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萌燃娘 in K-POP

 K-POPのブログを書くことにしました。コリアン・ポップスすなわちK-POPは音楽ジャンルにおいて、今や世界を席巻するまでのブームに至りましたが、その魅力は、多人数アイドルグループによる歌とダンスの融合した、見せる音楽にあると思われます。K-POPに精通している人にとっては、ダンスグループだけでなく、ソロのバラードやOST(映画やテレビドラマの挿入歌)にも素晴らしいものがたくさんあるとおっしゃるでしょう。確かにそのとおりでして、韓国ではもともとバラードや種々の楽曲に長い歴史があり、現代音楽にもその流れを受け継いだものが数多く存在します。しかしながらK-POPを最も特徴づけるものは、高度なダンスで観客を魅了するダンスグループであると言えるでしょう。ちなみにK-POPにおける歌とダンスは、80年代アメリカのダンスミュージックのような、いわゆるディスコサウンズだけではなく、静かな曲調のものでも踊ってしまいます、踊ってしまうのです。
 K-POPの猛威はほんとうにすごいです。韓国の歌番組は世界100ヶ国あまりで放送され、地球の裏側にもたくさんのファンがいます。日本のアニメやメイドさんや初音ミクが世界に名声を轟かせちまっているように、コリアンミュージックは地球上のあらゆる場所に鳴り響いているのであります。
 ……今やサルでも知っている地球の常識について、原稿用紙1.5枚にわたって弄してしまったわけですが、わけてもすごいのは、筆者のようなアイドルとは疎遠だった人間まで、コリア熱に侵されてしまい、もともとメイドさんのためのブログがこうしてK-POP娘のそれに浸食されちまったということです、難儀なことに。
 などと私的な愚痴を語られても困るとおっしゃるなかれ、これは筆者の筆者による極めて私的な見解を弄ぶための場所に他ならないからです。萌萌娘ほか筆者のブログを誤って開いてしまった経験をお持ちの方ならご承知でしょうが、筆者のブログには、絵や写真やギャグやユーモアといったキラキラ要素は存在しません。萌萌虫はその性格上写真豊富ですけど。まじめで退屈な文字表現が延々と続く、読み手にとってはひたすら忍耐を強いられる、地獄のような、眠れない夜に古い教科書をひも解くような、たらふく食って柔らかい布団の中でお経を聞かされているような、夜勤明けの朝のような、ピリン系の感冒薬を誤ってひとびん飲んぢまったような、午後からの古文の授業のような……、とにかく読み手をヤな感じの眠りに誘う使命を帯びた悪書ではあるのです。
 ただ、世の中には酔狂な人がけっこう存在し、退が屈をはいたような駄文を、ならば挑んでやろうとおっしゃるようなケースも"なくはない"と筆者も人生経験から承知しておりますゆえ、なれば読破してみるがよろしかろうとて、読まれる前に書いてるこっちが寝てまうわってな文章を長々と続けてやらんと意気込んでいるようなわけです。もはや酔狂と石頭の泥仕合、読み手と書き手の耐久レースみたいな展開が予想されるわけですが、健康に自信のない方は、この陰湿な心理戦に参戦しないことをお勧めします。ギャグとおふざけに満ち足りた世界にうんざりし、シリアス地獄を極めてみたくなった方のために、筆を進めてゆきたいと存じます。
 そも、筆者が今さらながらK-POP娘に熱を上げることになったのはなにゆえなのかと言えば、若い人たちに混じって汚いジジィがメイドさんのお店にお帰りするのが、気が引けるようになったんじゃねぇのか、なんて疑う方もいらっしゃるかもですが、キッパリ言ってその通りです。筆者ごときがメイドカフェの一角にテーブルを占め、そこだけイヤな感じに暗くなっているよりも、テレビ放送やデーブイデーのKARAや少女時代のおみ足にこっそりムフフんでいる方が、世間に危害が及ばなくて良いですし。でも単にムフフんでいるだけで自室を暗くしているだけでは、あまりにも敗北感が大きいので、こうしてブログでも書いて、せめて読んでくれる人にくらいは危害を及ぼしてやろうと言うわけです。  ま、そんなわけで、ここまで睡魔に打ち勝つことに成功し、さらなる苦行に挑んでやろうという勇者は、きもいジジィが孫娘のようなアイドルの歌声に感涙している凄惨な現場をのぞいてみるがいい。クリックひとつでキモヲタの深淵へあなたをお連れいたしまする。

