・ジョンミン、ユ・ソン、キム・ソヒョン、キム・ジョンソク、チョン・インギほか。
原作小説:貴志祐介。1999年に日本でも映画化。

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