萌えとメイドさん

 大阪の日本橋(ポンバシ)に、メイドさんのお店が軒を連ねるようになったのは2004年だそうです。東京の秋葉原はさらに3年以上先んじてメイド文化が芽生えていたそうです。メイドさんと言えばオタク、でもメイドさん以前からアキバやポンバシは、オタクの街だったし、萌え文化も存在しました。
 “萌え(もえ)”とは、いわゆる美少女キャラを愛でる際の絶叫語で、少女のしぐさとか声とか、あるいは服装とかが、心の琴線に触れた時に「萌え〜!」とか叫ぶわけですね。で、対象がアニメやゲームの世界のバーチャルキャラクターなわけだから、世間一般的にはキモくてコワいシチュエーションだったわけ。
 かつて男子オタクたちは、現実世界の女子とはあまり接点がありませんでした。美少女アニメやゲーム、美少女フィギュア(人形模型)といった萌えアイテムは、女性には解ってもらえない男の趣味だと考えられて来ました。そこへ、萌えを解する生身の女性が突如として降って湧いた、それがメイドさんだったんですね。オタクどもを「ご主人様」と呼び、買ったばかりの美少女フィギュアを「きゃーっ、見せてくださいよ! いいですよね、これ。わたしも大好きなんですよ」なんて言ってくれるメイドさんを、オタクたちが歓迎しないわけがない。
 メイドさんの降臨を歓迎したのは、じつは男子ばかりではありませんで、女性のオタクにとっても、自らの趣味を開花させるためのひとつのきっかけとなりました。思えば、女子オタクの方がカミングアウトには苦慮していたのかもしれませんね。
 メイドさんのお店の基本コンセプトは、萌えと癒しの提供であると言われています。その点では、オタ談義の拠点というオタクのニーズとは少しギャップがあります。メイドの源流をビクトリア朝時代の英国に求め、正統派メイドを追求するお店もあれば、もっと女の子を楽しむことを売りにしたポップなお店もあります。アニメや漫画嗜好を前面に打ち出したお店もあれば、清楚で品格のある癒しの空間を追求したお店もあります。基本的には、オタクでない一般の人たちが、年齢性別を問わず普通に利用できる飲食店であり、リフレクソロジーのお店なのです。
 かつてオタク街(世間一般には電気街)には、飲食店がひじょうに少なかった。休憩や腹ごしらえやトイレにもたいへん不自由な思いをしたものです。それが今では、趣向を凝らしたさまざまな飲食店がワラワラと軒を連ね、お腹ばかりか体と心まで健やかにしてくれるリフレクソロジーのお店まで、そこかしこに林立するわけですよ。ウェイトレスはメイドの格好をしてますけどね。
 メイドさんの分析もいいんですけど、気になるのは、メイドさん以前と以降で日本橋はどう変わったのか、オタク文化と人々はどう変貌したのか、そしてこれからこの街はどう変わってゆくのか……。メイドさんのお店が、従来の流行飲食店と一線を画している点は、あらゆる客層を許容できること、それにアニメや芸能文化を支える重要拠点になっていることです。様々な情報がお店に入り、お店から出てゆくここは、まさに情報の交差点であり、メイドさんは情報の交通整理役になっています。そしてそのことは、人材を育て世に送り出してゆくことを直接的に担っています。メイドさんに課せられた使命は重大ですね。
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■なんでメイド?■

 メイドさんのお店には、今やいろんなジャンルがあります。メイドカフェやメイドリフレクソロジーはもとより、メイド美容室、メイド耳エステ、メイド遠足、出張メイド。一般のカフェやリフレとちがって、こうしたコンセプトのお店には、商品よりもウェイトレスやスタッフに重きが置かれます。かといって、商品やサービスが二流ということではないし、特別に価格が高いということでもありません。フードもドリンクも一般のカフェより質が落ちるなんてことはほとんどないし、リフレにしても技術レベルは低くないです。ただ、スタッフがメイドさんなのです。
 メイドさんは、萌えと癒しのアイテムとして今へ世間に広く認知されていますが、その発祥地がオタク街だったせいか、オタクたちはメイドさんはオレたちのモノと決め込んでいる感があります。アニメやゲームの美少女キャラと同列の扱いなんですね。
 だとしたら、なぜメイドさんでなければならなかったのでしょう? 美少女キャラの“萌え”は、メガネっ娘だったり、セーラー服だったり、闘うヒロインだったり、ナースであったり、じつにたくさんあって、その中でメイドさんというのはそれほど大きな存在というわけでもありません。メイドカフェが、セーラーカフェでも良かったわけです。
 やったもん勝ちだったのでしょうか? 最初に立ち上げたお店がメイドさんだったから? かつてはオタク街に、コスプレカフェというものが人気を呼びつつあったことがありました。アニメに出てくるキャラの衣装をまとったスタッフが給仕してくれるカフェです。この方がメイドさんよりずっと、オタクっぽい。けれど、コスプレカフェはメイドさんほどのブレイクには至りませんでした(今も滅んでしまったわけではない)。
 メイドさんというアイテムは、ウェイトレスにもっとも近くかつ萌え要素が濃厚で、カフェ等のスタッフとして相応しかったのでしょうね。もしかしたら、最初にメイドさんのお店を立ち上げたところは、アニオタ向けのカフェという考えはあまりなくて、いわゆる客をご主人様と見立ててメイドが癒しを提供する、そんなコンセプトだったのかも知れません。
 なので、世のオタク諸君。メイドさんはあなたたちの独占物ではないのですよ。

メイドさん降臨

 日本橋は古くからオタクの街でした。基本的には電気街で、大型家電店から小さな個人商店、道具屋さんやジャンクショップが立ち並び、オーディオマニアやアマチュア無線マニア、それに鉄道マニアなどが、集まるところでした。けっこうアングラな趣味の人にも街は対応していてと思う。
 そうした中で、アニオタつまりアニメオタクの寄りどころも少なくなく、日本橋に行けばコアなアイテムや同人誌が手に入る、そんな特徴がありましたね。
 しかしながら、日本橋以外の、例えば梅田や車で行ける大通り筋に、家電量販店が増えて来て、価格や品揃えもあまり変わらないとなれば、家電目当ての客は日本橋に行かなくても目的が達せられるようになりました。そしてインターネットの普及で、マニアの欲しいものが通販やオークションで手に入るようになると、多くのマニアまでもが日本橋を顧みないようになって行ったのです。
 これではいかん、我らが日本橋は廃墟と化し、関西圏のオタクどもは家に引きこもって夜な夜なイケナイ妄想に耽り、時おり暗い夜道に出て来てアヤマチを犯すようになってしまう。ってことで、この憂うる状況を打開し、日本橋に愛と正義を取り戻さんと、敢然と立ち上がったのが、僕たち私たちのヒロインすなわちメイドさんだったんですね。
 電気街に何故にカフェ? 何故にリフレ? 単純な発想では想像もつかぬ押さえどころを、ビシッと突いて、メイド産業は成功を極め、電気街に愛と正義が蘇りました。って言っても秋葉の二番煎じなんですけどね、これが。
 などと身もフタもなくテンション暴落させたところで話しを続けますが、まぁ何ともうしましょうか、二次元彼女だけが話し相手だったオタクたちがですね、三次元の女の子と楽しげに歓談する機会が生じたわけですよ。

 メイドさん以外にも、秋葉系アイドルみたいな三次元彼女の存在はあるにはあるのですが、メイドさんの方がずっと距離が近いですから、オタクどもはもう大喜びなわわけで、かくして日本橋にも活気と愛と平和が戻ったわけですね。 ところで、女の子可愛いって思ってるのは実は男子諸君だけではありませんで、なにを隠そう当の女の子たちの多くが、女の子大好きなのですよ! その辺の真実についてはこれからゆっくり解明して行くとして、メイドさんのお店を男性向きのスペースと思っていると、それは壮大なかんちがいなのです。メイドさんは、男子諸君にも女の子にも、等しく"萌え"と"癒し"を提供するために世に降臨なされたエンジェルなのですよ、はい。

メイドカフェと一般のカフェ

 メイドカフェを形態だけで定義づけると、ウェイトレスがメイドさんの格好をした喫茶店ということになるかと思います。そしてウェイトレスとメイドは、そんなにかけ離れた存在ではありません。一般のカフェでも、メイドさんみたいな服装のカフェがたまにあったりします。筆者も某所の英○館に行った時、お勘定の際に、お出かけします、とメイドカフェ用語を口走ってしまったことがあります。このお店はどうしてメイドカフェではないんだろう? ふとそんな愚かなことを考えてしまいました。
 一般のカフェでは、ウェイトレスがメイドさんみたいな装いであったとしても、基本はあくまで美味しいコーヒーを飲ませるお店です。コーヒー以外にも様々なドリンクやデザート、フードがありますが、そうしたメニューこそがお店の売りなわけです。もちろん、ウェイトレスが可愛いからといった理由で来店しても良いのですが、それは客の勝手というものです。
 同じくウェイトレスを置く飲食店でもファミレスになると、制服がかなり可愛くなっていたりしますね。中には可愛いウェイトレスが売りというお店もあるようです。
 むかしから看板娘という言葉がありますが、可愛い女子店員というのは、お店にとって大きな戦力である場合が少なくありません。客は良質な商品の提供を望むのに加えて、気持ちいい接客というのも重視します。その派生型として、看板娘というのは気持ちよく買い物させてくれる重要なアイテムなのでしょう。
 そしてメイドカフェになると、ドリンクやデザート等の商品よりも看板娘が売りという商売形態になります。可愛いメイド服のウェイトレスがいて、「お帰りなさいませ、ご主人様」という挨拶で迎えてくれて、コーヒーにミルクと砂糖を“混ぜ混ぜ”してくれて、オムライスにケチャップでお絵描きしてくれて。いわゆる“萌え”と“癒し”を提供してくれる、それが一般の喫茶店ならぬメイドカフェの特徴です。
 ならば、メイドさんさえ可愛ければ、商品はどうでもいいのかというとそういうことではありません。とくにお嬢様すなわち女性客が増えつつある昨今、質の悪い飲食物を提供していては客は寄りつかなくなります。方々のメイドカフェを回っている人たちの間でも、あそこのカレーは美味いとか、デザートはやっぱりあそこでしょうとか、飲食物の善し悪しの話しになります。
 価格的にも、メイドさんがいれば少々商品が高くてもいいだろうというわけには行きません。一般の喫茶店と価格設定はほぼ同じです。それどころか、ポイントカードがあって点数に応じて様々なサービスの提供があったり、ノベルティグッズがもらえたりと、物的にも一般の喫茶店よりお得なくらいです。
 だから、メイドカフェの経営は、よほどの集客力がないと難しいのです。商品の質は落とせない、ポイント制度等の付加価値を設けなければならない、ウェイトレスはたくさん雇わなければならない。経費はすごく膨らみます。日本橋ではカフェオンリーのお店もたくさんありますが、その他の地域でのメイドカフェ営業は、商品単価の高いバーを兼ねたカフェ&バーシステムのお店がほとんどです。
 筆者も最初は、メイドカフェのことを誤解していました。可愛いメイドさんを置いておけば、バカな男どもが高いコーヒーを飲みにわらわらやって来る、そんなお店だと思っていました。でも実際にはメイドさんクォリティはそんな安易なものではなかったです。お見逸れしましたって感じです。
 それと、メイドさんというコンセプトは、なにもオタク狙いだけとは限らないので、オタク以外の人たちも大いに行くと良いです。会社勤めの人たちがランチタイムや仕事帰りに利用したり、買い物途中の主婦が立ち寄ったり、それも大いにアリなのですよ。

ご主人様……(汗)

 メイドさんのお店にお帰りするようになってまだ間がない頃は、メイドさんに「ご主人様」と呼ばれるのにけっこう抵抗を感じだものです。自分ごとき者が人様からそのように呼ばれるなんて、分不相応というか、もったいなきお言葉というか。そもそも人に自分をご主人様などと呼ばせる偉そうな自分というのがイヤ…みたいな。みなさんはどうなのでしょう? メイドさんにかしずかれて嬉しいのでしょうか。
 むかし、ある有名な温泉街に行った時にですね、旅館の廊下にでっかいポスターが貼ってあって、それに「大人気! 大名コース」なんてフレーズがデカデカと書いてあるんですよ。お殿さまみたいな衣装を着けて、数人のメイドじゃなくてお付きの女性が、食事とかの世話を焼いてくれるというコースなんですが、ああいうのってみんなやりたいんですかねぇ。筆者は絶対にノーサンキューです。偉そうな自分ってカッコ悪い、カッコ悪いことはしたくない、ついそんなふうに思ってしまうのです。
 だから、メイドさんに「ご主人様」とか呼ばれるのも、筆者としてはあまり嬉しくないんですよね、じつのところは。あとですね、コーヒーを混ぜ混ぜしてもらったりも、あまり好きじゃござんせん。世話焼かれるのって、なんだか介護されてるみたいで。病院で寝たきりになった老後の自分を思い起こさせるというか。
 ま、筆者の老人介護はぜひともメイド服でやってもらいたいところですが、できれば老いてなお自分の足でメイドカフェにお帰りし、本物のメイドさんの笑顔を拝みたいものです。

 筆者の思惑はともかく、メイドさんのお店ではやはり、客はご主人様なわけですが、ご主人様がわらわらいて、数人のメイドをこき使うという絵柄は、高貴なお方のお屋敷付きのメイドさんとは、いささか事情がちがうわけで、メイド店でのメイドさんの役割は、ご奉仕というより"萌え"と"癒し"の提供です。……萌えと癒し、業界の決まり文句ですね。
 そして、萌えと癒しと言っても客の好みや感性で受け止め方が千差万別であるわけで、メイドさんの清楚な様子に癒される人もあれば、可愛い衣装を着けたメイドさんに萌えを求める人もあるでしょう。たいへん抽象的でつかみどろがない概念なんですね。
 で、結局のところは、理屈じゃなくて客があちこち回って好みのタイプのお店を探すしかないわけで、お気に入りのお店(あるいはメイドさん)に巡り会うのも、"出会"であり"縁"であるわけですよ。
 何を言いたいのか分からなくなって来ましたが、要はメイドさんのお店を"メイド"という先入観で思い描くよりも、あれこれ歩いて実際のお店の様子を見てみるがいいってことなのです。筆者みたいにご主人様なんて崇め奉られるのはちょっと、という向きにも合ったお店は存在しますし、通い慣れることによって自分の理想的なシチュエーションを作り出すことも可能なのです。そう考えるとメイド店のキャパシティってすごいですね。
 お店の常連になると、ご主人様ではなく名前で呼ばれることが多くなります。別章でも述べましたが、メイドさんのお店にはメイドさん日記やブログというコミュニケーションツールが用意されていることが常識的になっていますし、ポイントカードやリフレ店のカルテで客が自分の名前(ニックネーム可)をメイドさんに知らしめることができますから、普通のお店よりも客がお店に自分の名前を売り込みやすいんですね。
 顔と名前を覚えてもらえれば、ある程度こちらのニーズに合った対応が得られるようになったり。そしてそれを別の客が真似たり広めたり、お店の雰囲気そのものに影響を及ぼしてしまうことも。
 どうすれば顧客が本当に満足するかは、最終的にはメイドさんが判断するのですが、客はその影響力となるという点で、役割は小さくないわけですよ。これぞ、現場主体のお店作りですね。
 というわけで、みなさんも先入観に捕われて敬遠することなくメイドさんのお店を利用しましょうね。ただ、あまりにもピントはずれな要望や無理難題を突き付けてはいけませんよ、そこのところは上手く、そして気長にやらないと。客の自分勝手な要求をホイコラ飲むほどメイドさんは甘くないです。

■メイド文化というもの■

  メイド文化とはいったい何でしょう? 筆者がこのように呼称する名称自体が正式なものでも、一般によく使われるものでもありません。されど独自の文化はそこに存在するわけで、そして文化とはいわば人の営みそのもの、人が試行錯誤して築いてきた歴史そのものです。
 メイドさんのお店とは、ご承知のようにメイドさんが給仕をするカフェやリフレクソロジー等のお店のことです。同様のコンセプトのお店に、スタッフがコスプレイヤーであったり女学生であったりするケースもありますが、本質は同じ客層も同じです。なので、それらコスプレカフェや学園カフェも含め、筆者はメイド文化と称しています。本質で言うならコスプレ文化と称するべきなのでしょうが、そう表現すると誰が聞いても、コスチュームプレーのことになってしまいます。コスチュームプレーすなわちコスプレとは、衣装やメイク、各種アイテムによって様々な職業やキャラクターに変身する、いわゆる“なりきりごっこ”のことです。とくにオタクの間では、アニメのキャラクターに変じることをコスプレと言い、コスプレをする人たちのことを、コスプレイヤー(通称レイヤー)と呼称します。“なりきりごっこ”などと言うと、お気軽な遊びのように聞こえますが、オタクの間では単なる“ごっこ”ではありません。“ごっこ”などと呼ぶことすらありません。コスプレはオタク文化の中ではひじょうに重要な位置づけをもっており、コスプレそのものが1つの文化を築き大きな市場も抱えています。
 客観的に表現すれば、メイドさんのお店は、メイドのコスプレをしたスタッフが給仕をするお店ということになりますし、そうした意味でコスプレ文化にはちがいないのでしょうが、そんな無機質な解釈ではメイドさんの本質は見えてきません。メイドさんは、今ではコスプレではありません。本物のメイドなのです。喫茶店やリフレのお店のスタッフがメイドのコスプレをしているのではなく、本物のメイドさんがいる喫茶店やリフレのお店、それがメイドさんのお店なのです。ビクトリア朝時代の英国の貴族のお屋敷のハウスメイドが、本来のメイドの語源ではありますが、オタク街では、萌えと癒しを提供するエプロンドレスのスタッフのことをこう呼ぶのです。そんなものオタクたちの勝手な解釈だとおっしゃるならそれまでですが、同じ解釈でメイドさんのお店は海を渡り、韓国や台湾、シンガポール、カナダにも進出するに至り、おそらく今後ほかの国でも出店が見られるようになるでしょう。アニメ産業と同様に、メイドさんのお店も、日本発の文化として海外に認知されつつあるわけです。
 2009年春現在で、日本橋エリアには約40店のメイドさんのお店があり、さらに出店のウワサを耳にします。お店の乱立を嘆く声も聞かれますが、筆者としては日本橋の繁栄のためにはまだ足りない気がします。趣向を凝らしたユニークなお店がもっと増えることを期待したいです。

メイド文化の西東

 それぞれのお店にそれぞれの文化がありますが、それらを総合したひとつのエリアとしても独自の文化があります。すなわち秋葉原と日本橋とでは、文化がちがうのです。
 メイド文化の本場は何と言っても秋葉原です。それはオタク文化としても電気街としてもしかりです。日本橋はオタク文化の西の聖地などと言う人もいますし、その表現は筆者にとっても耳に心地よい響きではありますが、格のちがい本質のちがいは明らかで、日本橋は数ある地方都市の中で比較的規模の大きいエリアに過ぎません。文化の前に経済ありき、東京で当たったらしいから大阪でも銭にならないか、それが日本橋の本質です。ただ、その真似っこも3年続けば一端の歴史になり、独自の文化も生まれて来ます。ひところはメイド産業も峠を越えたかという声も聞かれましたが、3年を生きながらえた今、日本橋のメイド文化もようやく本物が育って来た、という感があります。客層にも厚みができ、店舗数も増えつつあります。
 マスコミ業界の関心も少しずつ集まりつつあります。その反面で電気街にメイドは要らんと考える商人も少なくないようですが。
 筆者は当然ながら日本橋メイド文化推進派であるわけで、そこにはアニメやそれにまつわる様々な文化を育むための重要な土壌があり、それをたいへん重要に考えています。メイドさんの多くは自らがオタク文化を満喫しているオタクそのものであり、腐女子であります。あるいは様々なオタ情報の交通整理役でもあります。様々な情報がメイドさんのお店に集まり、そこから拡がって行きます。そしてそして多くのメイドさんが、自らアニメーターや声優、電波系アイドルを志望する、オタク文化の担い手でもあるのです。
 筆者は将来を嘱望される多くの人材をメイドさんの中に見出だして来ましたし、同人誌や作品作りを手掛けた経験のあるメイドさん、現在も活動中のメイドさん、コスプレイヤーとしての活動、歌やタレント活動をされているメイドさんにたくさん出会って来ました。
 しかしながら、大阪の地からプロが育つことは多くありません。才能ある人はみんな東京に行ってしまうのです。
 古来より上方は商売の町であり、江戸は文化の都でした。今でも日本の庶民経済を支える商売の大手はことごとく関西出身の人間です。東京の都心の大手デパート関係もほとんどが関西出身でしょ?
 この違いは歴史にとどまらず、今も大阪の地に影を落としています。銭になるかならないかが、大阪人あるいは関西人にとってあまりにも重要であるばかりに、文化を育てることを忘れてしまっている、それが大阪なのです。才能がたくさん眠っているのにそれを育てる能力がない。素晴らしい発想や想像力を素晴らしいと評価する能力がない、それが関西なのです。
 経済と文化は、文明社会では等価のように考えられることが多く、文化の価値を経済効果なんて表現するのをよく見聞きしますが、経済はしょせん対価に過ぎず真価にはなり得ません。経済が破綻したとき、手元に残ったイモは食えてもオサツ(お札)は食えないのです。
 そのような事情で、大阪はいつまで経っても都会にはなれない、でっかい田舎のままです。
 日本橋のメイド文化は他の多くの文化と同様、東京の二番煎じとして大阪の地に根付きました。それでも、二番煎じでもなんでも、根付いたことは根付いたのです。これを大事に育てて行けば、大阪の地からも強力な文化が育つかもしれない、人材を育成する能力が伸びるかもしれない、筆者はその可能性に大いに期待しているのですよ。

メイド文化は根づいたか

 経済と文化のどちらが大切かという議論になると、結論を出すのはなかなか難しいものですが、要は夢の問題なのです。人々の夢を与える仕事がしたいのか、お金持ちになるためだけに成功したいのか、その違いです。最近は小学生に投資や株を教えるなどという性根の腐った教育が平然と実在するわけですが、そもそもお金儲けというものは世の中に対して提供した生産や貢献に対して得ることのできる対価であるわけで、証券会社や銀行に預けて肥やそうなんてのは応用編なのです。誰もが投資で儲けることを覚えたら、それに対して配当を産む生産や貢献つまり労働を誰がするのですか?
 えっと、日本橋のメイド文化は根付いたのかという話しなのですが、関西人がもっと文化の必要性を理解しなければ、根付いたかどうかを見極めるのは難しいかも知れません。なにせ根っこというものは地中にあって外から見えませんから。
 根付いたかどうかは、つまりは夢の問題です。実がなる樹になって欲しいのか、そのために手を尽くす気があるのか、育てる方法を知っているのか。実がなるのを待ちぼうけて、ならなければ抜いちまうのか。
 ま、草木が根付いたかどうかは、葉や茎の色つやを見れば解るわけで、見れば解るだけの肥えた目があるかが問題なわけで……。
 筆者には肥えた目が備わっているなんて調子ぶっこいたことを申すつもりはありませんが、お店を巡っていると、メイド文化に元気があるか否かは何となく解ります。ひと頃に比べると最近(2009年春現在)は、たいへん元気がよろしいように見えます。一昨年の秋頃は、メイドもそろそろ峠を越えたか、なんて言う声すら聞こえたものですが、最近の日本橋メイド店のにぎわいはなかなかすごいです。お店の数も去年以降ドドーンと増えました。
 そして、女性客(メイド店ではお嬢様ですね)がひじょうに多くなりました。女性が独りで来店(メイド店ではお帰りですね)するケースも少なくなく、常客としてメイドさんと楽しく談笑していたりします。筆者が独りでメイドカフェにお帰りしていて、ふと気づけば周りは女性ばかり、なんてことも1度や2度じゃありません。筆者がガラにもなく女性を伴ってお帰りするとですね、メイドさんも大喜びで、いつもより多く話しかけてくれ、ちょっといやかなり得した気分になっちまいます。で、次に独りでお帰りすると、「今日は女の子はいないんですか」なんて、つまらなさそうに……。男だけで悪うござんしたね。あたしゃすねるよ。
 知人関係でですね、女性に「メイドカフェでも行くか」なんて誘ってみると、「可愛い娘いるなら行く!」なんて答えが返って来ます。女性が可愛い娘目当てでメイドカフェに行く、そんな状況なのですよ、今の日本橋は。
 女性客の参入というのは、文化にとってひじょうに重要です。女性は男とちがって充分な価値の見出だせないものにホイホイお金を払うなんて幼稚なことはしませんから、女性客がつくということは、その文化がホンモノに育った証拠と言えると思います。
 古来より、男性が始めた文化を、より発展させ普及させて来たのは女性です。そのことを思えば、最近の状況は、メイド文化も日本橋の地に根付いたと断言してよいのではないか、そんなふうに思うわけですよ。
 でもね、ここで育て方を誤れば今からでも枯れてしまう危険性もあります。世間にはメイド文化の繁栄を好ましく思わない人も少なくないのです。メイドさんのお店を性風俗のお店のように考えている人もいれば、キモいオタク産業だと思っている人もいます。知名度が上がったからといって揺るがぬ市民権を得たとは限らないのです。
 だから、オタク本意の増長は禁物なのです。かといって一般人に媚びてばかりでも、メイドがメイドでなくなってしまいます。試行錯誤と悪戦苦闘はまだまだ続くということですよ。
 当たり前の文化としてそろそろ根付いたかなと思われる現在、メイド文化は大きな岐路に立たされているのかも知れませんね。多くの方々のお知恵をお借りして、さらに素晴らしい文化に育てて行きたいものです。長くメイドさん通いをしている方々には、単にメイドさん可愛いなんて言ってるだけじゃなく、この文化のこれからのこと、ご自身のことについても思いを馳せてもらいたいものですね。

オタク街と交通の便

 最近、筆者は秋葉原に行ってまいりましたよ。キッパリ言ってこれが初めての秋葉原です。ウソです。でも前に行ったのは10年以上もむかしのことなので、メイドちゃまが秋葉に君臨するようになってからは初めてです。
 東京はでっかいところですね。公共交通機関に対する税金のかけかたが違う。関西はむかしからオカミにはちと反抗的なところがあって、関西エリアの鉄道網を敷くのにオカミの世話にはならねえってんで、私鉄が頑張ったという歴史があったりします。日本初の私鉄も大阪です。
 されどやはりオカミのバカヂカラにはかなわないなぁ、なんて東京に来ると思います。JR秋葉原駅つっても大阪駅よりでっかいんじゃないかと思っちまいます。山手線乗り場から中央線乗り場までの移動のためにミニ鉄道でも敷いてほしいくらいです。
 電気街口なんてあるんですね。アニメの巨大広告がドドーンと掲出されてるし。それっぽい若者どもが、平日の昼間からホテホテ歩いてるし。オタク街口に改名すりゃどうだろう。
 で、そのオタク街口を出たとたん、メイドちゃまがズラリ! あの絵柄はすごいです。休日ともなればさらにすごいことになるとは、秋葉に精通した知人の談。フライヤー(お店のチラシ)を配るために、方々のメイド店のメイドちゃまが駅前に集結するのだそうです。これならお店に行く必要ないです。店内よりたくさんのメイドさんと多種多様なメイド服が拝めて、すでに満腹なのです。フライヤーだけどっさり集めて帰れば、メイド巡り完了したも同然。
 付近には、メイドさんのいる案内所だとか、赤裸々なメイド服の展示なんかが熾烈を極め、まさにメイドのるつぼ。もう満腹を通り越して腹痛なのさ。休日ともなれば、多くのメイド店で入店待ちの行列ができ、リフレ店などでは早々に当日予約終了ってことになっちまうらしいので、駅前のフライヤー配りのメイドさんに話しかけて、ご馳走さまして帰りましょう。それだけで土産話が山ほどできちまいますって。
 筆者は職業柄、平日のお昼間に遊ぶ習慣を何十年も前からついているので、秋葉でも1日あれば有名店も含め10店以上は平気で回れたりするのですが、一般の勤め人諸氏は土日祝日が主な遊び時間になるうえ、あまつさえ家族がいたりするとそれも滞りがちで大変ですよね。ただ、筆者の場合は土日限定イベントとかはダダ漏れなんですけどね。でも日本橋に関して言えばイベントも比較的平日に集中しています。平日の集客を計ろうっていう商人根性が出ていますね。

 秋葉原って、意外とこじんまりまとまってますよね。とりあえずJR秋葉原オタク街口を出発すれば、駅から最も遠いメイド店でも歩いてすぐで、それまでの間にあるわあるわ、メイド店がドドーンと70店あまり。すごっ!
 そこへ行くと日本橋は広いですよ。電気街のど真ん中にはメイド店はあまりなくて、比較的お店が集中している通称オタロードといわれる、かつての裏通りは鉄道の駅からずいぶん離れています。さらに、オタロードからひじょうに離れたところにもお店が点在していて、お店とお店の間隔の広いこと。お店の数は秋葉原の半分なのにそれぞれがたいへん離れて存在しているのですよ。ま、歩けない距離ではないので、運動と腹ごなしに調度よいのですけどね。

 日本橋の寂しいところは、お店が分散しているのに加えて、駅が近くに見当たらないってこと。日本橋と名のつく駅は大阪市営地下鉄や近鉄電車に存在するのですが、日本橋のメイド店に行くのに日本橋で降りたらえらいことになります。初めての人は、歓楽街か黒門市場に迷い込んで、なんでやねん! ってことになっちまいます。日本橋でんでんタウン(いわゆる電気街)に降り立とうとするならば、地下鉄堺筋線の恵美須町で下車する必要があります。しかも でんでんタウンにたどり着いてから、散漫に存在するメイド店を見つけるのは至難の技と言わねばなりません。オタロードはどこですかと一般人に尋ねても、胸を張って「知らん」といわれます。ようやく見つけた無料案内所のスタッフもメイド店の知識はほとんどありません。
 地下鉄御堂筋線の難波(なんば)駅で降りてもオタロードまではたいへん距離があり、途中にメイド店の案内も気配もありません。難波から人混みにまぎれ込んだなら、吉本新喜劇や食い道楽でお馴染みの千日前の方に出ちまいます。
 まるで一見さん一切お断りのような立地の悪さは、なんなんですかね。まるで人を近づけない秘境みたいなことになってますよね、日本橋のメイド街は。

 秋葉原のように電車を降りたらそこにメイドさんがズラリなんてラブリーでワンダフルなシチュエーションが日本橋でも実現しないものでしょうか。
 地下鉄日本橋駅から地下鉄難波駅まで通じる長い長い地下道があるのですが、その途中からオタロードへ向けてトンネル掘ってですね、日本橋または難波からダイレクトにオタロードへ出られるようにしてもらえないものでしょうか。地下道を抜けるとメイドちゃまがお出迎えみたいな。そんな素晴らしげなプロジェクトが現実のものになる日は来ないものですかね。
 ちなみに南海電車(日本初の私鉄)の難波駅が、じつはオタロードにいちばん近かったりします。

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目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


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